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Day10「突風」 #文披31題 #小咄 #王女と騎士
悲鳴と歓声が二重に絡まって尾を引いて、あっという間に置き去りになる。
遠い遠い、高い高い空の向こうへ置いてけぼり。ふたりはぐんぐん遠ざかる。悲鳴から、過去から。ふたりを縛っていた何もかもから。
ねえ! 歓声が叫んだ。ごうごうという風の音の向こうで、あまりに鮮明な声だった。それもまた頭のずっと遠くに置き去りになった。それでも獣の仔は確かに聞いた。地上に着いたら何しよっか! 悲鳴を上げながら、ずっと向こうのことばを捉えた。ごうごうと唸る音の中、考えた。
何をしようか。何かできるのだろうか。
地面を這って進むか弱い虫のように、影を進んで生きるだけではないのだろうか。歓声は潜むことなど何も知らない明るさで、ただただ落下の自由を叫んでいる。どんどん自由が近づいてくる。大地はその大きな手を広げて、空の島から落ちてくるふたりを待っている――
そういうことは、生きて降りてから考えましょうよ! 悲鳴は泣きを含んで答えたが、涙はまた空の彼方に置き去りになった。きらきらしながら舞い上がって、ふたりの墜落を祝っていた。
(ギベルとレイリア/王女と騎士)
冒険の始まりだヤッホー! ヒエエェェ…!!
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悲鳴と歓声が二重に絡まって尾を引いて、あっという間に置き去りになる。
遠い遠い、高い高い空の向こうへ置いてけぼり。ふたりはぐんぐん遠ざかる。悲鳴から、過去から。ふたりを縛っていた何もかもから。
ねえ! 歓声が叫んだ。ごうごうという風の音の向こうで、あまりに鮮明な声だった。それもまた頭のずっと遠くに置き去りになった。それでも獣の仔は確かに聞いた。地上に着いたら何しよっか! 悲鳴を上げながら、ずっと向こうのことばを捉えた。ごうごうと唸る音の中、考えた。
何をしようか。何かできるのだろうか。
地面を這って進むか弱い虫のように、影を進んで生きるだけではないのだろうか。歓声は潜むことなど何も知らない明るさで、ただただ落下の自由を叫んでいる。どんどん自由が近づいてくる。大地はその大きな手を広げて、空の島から落ちてくるふたりを待っている――
そういうことは、生きて降りてから考えましょうよ! 悲鳴は泣きを含んで答えたが、涙はまた空の彼方に置き去りになった。きらきらしながら舞い上がって、ふたりの墜落を祝っていた。
(ギベルとレイリア/王女と騎士)
冒険の始まりだヤッホー! ヒエエェェ…!!
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児童と「めっちゃ咳するやん」「そんなこともあるよ(ガサガサ声)」とか「声すごいやん!風邪やろ!」「そうね!帰っていい!?」「いいよ!」「ほんな帰るね!」「ダメダメダメ!」というやり取りを繰り返したのに休めない。おかしい
ちょっとエアコンが効けば上着を着込み秒外に出れば汗が噴き出し鼻水ずびずび咳えっっほえほ声がっさがさ状態でどっちにしろ生理痛で死ぬやろからなんで有休取らんの上司に明日死んでると思うんで…と前振りをしたら自分も体調不良そんな感じと謎の予防線を張られた。わ…わたしの体調不良に便乗するな💢💢自分の言葉で語れ体調不良を💢💢💢💢
ストレスと生理で免疫力下がってふつうに風邪をひいている
寒いが暑いし帰りたい~しんどい~感染性の38℃越えとかならんと休む選択肢出てこない~無理~
月曜日はサイコーに限界ででも自分が出るしかない外部との会が3つもあったためメソメソしながら出勤し残機3の抗不安薬に手を出して乗り切り、逆にそこを超えることができてしまったばかりに火曜日はハイになり(躁転では??)しかし酷暑の中屋外作業を強いられた上1人で2人分の仕事をするハメになり、早よ帰ろうと思ったものの次の日朝イチからの研修会資料を誰も用意してないことに気づき1人がガーガーコピー機を回し翌日も誰もzoomの設定ができまいと思って1時間早よ出勤し、休日の昨日は風邪引いてエアコンをつければ寒い切れば暑いの中2週間ぶりに仕事に出ずに済む休日を過ごし、今日も朝から炎天下に晒された上咳くしゃみ鼻水止まらず寒暖差の直撃を受け生理まで始まったのでもう帰りたいですねわたしの6時間半+1時間の超過勤務かえして
ここは存外と特等席だ。杯を傾けながら、左しか残っていない目玉をほんのわずかに右へ左へ。お互いから視線を逸らして、その実、真ん中にして真ん前の波佩など路傍の石の如く扱って互いだけを意識する男たち。
「……ので、波佩殿もおわかりかと思います。これの言い分に理がないと」
「るッせェな。言いてェことあンなら自分で言えよ、コッチに借りンじゃなくてよ」
お互いの口に波佩を上らせて尚、互いしかいない訳である。ここに可愛い懐刀がいれば不敬だと甲高く喚いているところだが、義弟夫夫の痴話喧嘩に入れる必要もあるまいと下がらせている――熊野だけは座敷の隅で黙して座しているが。
ここまで互いにいがみ合いながら、未だ先に折れるのはそちらだと言わんばかりに矛先を下げている。成程成程。波佩は器用にも頷きながら杯を干した。遠路遥々、生まれたばかりのよちよち歩きが七宝ではなくこちらを頼ってきたというだけで義弟に肩入れしたくなるが、男の性分として義弟の傲慢な口ぶりにも大いに同意できるところがある。
どちらかに言を傾け、更に場を引っ掻き回すのが一番楽しいに決まっている。しかしながら露の上下二国を従える辣腕の領主は、そこまで享楽的ではなかった。
故に空の杯をたんと畳上に落とした。濃藍の義弟がはっとして、黄金の義弟がちらと目端で波佩を捉える。それを間違いなく認めて鷹揚に頷き、そして波佩は立ち上がる。獣の尾に似た結い髪が撓って跡を曳き、追うように存在すら沈黙に閉じ込めていた熊野が続いた。
「夫夫喧嘩は犬も食わんと言うからな。オレは暫し席を外す故、いくらでも、奥深くまで、二人で語り合え!」
じゃあまたな! 呆然と見上げる二対の瞳を置き去りに、波佩は揚々たる足取りで己の間を辞した。
子は鎹、とはよく言ったものである。しかしながら波佩は夫夫の子ではなく義兄であり、鎹ほどの勤勉さもなかった。二人を只中で支える程度はしてやるとして、どちらにも気紛れに懐を広げる程度には適当であった。
全てを開け放したまま、波佩は熊野だけを従えて城下へと足を向けた。日の高い今のうちから浴びるように酒を飲むつもりである、恐らく夫夫の語らいは夜更けまでは続くはずなので。
(波佩と氷雨と穂群/トウジンカグラ)
いつかの夫夫喧嘩で家出する穂群と後手後手で追いかける氷雨の話。蝶番のようにバタバタと、ふたりを繋ぎつつもどちらにでも懐を広げる男。
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