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Day23「探偵」 #文披31題 #小咄 #35103
ヴィッテちゃんのおべんとうがなくなった! 鍋を叩く音が響いた後、下町学校のちいさな教室は大さわぎとなった。
子どもたちは机で眠り続けるマオを除いて、みんなで教室中を探し回る。見つかったのは廊下の手洗い場、伏せて並べられた、空っぽになってきれいに洗われたおべんとうばこだけだった。
犯人は誰だ、近所ののらねこがいつの間にか忍び込んで盗んでいったのかも。もしかするとグレイが空腹のあまり盗み食いをしたのかも。子どもたちは大さわぎをしたが、だんだんお昼の時間が少なくなっていくのに気づくと静かになっていく。自分のおべんとうが消えてしまう前に食べないといけないし、遊ぶ時間もなくなってしまう。
おなかを抱えてしょんぼりするヴィンギローテに、ミコトは自分のおべんとうを半分あげた。ほんとうは、ミコトは口から何かを食べなくても問題ない。だからおべんとうを丸ごとあげてもよかったのだけれど、ヴィンギローテが遠慮する、とはこっそりとトワから言われたことだった。それに、ミコトが少しも食べないと今日もおべんとうを作ってくれたハヤトが悲しむような気がしたのだ。だからミコトはおべんとうの半分をしょんぼりするヴィンギローテにあげて、トワも数段重ねたおべんとうの一段一段から少しずつヴィンギローテにおかずをあげた。三人並んで同じおべんとうを食べて、ヴィンギローテはおいしいねと笑った。ミコトはやっと口から『食べる』ことに慣れてきたところだったけれど、たしかに、今日はいつもよりおいしいおべんとうだった気がした。ハヤトがとってもおいしく作ってくれたのだろうか?
教室に戻ると、やっと目を覚ましたマオが大きくあくびをしているところだった。おべんとうの話をするとみるみるうちにしょんぼりして、やっぱりもらわなかったらよかったね、ごめんねとヴィンギローテに謝っていた。そこでやっとヴィンギローテは、朝からおなかが空いたとしょげるマオに自分のおべんとうを丸ごとあげたことを思い出した。今日のおべんとうの魚は焼きすぎで好きじゃないから、と話していたことも思い出したが、ミコトとトワの譲った焼き魚はおいしかったことも一緒に思い出していた。
(下町学校組/セーレーシュのミコトさん)
下町探偵団!おべんとうはみんなで食べるとおいしいことを発見!
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ヴィッテちゃんのおべんとうがなくなった! 鍋を叩く音が響いた後、下町学校のちいさな教室は大さわぎとなった。
子どもたちは机で眠り続けるマオを除いて、みんなで教室中を探し回る。見つかったのは廊下の手洗い場、伏せて並べられた、空っぽになってきれいに洗われたおべんとうばこだけだった。
犯人は誰だ、近所ののらねこがいつの間にか忍び込んで盗んでいったのかも。もしかするとグレイが空腹のあまり盗み食いをしたのかも。子どもたちは大さわぎをしたが、だんだんお昼の時間が少なくなっていくのに気づくと静かになっていく。自分のおべんとうが消えてしまう前に食べないといけないし、遊ぶ時間もなくなってしまう。
おなかを抱えてしょんぼりするヴィンギローテに、ミコトは自分のおべんとうを半分あげた。ほんとうは、ミコトは口から何かを食べなくても問題ない。だからおべんとうを丸ごとあげてもよかったのだけれど、ヴィンギローテが遠慮する、とはこっそりとトワから言われたことだった。それに、ミコトが少しも食べないと今日もおべんとうを作ってくれたハヤトが悲しむような気がしたのだ。だからミコトはおべんとうの半分をしょんぼりするヴィンギローテにあげて、トワも数段重ねたおべんとうの一段一段から少しずつヴィンギローテにおかずをあげた。三人並んで同じおべんとうを食べて、ヴィンギローテはおいしいねと笑った。ミコトはやっと口から『食べる』ことに慣れてきたところだったけれど、たしかに、今日はいつもよりおいしいおべんとうだった気がした。ハヤトがとってもおいしく作ってくれたのだろうか?
教室に戻ると、やっと目を覚ましたマオが大きくあくびをしているところだった。おべんとうの話をするとみるみるうちにしょんぼりして、やっぱりもらわなかったらよかったね、ごめんねとヴィンギローテに謝っていた。そこでやっとヴィンギローテは、朝からおなかが空いたとしょげるマオに自分のおべんとうを丸ごとあげたことを思い出した。今日のおべんとうの魚は焼きすぎで好きじゃないから、と話していたことも思い出したが、ミコトとトワの譲った焼き魚はおいしかったことも一緒に思い出していた。
(下町学校組/セーレーシュのミコトさん)
下町探偵団!おべんとうはみんなで食べるとおいしいことを発見!
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いやこんなに楽で優雅だと鈍ってしまうのでもう少しあくせくした方がいいそれはそう
て投稿しようとした瞬間職員室に押し入られた
職員がみんないて比較的自立した児童が多い日、最高。ひさしぶりに優雅な昼休憩取っている…常にこうであれ…
レイヴ×ファリルだと昔は思っていたがファリル×レイヴも圧倒的にありえるな…とそこの2011年あたりからはもう思い始めている #リボ
アルフォードさんはナスがきらい #リボ
王宮内で一番高いところ。尖塔は鐘を戴き、王城のみならず城下の全てに王の偉業と刻を告げる。
不遜にもその鐘を足下に、急傾斜の先、天に刺す針のように尖った先端に少年――シーレは立っている。
咎められることではなかった。咎められるどころか、己を育て鍛え上げる師に命じられたことだ。
びゅうびゅうと風が吹いて、銀の髪を引っ張ってそのままシーレを地面に引きずり下ろそうとしている。踵だけで踏ん張るようにして、シーレはその場に留まってた。狭いそこで、ようよう馴染んできた軍靴の先は空を踏んでいる。もう後いくらも立ってられないだろう。未熟の証左だが、今はそれでよかった。
シーレはここから、飛ばなければならない。
急傾斜の屋根に隠れて地面は見えない。石畳の上では、師が足裏をしっかとつけてシーレの降下を待っている。未熟な己を危惧して魔術師たちもいくらか配置されている。中には若干にして類い希なる才を誇る少年魔術師もいるはずだ。彼は自身で細工を施したシーレの武器が、今から発揮する成果を心待ちにしていることだろう。
今から、飛ばなければならない。
魔術師たちが加護を施した武器と、王国軍が受け継ぎ鍛え上げた技術があれば、この程度の高さなど。自由に、駆けるように、滑るように羽のように降下できるはずだ。でなければ王女殿下の近衛騎士など務まらない。つまりここから飛ぶことは、シーレにとって一つの試練だった。ここで生きていてもいいのか、自身に価値があるのか、という物差しの。
手首を振る。ナイフと共にじゃらりと細い鎖が袖から零れる。風になぶられてぶらぶらと揺れている。
足先の裏を風が撫でる。簡単なことだ、少し膝に力を入れるだけ。踵を離して、空へ身を投げるだけ。すると自由になる。ただ落ちるだけの体を、鎖でどこかに繋いできれいに着地する。そうすれば騎士として許されて、シーレの価値は証明される。
でもそれは、鎖で繋いで、縛って、結局不自由なのではないだろうか。ふと気づいた瞬間だけ、シーレは自由だった。体の全部を空に投げ出して、飛ぶ。その瞬間だけは。
(シーレ/王女と騎士)
「おちちゃった!」のシーレ側
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