No.2398

Day23「探偵」 #文披31題 #小咄 #35103

 ヴィッテちゃんのおべんとうがなくなった! 鍋を叩く音が響いた後、下町学校のちいさな教室は大さわぎとなった。
 子どもたちは机で眠り続けるマオを除いて、みんなで教室中を探し回る。見つかったのは廊下の手洗い場、伏せて並べられた、空っぽになってきれいに洗われたおべんとうばこだけだった。
 犯人は誰だ、近所ののらねこがいつの間にか忍び込んで盗んでいったのかも。もしかするとグレイが空腹のあまり盗み食いをしたのかも。子どもたちは大さわぎをしたが、だんだんお昼の時間が少なくなっていくのに気づくと静かになっていく。自分のおべんとうが消えてしまう前に食べないといけないし、遊ぶ時間もなくなってしまう。
 おなかを抱えてしょんぼりするヴィンギローテに、ミコトは自分のおべんとうを半分あげた。ほんとうは、ミコトは口から何かを食べなくても問題ない。だからおべんとうを丸ごとあげてもよかったのだけれど、ヴィンギローテが遠慮する、とはこっそりとトワから言われたことだった。それに、ミコトが少しも食べないと今日もおべんとうを作ってくれたハヤトが悲しむような気がしたのだ。だからミコトはおべんとうの半分をしょんぼりするヴィンギローテにあげて、トワも数段重ねたおべんとうの一段一段から少しずつヴィンギローテにおかずをあげた。三人並んで同じおべんとうを食べて、ヴィンギローテはおいしいねと笑った。ミコトはやっと口から『食べる』ことに慣れてきたところだったけれど、たしかに、今日はいつもよりおいしいおべんとうだった気がした。ハヤトがとってもおいしく作ってくれたのだろうか?
 教室に戻ると、やっと目を覚ましたマオが大きくあくびをしているところだった。おべんとうの話をするとみるみるうちにしょんぼりして、やっぱりもらわなかったらよかったね、ごめんねとヴィンギローテに謝っていた。そこでやっとヴィンギローテは、朝からおなかが空いたとしょげるマオに自分のおべんとうを丸ごとあげたことを思い出した。今日のおべんとうの魚は焼きすぎで好きじゃないから、と話していたことも思い出したが、ミコトとトワの譲った焼き魚はおいしかったことも一緒に思い出していた。
(下町学校組/セーレーシュのミコトさん)

下町探偵団!おべんとうはみんなで食べるとおいしいことを発見!
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