No.2425, No.2424, No.2423, No.2422, No.2421, No.2420, No.2419[7件]

Day29「思い付き」 #文披31題 #小咄 #トウジンカグラ
 夜闇がそっと退いて、淡い光が里を満たす頃に目が覚める。
 それはうつくしい夜明けであり、野分のところの雌鳥が甲高い声を上げる、実に単純な朝の訪れでもあった。ついでに、普通、雌鳥は朝に鳴かないんだけどねえと、何かの折に不思議そうに呟いた紫燕の台詞を思い出す。
 衣擦れの音に、伏したまま目を開く。逞しい背中が起き上がっている。この季節だからと裸身に長襦袢を被って横になったことを思い出す。辛うじて、と付け足さざるを得ないのは、この背中の持ち主に抱き込まれながらほとんど気を遣ったからだ。
 二人で一枚を羽織ったので、背中が剥き出しな以上、襦袢は己にまだ被さっている。こちらがまだ眠っていると思っているのだ。伴侶が己より遅く目覚めたことは今までなかったことを思い出す。だから、朝の身支度をする背中は初めて見た。
 剥き出しの背中には、細かな赤い引っ掻き傷が奔っている。野放図に伸びた髪が揺れながら、傷を撫でたり隠したりしている。男の手がその髪をまとめて掴む。いつものように結い上げるのだろう。気づいた瞬間、のっそりと起き上がっていた。襦袢が滑る衣擦れの音に気づかれるより早く、背中の傷を己の胸で覆った。腕を相手の胸に巻きつけて、閉じ込めて、まだ結われていない髪へと鼻先を突っ込んだ。
「穂群」
 少しだけ驚いた響きを混ぜて、伴侶が名前を呼ぶ。染み入るような低い声が気持ちよくて目を閉じる。このままここで眠りたい。鼻先には硬い髪の感触が触れ、男の匂いが立ち込めている。深く息を吸って、肺いっぱいに吸い込む。
「……嗅ぐな」
「んー?」
 首を傾げる。擽ったいのか、男の身体が震える。ほんのりと汗の混ざった、深い森のような、静かに佇む木々のような匂い。心地良い。吸って、吐いて、伴侶の首筋で息をする。
 しばらくは諦めたように何も言わなかったが、やがて硬い膚の手のひらが己の腕を掴んだ。引き剥がされたくなくて、腕にはやんわりと力を込める。胸を背中に擦り寄せて、すると前の方から息を詰める音が聞こえる。己の胸の尖りがつんと膚を押しただけなのに。笑いそうになって、堪える。笑ったら怒られて、剥がされてしまうから。下肢を擦り寄せるのも堪える。怒られて押し倒されるのもいいけれど。
 持ち主の手が諦めた髪にそっと触れる。束ねて掴んで、名残惜しく鼻先を埋める。唇で触れる。戸惑うような気配があるので、口を開く。目覚めたばかりで掠れた声になっている。
「結ってやる」
 戸惑いが留まる。己は伴侶にいつも髪を結ってもらうが、己が伴侶の髪を結ったことはない。それを相手も知っている。こちらもわかっているので、見よう見まねで髪をまとめて、引っ張ってみる。
 やがて諦めを含んだ吐息が聞こえた。被せるように笑った。楽しくて仕方がなかった。ぐちゃぐちゃに仕上がって、笑って、やっぱり諦めた顔の伴侶が今度はこちらの髪を手にするのはもうすぐ後。櫛が要るなと最後に囁いた声の重さを知るのは、この季節が終わる頃に。
(氷雨と穂群/トウジンカグラ)

某誕生日に続く。
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ネタ

夏の来儀さん完成してる!笑顔が眩しい~かわいい~それだけでもう尊い~😭😭🙏🙏✨✨✨✨

よそ様

藤仁さんと守信さんが和ロックにアー!!ワーッ!!!!ってなっちゃった!特に本編で明確に人となりが明かされていない守信さんの公式から小出しされる情報ありがたくズゾゾッて啜ってる

よそ様

>2421「裏切りの夕焼け」ぐらい洒落たこと言えばよかったな…(♪ ズンズンチャチャズンズンチャチャズンズンチャチャズンズンチャーチャチャンッ)

日記

Day28「西日」 #文披31題 #小咄 #リボ

 赤い光が長く伸びる。浮かび上がる影も長く伸びる。赤の中に黒々と、刺すように、墓標のように、あらゆるものが黒く長く。いずれ藍に変わって、黒く溶けて、静かに全てを呑み込んでいく。その寸前、狭間の時間。
 一人きりの長屋の中。遠征ばかりのためか、あるいは別の理由か、室内の景色は自分の家だというのにちっとも馴染みがない。空々しい部屋、赤く満たす光の中で、白い書面だけが浮き上がっている。卓に無造作に置かれたそれを、ティルはじっと見つめている。
 黎明とは真逆の時間だった。立てかけた棍が本物よりもずっとずっと長く伸びて、ティルに突き刺さっている。
 息を吐く。短く、浅く。赤い光を掻き分けて、卓へと近寄る。ほんの短い距離を進む最中、窓から吹き込んだ温い風がティルの赤毛をやわく撫でる。跳ねた毛先が赤に泳ぐ。前髪を浮かす。褒められているような、咎められているような、そんな気分になる。白い紙面を手に取る。
 赤の中に黒々と、あらゆる影が浮かび上がる。ここにはティルしかいない。隣の住人も不在なのか、どこかで砂が巻き上がるような乾いた音だけが聞こえている。己の胸の奥に押し込められた心臓の音すら、埋もれていく。
 紙面を、開く。赤い光の中、一人佇む。綴られた文字と向かい合う。黒々と伸びた棍の影が、音すら立てないティルの胸を貫いている。
(ティル/風紋記)

裏切りものの時間。
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ネタ

ラフからドンドン清書されていく過程見せていただけるのありがて~~~~~~~~~~~!!!!!のきもち。夏の来儀さんかわいいね…😘

よそ様

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