2023年9月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
金平糖があるということはトウジンカグラの世界にはポルトガルっぽい言語や国があるんだろうな~~~~ええい今更よ!!#トウジンカグラ
2023年8月 この範囲を時系列順で読む この範囲をファイルに出力する
壁打ち侍から回収
創作男女ということにする決して恋愛にはならない凸凹ファンタジー男女
#かれころ

メアリ・フロットラント・ディサッタール
魔女になりたい大学生。天才にして天災、美人で可愛いと思って近づくな口を開くとヤベー女と学部内で有名。常にギターケースに収納した箒と魔女の衣装を持ち歩く。魔法など使えるはずもないが有事の際に魔女服に着替える悪癖持ちであり、彼女は常に本気である。
「ええっ!? 魔法でチョチョイって全部吹っ飛ばしたりしないんですか!?」
ユダ
今や神話と呼ばれるようになってしまった時代から生き続ける純血の「魔女」。男性。純血かどうか知らないが混血の知人は異なる点が多々あったのでじゃあ純血だろうということにした。最近同族に会っていない。基本的に魔法は使わない、剣士だったので。メアリの師事する教授♂の協力者(ヒモ)
「君、飛行船の中でそんなことしたらどうなるかとか考えない? 大惨事だし非効率じゃない? 文明人としてもう少し弁えた方がいいよ、僕が言うことじゃないけど」
恋愛脳ゼロの魔女オタク大きい女児メアリと遠い昔の妻子や彼氏をさっぱり引きずりつつ今も男と関係を持ってるユダの、一切いい感じにならない別にストーリーのない2人
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創作男女ということにする決して恋愛にはならない凸凹ファンタジー男女
#かれころ

メアリ・フロットラント・ディサッタール
魔女になりたい大学生。天才にして天災、美人で可愛いと思って近づくな口を開くとヤベー女と学部内で有名。常にギターケースに収納した箒と魔女の衣装を持ち歩く。魔法など使えるはずもないが有事の際に魔女服に着替える悪癖持ちであり、彼女は常に本気である。
「ええっ!? 魔法でチョチョイって全部吹っ飛ばしたりしないんですか!?」
ユダ
今や神話と呼ばれるようになってしまった時代から生き続ける純血の「魔女」。男性。純血かどうか知らないが混血の知人は異なる点が多々あったのでじゃあ純血だろうということにした。最近同族に会っていない。基本的に魔法は使わない、剣士だったので。メアリの師事する教授♂の協力者(ヒモ)
「君、飛行船の中でそんなことしたらどうなるかとか考えない? 大惨事だし非効率じゃない? 文明人としてもう少し弁えた方がいいよ、僕が言うことじゃないけど」
恋愛脳ゼロの魔女オタク大きい女児メアリと遠い昔の妻子や彼氏をさっぱり引きずりつつ今も男と関係を持ってるユダの、一切いい感じにならない別にストーリーのない2人
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今回相当詳細に詰めてるから後は埋めるだけみたいなものなのに何か…何か書きにくいな…!?!?と思ったけどまた会話で進行するやつだからだァ~!!でも会話から学ぶしかない学べよ火群しぐれから… #トウジンカグラ
自分は文章の合う合わないが結構あるタイプなので読めないと思ったら1,000人が評価してても読めないし忖度するのは失礼だと思ってるし己の中にしかない世界について誰かが感じてくれたことに制限はかけたくないし言葉遣いも悪いので、無理なら本当にブロックして欲しいな!それはもうたぶん生き様が合わない
メモもあるけど彼らが勝手にドンドン喋るので置いてかれないように打つだけ待って待ってしぐれちゃん早い早いちょっとそこで止まって止まって #トウジンカグラ
昨日まで2行だった11話が昨晩と今日の昼で5,000字ぐらい想定1/4場面終わったのでえらいえらいえらーーーーい!!!!って思ってる。丸1日で5,000字は世間一般で考えるととても遅いだろうがそういうんじゃない進んだことが偉い。ヨーシヨシヨシヨーシヨシヨシ #トウジンカグラ
火群のビジュアルに好きな要素、無。氷雨のビジュアルに好きな要素、ちょっと有。波佩のビジュアルに好きな要素、マシマシ。17年前から継続(火群)、改変(氷雨)、17年のブランクなし完全新規(波佩)の差 #トウジンカグラ
ハグの日ヒサホム #トウジンカグラ #小咄
こいつは案外と触れ合うのが好きらしい。
眠るとき、特に寒いときなどはぎゅうぎゅうと抱きついてくるし、身体を重ねるときにも隙間がないぐらい背中に腕を腰に足を回してくる。首筋ですんすん鼻を鳴らしたり深く息を吸ったり、吐息をこそばゆく思うのももう随分前に慣れてしまった。未だに互いを知らない時分に、自棄になったように抱きつかれたときには硬直することしかできなかったが、思えばあの頃からこいつは触れ合いを求めていたのだろう。
こっそりと表情を盗み見れば目を細め頬を緩めて、例えるならば日向で眠る猫のような顔。盗み見ていたはずなのに目が合えば、咎め拗ねるよりも先に甘やかに視線が蕩ける。流れ出すまま、ひさめ、と名前を呼ばれれば胸が詰まる。
肌と肌、体温が触れ合うのが好きなのだろうと思う。かく言う己とて誰かと触れ合うことなどほとんどなかった。肌を合わせた相手など過去におらず、父には憎まれ愛情を注いでくれたか弱い母と触れ合う機会も限られていた。妹を抱き上げたことはあれど、強い兄でなければと思うばかりで親愛を示すために頬を擦り寄せたこともない。
ならばきっと、これも自分もお互いの欠けたところをぴったりに、ちょうどよく埋め合っているのだと思う。絡まる手足、首の太い血管に預けられ寄せられる唇があまりにもちょうどいい。温かくて、愛おしい。
知らず綻んだ唇が、何よりも尊い名前を紡ぐ。応えて瞬く穂波の瞳はうつくしく輝いて、あの時のようにあどけなく細められた。黄金の恵みの中に己の微笑が佇んでいる、その事実をただうれしく、愛おしく思う。
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こいつは案外と触れ合うのが好きらしい。
眠るとき、特に寒いときなどはぎゅうぎゅうと抱きついてくるし、身体を重ねるときにも隙間がないぐらい背中に腕を腰に足を回してくる。首筋ですんすん鼻を鳴らしたり深く息を吸ったり、吐息をこそばゆく思うのももう随分前に慣れてしまった。未だに互いを知らない時分に、自棄になったように抱きつかれたときには硬直することしかできなかったが、思えばあの頃からこいつは触れ合いを求めていたのだろう。
こっそりと表情を盗み見れば目を細め頬を緩めて、例えるならば日向で眠る猫のような顔。盗み見ていたはずなのに目が合えば、咎め拗ねるよりも先に甘やかに視線が蕩ける。流れ出すまま、ひさめ、と名前を呼ばれれば胸が詰まる。
肌と肌、体温が触れ合うのが好きなのだろうと思う。かく言う己とて誰かと触れ合うことなどほとんどなかった。肌を合わせた相手など過去におらず、父には憎まれ愛情を注いでくれたか弱い母と触れ合う機会も限られていた。妹を抱き上げたことはあれど、強い兄でなければと思うばかりで親愛を示すために頬を擦り寄せたこともない。
ならばきっと、これも自分もお互いの欠けたところをぴったりに、ちょうどよく埋め合っているのだと思う。絡まる手足、首の太い血管に預けられ寄せられる唇があまりにもちょうどいい。温かくて、愛おしい。
知らず綻んだ唇が、何よりも尊い名前を紡ぐ。応えて瞬く穂波の瞳はうつくしく輝いて、あの時のようにあどけなく細められた。黄金の恵みの中に己の微笑が佇んでいる、その事実をただうれしく、愛おしく思う。
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これは二次創作なので実際どうなるか知らんけど穂群が凍雨のこと「親父さん」て呼ぶのがあまりにも““““良””””き #トウジンカグラ
飾と凍雨、置いて行かれた系愛の重いそこに縋るしかない男たち、キャラ被ってるんだよ💢とは思っている。凍雨は情交編でしか出てこないけど #トウジンカグラ
ついでなので去年の11月19日と22日の中断したやつ #トウジンカグラ #小咄
七宝とフジの里の暮らしはあまりにも違い過ぎる。
何せ寒い。この屋敷は見る限り里の他の家屋よりは立派だが、それでもどこからか風が吹き込んでくる。七宝宮で隙間風など感じることはなかった。火群は好んで寄りつくことはしなかったが、思えば贅を尽くされたヒノモトで最も尊い帝の御所なのだ。他のどこよりも暮らしやすい場所には違いない。
そもそも、目が開けないほど白く眩く一面に積もる雪など火群は初めて見た。昼には目を瞬くばかりのそれが夜になると月明かりに淡く輝いて、しんしんとして、音が吸い込まれるという感覚も火群は初めて知った。その不思議な聞こえの世界を堪能したのは雪の深まり始めたほんの初日のことで、今や屋敷の囲炉裏の傍で背を丸めるばかりである。
その囲炉裏も、今は灰をかけられてすっかり灯りを落としている。灰の下の埋み火のおかげで外よりはよほど暖かいだろうし、重ねて被った衾も熱を閉じ込めてはいるが、それでも寒いものは寒い。
なので火群は触れるものに腕を絡め、足を絡めて、ぎゅうと抱き寄せた。寝衣越しにも触れる温もりが心地良く、ぐりぐりと頬を寄せてほうと息を吐く。抱いたものを引きずり込むようにもぞもぞと衾に潜り込んでみる。
「……穂群」
「ん」
頭の天辺をくすぐる声が降ってくる。
火群は喉奥だけで答えて、足りない分を埋めるようにまた頬を寄せる。
ぺったりと、潰れるぐらいにくっついた耳がどこか大きく気忙しい音を拾う。それはどっ、どっと重く響いて、聞いた火群はふるりとちいさく身体を震わせた。じわりと滲む衝動のまま、衾の中で更に腕を、足を絡める。ぐっと抱き締めた身体が強張って、それからぎこちなく弛緩する。
「……寒いのか」
再度落ちてくる声は、かたくてやわらかい。
そろと、火群の肩に手が触れる。それは寄せるでもなく、けれど引き剥がすこともせず、半端な場所で留まっている。手のひらからじわりと滲む熱はただただ熱い。
「んー?」
それがおかしくて、火群は寄せるばかりだった頭を持ち上げた。
衾の中から見上げれば暗がりの中、濃藍の瞳がそうっと、しかし奥に炎を揺らめかせて見つめている。
ああ、この顔ときたら。
思わず声を上げて笑いそうになる。堪えるようにまた顔を伏せて、熾火を隠せない男の胸に頬を寄せる。ぐりぐりと頬を押しつければ男の寝衣が徐々にはだけて、触れる皮膚の厚さと響く鼓動の速さが鮮明になる。半端に触れる手を擦り抜けて自ら腕の中に囚われに行く。そのくせ逃がさないのはこちら側なのだと、腹も下肢も押しつけながら足を強く絡める。
「さみィ」
「……な、ら、囲炉裏に、火を」
「いいよ。わかンだろ?」
掻き抱いた身体がぎこちなく、体よく理由を見つけて衾から、火群の腕から逃げだそうとするが許さない。これ以上はとけてくっついてしまうほどに抱きついて視線だけで見上げれば、いよいよ以てゆらゆらと揺れる濃藍が火群を捉えていた。もしもここで灰で覆った炭に再び火を入れれば、その炎よりも赤い頬が見えるのだろう。
それも愉しそうではあるが、火群はとかく寒いのだ。折角温めた床の温もりも、冷静ぶっておきながらゆらゆら揺れる欲を隠せない男も逃がすつもりはない。追い打ちとばかりに囁く。
「な、ひさめ」
「っ」
殊更大切に紡いだ名前は吐息になって、はだけた男の肌を擽る。どうしようもなく跳ねた氷雨の鼓動を笑うことはせずただ擦り寄れば、観念したように、それでもそろりそろりと、氷雨の手が火群の肩を、背を滑った。やわりと、今度こそ確かに抱き締められて火群もぐりぐりと身体を寄せる。強張る氷雨の身体がやっぱりおかしくて、けれど笑みは唇を舌でなぞって宥め飼い慣らした。
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七宝とフジの里の暮らしはあまりにも違い過ぎる。
何せ寒い。この屋敷は見る限り里の他の家屋よりは立派だが、それでもどこからか風が吹き込んでくる。七宝宮で隙間風など感じることはなかった。火群は好んで寄りつくことはしなかったが、思えば贅を尽くされたヒノモトで最も尊い帝の御所なのだ。他のどこよりも暮らしやすい場所には違いない。
そもそも、目が開けないほど白く眩く一面に積もる雪など火群は初めて見た。昼には目を瞬くばかりのそれが夜になると月明かりに淡く輝いて、しんしんとして、音が吸い込まれるという感覚も火群は初めて知った。その不思議な聞こえの世界を堪能したのは雪の深まり始めたほんの初日のことで、今や屋敷の囲炉裏の傍で背を丸めるばかりである。
その囲炉裏も、今は灰をかけられてすっかり灯りを落としている。灰の下の埋み火のおかげで外よりはよほど暖かいだろうし、重ねて被った衾も熱を閉じ込めてはいるが、それでも寒いものは寒い。
なので火群は触れるものに腕を絡め、足を絡めて、ぎゅうと抱き寄せた。寝衣越しにも触れる温もりが心地良く、ぐりぐりと頬を寄せてほうと息を吐く。抱いたものを引きずり込むようにもぞもぞと衾に潜り込んでみる。
「……穂群」
「ん」
頭の天辺をくすぐる声が降ってくる。
火群は喉奥だけで答えて、足りない分を埋めるようにまた頬を寄せる。
ぺったりと、潰れるぐらいにくっついた耳がどこか大きく気忙しい音を拾う。それはどっ、どっと重く響いて、聞いた火群はふるりとちいさく身体を震わせた。じわりと滲む衝動のまま、衾の中で更に腕を、足を絡める。ぐっと抱き締めた身体が強張って、それからぎこちなく弛緩する。
「……寒いのか」
再度落ちてくる声は、かたくてやわらかい。
そろと、火群の肩に手が触れる。それは寄せるでもなく、けれど引き剥がすこともせず、半端な場所で留まっている。手のひらからじわりと滲む熱はただただ熱い。
「んー?」
それがおかしくて、火群は寄せるばかりだった頭を持ち上げた。
衾の中から見上げれば暗がりの中、濃藍の瞳がそうっと、しかし奥に炎を揺らめかせて見つめている。
ああ、この顔ときたら。
思わず声を上げて笑いそうになる。堪えるようにまた顔を伏せて、熾火を隠せない男の胸に頬を寄せる。ぐりぐりと頬を押しつければ男の寝衣が徐々にはだけて、触れる皮膚の厚さと響く鼓動の速さが鮮明になる。半端に触れる手を擦り抜けて自ら腕の中に囚われに行く。そのくせ逃がさないのはこちら側なのだと、腹も下肢も押しつけながら足を強く絡める。
「さみィ」
「……な、ら、囲炉裏に、火を」
「いいよ。わかンだろ?」
掻き抱いた身体がぎこちなく、体よく理由を見つけて衾から、火群の腕から逃げだそうとするが許さない。これ以上はとけてくっついてしまうほどに抱きついて視線だけで見上げれば、いよいよ以てゆらゆらと揺れる濃藍が火群を捉えていた。もしもここで灰で覆った炭に再び火を入れれば、その炎よりも赤い頬が見えるのだろう。
それも愉しそうではあるが、火群はとかく寒いのだ。折角温めた床の温もりも、冷静ぶっておきながらゆらゆら揺れる欲を隠せない男も逃がすつもりはない。追い打ちとばかりに囁く。
「な、ひさめ」
「っ」
殊更大切に紡いだ名前は吐息になって、はだけた男の肌を擽る。どうしようもなく跳ねた氷雨の鼓動を笑うことはせずただ擦り寄れば、観念したように、それでもそろりそろりと、氷雨の手が火群の肩を、背を滑った。やわりと、今度こそ確かに抱き締められて火群もぐりぐりと身体を寄せる。強張る氷雨の身体がやっぱりおかしくて、けれど笑みは唇を舌でなぞって宥め飼い慣らした。
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小咄はハッシュタグじゃなくて区分にすればよかったなあ修正するの面倒だな…!!の気持ち
>63も①のみ残して編集して②以降の全文突っ込んだらええよなの気持ち
ゆうてWordPressにしろてがろぐにしろ完全に理解してない以上制御し切れてはいない。画像一覧から除外したはずのわかめ🍶がドン☆て出ている
ゆ~ちゅ~ぶのゲーム広告で出てきたけど炎上編の火群≒紅蓮→氷雨っぽいなあと思いました #トウジンカグラ
#トウジンカグラ
氷雨の誕生日の作文とおっぱいぱんつの日の作文、まとめてサイトに上げるか~と思ったけど完全に本編終了後のそこに至る保証のない二次創作をサイトに置くのか…?咆吼編二次創作の日記シリーズとは訳が違うぞ…??という気持ちになったのでまた収納先に困るのであった。Privatterかブログか、どっちも微妙
氷雨の誕生日の作文とおっぱいぱんつの日の作文、まとめてサイトに上げるか~と思ったけど完全に本編終了後のそこに至る保証のない二次創作をサイトに置くのか…?咆吼編二次創作の日記シリーズとは訳が違うぞ…??という気持ちになったのでまた収納先に困るのであった。Privatterかブログか、どっちも微妙
常識が薄々なのである程度の特殊プレイにもそういうモンかァで対応してしまう穂群、飲食物に関してだけは瑠璃の躾が先行するので断るけど氷雨が体裁を全て擲って土下座してきたら受け入れてしまう破れ鍋に綴じ蓋 #トウジンカグラ
4話のワードをTLで最近時折拝見する気がするので自分で読み返したけど、やはり4話が今のところ一番☔️🌾してるしトウジンカグラの要素濃縮してる。なお打ち込んでたときの作業用BGMはOne Last Kiss #トウジンカグラ
今日はハチミツの日ですが宮中から露から善意で贈られた滋養たっぷりのハチミツをウッカリ穂群に滴らせて事に及んだものの普段の穂群(の諸々)の方が甘いな…という知見を真面目に得る氷雨という本編後虚構二次創作がどこにもないのは由々しき問題 #トウジンカグラ
人様の創作とこの商業作品を聞いてアアアア~!!!!って大納得することちょくちょくあるけど自分も人から見たら大納得なんだろうか。トウジンカグラに限っては17年ブランク挟んで趣味嗜好の大いなる変遷あるけど人から見ると何かわかるものはあるのかも知れない
リボ=風紋記/ReVOLVERSはページを丸ごと閉じて幾久しく本当に記憶にないお誕生日SSが出てきても置いておくところがないのでとりあえずここに置いておくかという気持ち #リボ #小咄
なお誕生日は3月31日
酒の席で、そういやお前いくつになったんだっけか、などと話題にされたのはいつのことだったか。
この手の話題は面倒だし、相手も相当呑んで赤ら顔だった。ので、さあ、いくつでしたっけねえ、などと返して躱そうとした。お前若いのにそんなボケたこと言ってて大丈夫か? などと善意の追撃を食らったが、忘れたものは忘れましたから、で無理を通して酒を舐めた。
とはいえ相手も絡み酒である。この程度で解放されるとも思っていなかったのでそこは予想の範囲内だ。
「最初に会ったときいくつだっつってたっけなあ。お前、誕生日は?」
「……さあ?」
ただし、答えに窮する。
生まれた日、さて。これは本当に覚えがない。今生での年齢に関しては一応覚えていてとぼけているのだが、年の変わり目で数えているので生まれた日を気にしたことがなかった。
対する相手は赤い眉間に縦皺を刻み、ずいと顔を寄せてきた。
「それも覚えてないのか!」
「覚えてないというか、はあ、まあ」
「おいおい……大事なことだろ?」
こちらとしては生まれた日などより、間近で酒臭い溜め息を吐かれることの方が余程大ごとである。
すすすと身を引いても赤ら顔はにじり寄ってきた。そろそろ後頭部あたりに一発入れていいだろうか、記憶もきれいに飛ぶように、且つ殴打の痕跡を残さないように良い角度で。あるいはこれを顔面にぶっかけるのはどうだろう。いや酔いを申し訳程度に醒ますか更に絡まれるかの二択でしかない気がする。
そんなことを考えながら酒杯を覗き込みつつ、お返しではないが溜め息に乗せて答える。
「別に。ストラル様ぐらい立場のある方ならともかく、一年のうちのいつも通りの一日でしょう」
「……お前、」
「強いて言えば、死ぬために生まれた一生に一度きりの日ですか」
立場ある人間であればその日と祝いを口実に駆け引きだとか根回しだとか、そんなことをしなければならないのだろう。自分はそうではない。単なる一兵卒、今生はこの酔っ払いの食客である。更に言えば自分の場合、一生に一度きりを何度も何度も繰り返しているわけで、全く以てありがたくも何もない。むしろ忌むべき――
瞬間、目の前に影。
顔を上げれば吐息どころか唇すら触れそうな距離に、じっとりした目の主人がいる。
「暗い」
「はあ?」
「暗いぞお前、いや暗いなんてもんじゃない。夜闇だ。沼の底だ。墨汁の化身だ」
そろそろかちんときて酒杯を掴む手に力がこもった。いざ顔面、という思考を読んだのかぱっと顔が離れていく。それどころか席を立って仁王立ち。腰に手を当て、こちらを見下ろす表情はにやりと、あからさまにろくでもないことを考えている顔である。
主は酒杯を手にしたまま胸を叩く。天から零れる酒を避けながら耳にした言葉を、ここから先しばらくはすっかり忘れていた。
「見てろよカイ。俺が、お前に、誕生日のなんたるかを教えてやろう」
――そう言えばそんなこともあったなあ。
遠い目をする。開かれた扉、既に見慣れた室内はいつもより豪奢な花が飾り付けられ、卓上には少しばかり手の込んだ料理が並んでいる。満面の笑みを浮かべながら主、且つ仕掛け人たるストラルは手ずから椅子を引いた。
「さあどうだカイ! いや、まずは座れ!」
一度家に帰るからお前もついてこい、などと言われたときは別段いつも通りだと思った。軍の宿舎にいても特にすることもなく、一応自分はストラル個人の食客であるからして雇い主に従うべきである。特にストラルは人と関わりたい、面倒を見たい性分だということもわかっていたので、まあいつぞやのようなとんでもない子守をさせられるのでなければ、と同行した次第である。
まさかこんな思惑があったとは。例え酒の席であっても、この人が有言実行と誠実と驚かせたがりを忘れるはずがなかったのである。
「どうだ、と言われましても、僕の誕生日は、」
「覚えてないなら今日が誕生日だ! そういうことでいいだろう!」
「いやいやいや……」
堂々と胸を張りながら粗雑極まりない発言をする主に、然りとて抗うことも上手く言い返すこともできない。何より席は用意されており、用意したのは恐らくこの大雑把な主ではないのだから。
諦めて大人しく席に収まれば、酒を手にしたストラルの奥方――ティアナがにこにこと傍に寄ってきた。
「香の龍砂だけれど、よかったかしら」
「……わざわざすみません、ティアナ様」
生まれた日と同じく思い入れのない故郷の酒を取り寄せてくれたことと、こんな席を用意してくれたことに関して頭を下げる。全く気にした様子もなく、むしろ嬉しそうにティアナは杯を握らせてきた。
「謝るのはこちらの方よ。この人の遊びに付き合ってくれて」
「おーい、ティアナ」
「それから何よりも感謝を。こんなにお料理を作ったのもひさしぶりで楽しかったし、あなたにはいつも夫が世話になっているのにお礼をする機会もなかったから」
注がれる酒に返す言葉もなく、どうにも据わりが悪く視線を彷徨わせる。すると向かいの席に座ったストラルがにやりと笑って、また言いようのない感情に視線を逸らした。腹が立つ、ではないが、してやられた、というか。悔しい、というのでもないが、少なくともこの主に対して謝意を述べられるほど素直な性格ではないという自覚ぐらいはある。
ティアナも黙り込んだカイに何を言うでもなく、微笑んだまま自分の席に戻っていく。入れ替わるように服の裾を引かれる。視線を落とせばこの家の最後の一人がじっとこちらを見上げていた。手を後ろに回し、もぞもぞと身体を揺すっている。
手にした酒杯を一度卓に置き、椅子を降りて跪く。折角目の高さが合ったのに、相手はちらちらと視線を逸らし、すぐにこちらへと戻し、かと思えば逸らしを繰り返していた。ああこれはつい先ほどの自分と同じだな、などと気づいてしまえば妙に生温い気持ちになる。
「……どうしました、カイル様」
「あ、あの、あのね、ねーね」
大姐を意味する呼び方を咎めたいところだが、ぽっと頬を染めて言葉を探す幼子を遮る気も起きない。脱力しそうになる思考をどうにか追いやって続きを待つ。
やがて意を決したのか、カイルはぱっと両手を前に突き出した。
「ねーね、これあげる!」
ちいさな手のひらに載せられているのは、ところどころ歪な編み目をした紐だった。何色かの糸を縒り合わせたそれは不格好な編み方も相まって手作りだと知れる。作り手はもちろん、この子どもだろう。
「あなたがね、いつでも身につけられるものを作りたいって」
大皿から料理を各人の更に装いながら、ティアナが苦笑している。その隣ではストラルがこちらを見つめながら目を細めている。
「装身具だと好みもあるし、戦の時に邪魔になるかも知れないでしょう? でも髪結い紐だったらいつも使うものだし、邪魔にもならないし、この子でも作れるから」
「……カイル様がお一人で作られたんですか?」
「うん!」
もじもじと俯いていた子どもがぱっと顔を上げた。得意げな、そのくせまだ不安げな表情でこちらを見つめている。
すっと手を伸ばす――伸ばそうとして、跪いたままくるりと背を向けた。背後からひえっと不明な声が聞こえるが、勘違いをして泣き出す前に後ろに手を伸ばした。今使っている結い紐を解き、ばらりと髪の散るままに目線だけで振り向いて口を開く。
「カイル様、よろしければ結ってくださいませんか」
「……うん!」
恐らくあの紐の不格好さから、きっと結われた髪もとてもきれいとは言い難い仕上がりになるのだろう。
それでも今日ぐらいはいいかと思いながら、ちいさな手に髪を委ねる。
「ねーね、誕生日おめでとう」
祝われる自分よりもずっと嬉しそうに子どもが囁く。時折首筋に触れる柔らかい手がぽかぽかと温かい。
その両親の視線も温かく、どうにも落ち着かない気持ちで、けれどたまには悪くないと目を閉じた。
* * *
随分と草臥れた結い紐ですねえ。
手慰みに、カイの髪に櫛を通していたウノカが呟いた。結い紐と言われて、今や遠いらしい春の日を思い出す。何がどうして死せずここにあるのかはわからないが、ずっと首筋にあったあの紐も健在らしい。
「新しいのに変えませんか? 私、いろいろ持ってますよ」
「……気持ちはありがたいけど、この紐で特に不便なこともないし」
ちらりと視線を動かす。馬車の荷台に腰掛けて矛の手入れを続けるティルがいる。初めはカイを女子扱いするかのように戯れるウノカに苦言を呈しいていたが、今はもう諦めたらしく特に反応を返すこともない。黙々と矛を見つめて手を動かしていた。
嘆息して、そっとウノカの手を払う。堅く結わえた紐は随分と長いこと自分の傍にあって、不格好だった最初の姿などもう残っていない。
あのとき、強引に祝いの席を構えた主がいなくなっても、奥方がどうしているのかわからなくても、あのちいさな手で紐を差し出してきた子どもが変わってしまっても。片割れが消えてしまっても自分が名前を偽っても。最初の姿をなくしたこの紐だけは、ずっと共に在る。
「それに、気に入ってるんだ。大事な贈り物だから」
ウノカのちいさな謝罪の声に手を振って返し、空を見上げる。いつか砕けて破片を散らした空は白けた青を晒していて、どこからか散った淡い花弁が一枚、横切るだけだった。
* * *
「ということが、僕の人生においてもあったわけだけど」
「そうか」
「……君、僕の本当の誕生日知ってるんだよね?」
「ああ。ついでに言うと、今まできちんと祝っていたぞ。目に見える形で」
「え?」
「お前の部屋に花を一輪置くなどしていた」
「…………そんなこともあったようななかったような気がするけどさあ。それって単純に気持ち悪」
「気持ちはわかる! 非常にわかるが今は黙っておいてやれカイ! 無言で泣くなセイ!」
「な、泣いてない、泣いてないぞシエル」
「……ごめん、僕が悪かったよ」
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なお誕生日は3月31日
酒の席で、そういやお前いくつになったんだっけか、などと話題にされたのはいつのことだったか。
この手の話題は面倒だし、相手も相当呑んで赤ら顔だった。ので、さあ、いくつでしたっけねえ、などと返して躱そうとした。お前若いのにそんなボケたこと言ってて大丈夫か? などと善意の追撃を食らったが、忘れたものは忘れましたから、で無理を通して酒を舐めた。
とはいえ相手も絡み酒である。この程度で解放されるとも思っていなかったのでそこは予想の範囲内だ。
「最初に会ったときいくつだっつってたっけなあ。お前、誕生日は?」
「……さあ?」
ただし、答えに窮する。
生まれた日、さて。これは本当に覚えがない。今生での年齢に関しては一応覚えていてとぼけているのだが、年の変わり目で数えているので生まれた日を気にしたことがなかった。
対する相手は赤い眉間に縦皺を刻み、ずいと顔を寄せてきた。
「それも覚えてないのか!」
「覚えてないというか、はあ、まあ」
「おいおい……大事なことだろ?」
こちらとしては生まれた日などより、間近で酒臭い溜め息を吐かれることの方が余程大ごとである。
すすすと身を引いても赤ら顔はにじり寄ってきた。そろそろ後頭部あたりに一発入れていいだろうか、記憶もきれいに飛ぶように、且つ殴打の痕跡を残さないように良い角度で。あるいはこれを顔面にぶっかけるのはどうだろう。いや酔いを申し訳程度に醒ますか更に絡まれるかの二択でしかない気がする。
そんなことを考えながら酒杯を覗き込みつつ、お返しではないが溜め息に乗せて答える。
「別に。ストラル様ぐらい立場のある方ならともかく、一年のうちのいつも通りの一日でしょう」
「……お前、」
「強いて言えば、死ぬために生まれた一生に一度きりの日ですか」
立場ある人間であればその日と祝いを口実に駆け引きだとか根回しだとか、そんなことをしなければならないのだろう。自分はそうではない。単なる一兵卒、今生はこの酔っ払いの食客である。更に言えば自分の場合、一生に一度きりを何度も何度も繰り返しているわけで、全く以てありがたくも何もない。むしろ忌むべき――
瞬間、目の前に影。
顔を上げれば吐息どころか唇すら触れそうな距離に、じっとりした目の主人がいる。
「暗い」
「はあ?」
「暗いぞお前、いや暗いなんてもんじゃない。夜闇だ。沼の底だ。墨汁の化身だ」
そろそろかちんときて酒杯を掴む手に力がこもった。いざ顔面、という思考を読んだのかぱっと顔が離れていく。それどころか席を立って仁王立ち。腰に手を当て、こちらを見下ろす表情はにやりと、あからさまにろくでもないことを考えている顔である。
主は酒杯を手にしたまま胸を叩く。天から零れる酒を避けながら耳にした言葉を、ここから先しばらくはすっかり忘れていた。
「見てろよカイ。俺が、お前に、誕生日のなんたるかを教えてやろう」
――そう言えばそんなこともあったなあ。
遠い目をする。開かれた扉、既に見慣れた室内はいつもより豪奢な花が飾り付けられ、卓上には少しばかり手の込んだ料理が並んでいる。満面の笑みを浮かべながら主、且つ仕掛け人たるストラルは手ずから椅子を引いた。
「さあどうだカイ! いや、まずは座れ!」
一度家に帰るからお前もついてこい、などと言われたときは別段いつも通りだと思った。軍の宿舎にいても特にすることもなく、一応自分はストラル個人の食客であるからして雇い主に従うべきである。特にストラルは人と関わりたい、面倒を見たい性分だということもわかっていたので、まあいつぞやのようなとんでもない子守をさせられるのでなければ、と同行した次第である。
まさかこんな思惑があったとは。例え酒の席であっても、この人が有言実行と誠実と驚かせたがりを忘れるはずがなかったのである。
「どうだ、と言われましても、僕の誕生日は、」
「覚えてないなら今日が誕生日だ! そういうことでいいだろう!」
「いやいやいや……」
堂々と胸を張りながら粗雑極まりない発言をする主に、然りとて抗うことも上手く言い返すこともできない。何より席は用意されており、用意したのは恐らくこの大雑把な主ではないのだから。
諦めて大人しく席に収まれば、酒を手にしたストラルの奥方――ティアナがにこにこと傍に寄ってきた。
「香の龍砂だけれど、よかったかしら」
「……わざわざすみません、ティアナ様」
生まれた日と同じく思い入れのない故郷の酒を取り寄せてくれたことと、こんな席を用意してくれたことに関して頭を下げる。全く気にした様子もなく、むしろ嬉しそうにティアナは杯を握らせてきた。
「謝るのはこちらの方よ。この人の遊びに付き合ってくれて」
「おーい、ティアナ」
「それから何よりも感謝を。こんなにお料理を作ったのもひさしぶりで楽しかったし、あなたにはいつも夫が世話になっているのにお礼をする機会もなかったから」
注がれる酒に返す言葉もなく、どうにも据わりが悪く視線を彷徨わせる。すると向かいの席に座ったストラルがにやりと笑って、また言いようのない感情に視線を逸らした。腹が立つ、ではないが、してやられた、というか。悔しい、というのでもないが、少なくともこの主に対して謝意を述べられるほど素直な性格ではないという自覚ぐらいはある。
ティアナも黙り込んだカイに何を言うでもなく、微笑んだまま自分の席に戻っていく。入れ替わるように服の裾を引かれる。視線を落とせばこの家の最後の一人がじっとこちらを見上げていた。手を後ろに回し、もぞもぞと身体を揺すっている。
手にした酒杯を一度卓に置き、椅子を降りて跪く。折角目の高さが合ったのに、相手はちらちらと視線を逸らし、すぐにこちらへと戻し、かと思えば逸らしを繰り返していた。ああこれはつい先ほどの自分と同じだな、などと気づいてしまえば妙に生温い気持ちになる。
「……どうしました、カイル様」
「あ、あの、あのね、ねーね」
大姐を意味する呼び方を咎めたいところだが、ぽっと頬を染めて言葉を探す幼子を遮る気も起きない。脱力しそうになる思考をどうにか追いやって続きを待つ。
やがて意を決したのか、カイルはぱっと両手を前に突き出した。
「ねーね、これあげる!」
ちいさな手のひらに載せられているのは、ところどころ歪な編み目をした紐だった。何色かの糸を縒り合わせたそれは不格好な編み方も相まって手作りだと知れる。作り手はもちろん、この子どもだろう。
「あなたがね、いつでも身につけられるものを作りたいって」
大皿から料理を各人の更に装いながら、ティアナが苦笑している。その隣ではストラルがこちらを見つめながら目を細めている。
「装身具だと好みもあるし、戦の時に邪魔になるかも知れないでしょう? でも髪結い紐だったらいつも使うものだし、邪魔にもならないし、この子でも作れるから」
「……カイル様がお一人で作られたんですか?」
「うん!」
もじもじと俯いていた子どもがぱっと顔を上げた。得意げな、そのくせまだ不安げな表情でこちらを見つめている。
すっと手を伸ばす――伸ばそうとして、跪いたままくるりと背を向けた。背後からひえっと不明な声が聞こえるが、勘違いをして泣き出す前に後ろに手を伸ばした。今使っている結い紐を解き、ばらりと髪の散るままに目線だけで振り向いて口を開く。
「カイル様、よろしければ結ってくださいませんか」
「……うん!」
恐らくあの紐の不格好さから、きっと結われた髪もとてもきれいとは言い難い仕上がりになるのだろう。
それでも今日ぐらいはいいかと思いながら、ちいさな手に髪を委ねる。
「ねーね、誕生日おめでとう」
祝われる自分よりもずっと嬉しそうに子どもが囁く。時折首筋に触れる柔らかい手がぽかぽかと温かい。
その両親の視線も温かく、どうにも落ち着かない気持ちで、けれどたまには悪くないと目を閉じた。
* * *
随分と草臥れた結い紐ですねえ。
手慰みに、カイの髪に櫛を通していたウノカが呟いた。結い紐と言われて、今や遠いらしい春の日を思い出す。何がどうして死せずここにあるのかはわからないが、ずっと首筋にあったあの紐も健在らしい。
「新しいのに変えませんか? 私、いろいろ持ってますよ」
「……気持ちはありがたいけど、この紐で特に不便なこともないし」
ちらりと視線を動かす。馬車の荷台に腰掛けて矛の手入れを続けるティルがいる。初めはカイを女子扱いするかのように戯れるウノカに苦言を呈しいていたが、今はもう諦めたらしく特に反応を返すこともない。黙々と矛を見つめて手を動かしていた。
嘆息して、そっとウノカの手を払う。堅く結わえた紐は随分と長いこと自分の傍にあって、不格好だった最初の姿などもう残っていない。
あのとき、強引に祝いの席を構えた主がいなくなっても、奥方がどうしているのかわからなくても、あのちいさな手で紐を差し出してきた子どもが変わってしまっても。片割れが消えてしまっても自分が名前を偽っても。最初の姿をなくしたこの紐だけは、ずっと共に在る。
「それに、気に入ってるんだ。大事な贈り物だから」
ウノカのちいさな謝罪の声に手を振って返し、空を見上げる。いつか砕けて破片を散らした空は白けた青を晒していて、どこからか散った淡い花弁が一枚、横切るだけだった。
* * *
「ということが、僕の人生においてもあったわけだけど」
「そうか」
「……君、僕の本当の誕生日知ってるんだよね?」
「ああ。ついでに言うと、今まできちんと祝っていたぞ。目に見える形で」
「え?」
「お前の部屋に花を一輪置くなどしていた」
「…………そんなこともあったようななかったような気がするけどさあ。それって単純に気持ち悪」
「気持ちはわかる! 非常にわかるが今は黙っておいてやれカイ! 無言で泣くなセイ!」
「な、泣いてない、泣いてないぞシエル」
「……ごめん、僕が悪かったよ」
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