0801の日と0802の日のヒサホム二次創作※ほんのりすけべ#トウジンカグラ #小咄 開く ただいまァ、と蕩けた声が聞こえて、氷雨は蒼天を振る手を止めた。 滲んで滴る汗を拭えば、盥を傍らに抱えた穂群が庭に回り込む姿が見えた。裾をちょろりと結った髪がふわふわ揺れ、氷雨ほどではないが生え際に薄らと汗を滲ませている。盥の中では濡れた布がちいさな山を作っていた。「おかえり。一人で大丈夫だったか?」「別に。洗濯だけだろ」 視線すら返すことなく、穂群は答えて盥を足下に置いた。濡れた着物を取り上げパンと叩いて伸ばしている。 こういった物言いが穂群にとって照れ隠しのようなものだと、氷雨は薄々理解している。鞘に納めたままだった蒼天を濡れ縁に横たえ、代わりに庭の隅に寄せていた竿竹を手にしながらせっせと着物の皺を伸ばす伴侶の背中を眺める。当初の当初にはヒノモトを統べる今上帝に知らず甘やかされ、汚れ破れた着物の代わりは何を言わずとも用意されているものと思い込んでいたせいで洗濯という行為を理解していなかった穂群が、フジに移って以降も所在なく暮らしのおおよそを氷雨か、女中のそよに世話されるばかりだったこれが、自ら家の事を一つ一つ覚えて不器用ながらもこなす様が実にいじらしい。別に、洗濯だけ、この台詞を吐くまでにどれほどの――主に氷雨に隠れて家事の教えを請われていたそよの――苦労があったことだろう。大丈夫だったか、という氷雨の危惧には洗濯という行為そのもののみならず、里の洗濯場になっている川縁で他の里人と何某かがあったのではないかという危惧も含まれているのだが、気づいているのかいないのか穂群が答えない以上は今は触れずにおく。「ありがとうな」「ん」 竹を持って支えてやれば、ちいさく頭を傾けて穂群が着物の袖を通す。綺麗に皺の伸びた襦袢は氷雨のものだ。続けて穂群が叩いて通したものは穂群自身の着流しで、こちらは皺の伸びが甘い。穂群が手を入れた二着の違いを静かに噛み締めながら、氷雨はいっぱいになった竿を庭の隅に立てられた支柱に渡した。着流しの方は穂群が干し終わって庭から去った後、叩いて皺を伸ばしておいてやろうと密かに考えながら次の竿を取りに戻る。 二人の道着や袴を続けて干し、最後には長く伸びる褌を竿に引っかけてやっと盥が空になる。物置場にしている日陰に盥を干し、穂群ははたはたと襟元をはためかせた。しっとりと汗の滲んだ肌が陽光に晒され、時折開き過ぎた襟から赤い頂がちらりと覗く。思わず凝視しそうになるそこから目を逸らし、氷雨は意味もなく咳払いを零した。ついでにごくりと喉が鳴り、額の汗がつるりと滑っていく。「疲れただろう、中に戻って涼むといい」「オマエは?」「俺……は、もう少し、素振りをしてから戻る、から」「ふぅん」 穂群の肩を押せばすんなりと進む。かと思えば濡れ縁に腰かけて、そのまま庭を向いて足をぶらつかせ始めた。戻らないのかと視線で問えば、穂群は少しだけ顎を上げる。微かに弓なりに反る喉に薄く汗が滑るのが見えた。「じゃあ見てる」「……そうか」 薄らと撓る唇に居心地の悪さを覚えるが、見るな奥にいろと言うのも不自然だろう。穂群が何を思っているのかは知らないが、道場でやっと真っ当な剣を学び始めたからには氷雨の体捌きに興味があるのかも知れない。穂群の隣の蒼天を掴めば、どこからか含んだ笑い声が聞こえてきたが無視を決める。 穂群が洗い、二人で干した洗濯物がゆっくりと風に揺れている。濡れ縁に腰かけて履物を落とした穂群が、素足を遊ばせながら氷雨を眺めている。 先よりも賑やかしい庭で蒼天を上段に構える。一歩踏み出しながら振り下ろす。足を引いて刃先を持ち上げる。少しも揺るがぬように、ざわめく心を律して只管に振る。穂群が戻る前よりも意識を研ぎ澄ませる必要がある。じいっと、氷雨だけを見つめる穂波の瞳の強さときたら。 ちらりと目端に捉えれば、穂群はまたはたりはたりと、ゆるやかに襟を開いていた。氷雨よりも白い肌が晒されて、ふっくりとなだらかな胸が覗いている。時折覗く頂は赤く、氷雨の視線はつい、周囲に残された自身の歯形を捉えてしまう。動揺にぶれればにんまりと、口の端を持ち上げる様が見えた。「……~~~~穂群ッ」「あっは。ンだよ、続けねェの?」 遂には曝け出すように片襟を開き、穂群は笑いを多分に含んだ声を返した。これはもう、どう考えても煽っている。だからといって蒼天を下ろし、ずかずかと穂群に歩み寄る自身が一番駄目なのも理解はしているのだがこればかりは仕方がないだろう。 隣に蒼天を転がしながら濡れ縁に片膝から乗り上げる。ちょうど穂群の膝を割るような格好で、そのまま腕がにゅうっと伸びてきた。諸肌脱ぎにしていたせいで素肌同士が触れてかっと熱くなる。穂群の首筋を汗が流れて鎖骨に溜まる様が嫌に眩しく、氷雨は衝動のままにそこに甘く齧り付いた。んッと上がる声は艶めいて、そのくせやはり笑いを含んでいる。やられたと思いながら止まる術などなく、ならばせめてやり返したい。囓った鎖骨を舌でなぞり、氷雨はそのままなだらかな胸へと舌先を這わせた。ふにゅりと沈む感覚に手が伸びるのは最早仕方のないことで、まるで女の乳房のような、けれど丸みを欠いてなだらかなそこを手の腹で撫で摩り、寄せるようにやわく揉んだ。「んっ……ぁ、は……なァ、ほら……」「ッ……は……」 ちいさく喉を詰まらせて喘ぎながら、それでも穂群は氷雨の頭を掻き抱く。結い上げた髪に指を絡ませながら撫でられて、氷雨は誘われるまま穂群の肌を吸った。張りのあるなだらかなところ、ふっくりと色づいて膨らむ乳輪、そしてつんと尖りを増す乳首を舌先で弾き、口に含む。 誘っておきながらぴくりと身体全体が跳ねる様が愛おしく、氷雨は片手で穂群の胸をやわやわと揉みながら乳首を吸った。氷雨のものよりもぷっくりとして大きなそれは瑞々しい果実のようで、いつまでも口に含んでいたくなる。母乳が出る訳でもないのに、まるで氷雨をもてなすかのように舌に触れる肌はどこまでも甘い。 二人で暮らすこの天ノ端の別邸は、かつて氷雨の母、しずりが里から隠されるように住んでいた場所だ。実の子である氷雨すらここに来ることは禁じられ遠い記憶は朧になっているが、それでも父の目を盗んで訪れたこの庭の、この縁側に、ちいさな母はいつも楽しそうに座っていた。氷雨を見つけては傍に呼びやさしく頭を撫でてくれた。無論記憶にはなく、幼い精神と肉体の母は乳も出なかったためそよが乳母として赤子の氷雨を育ててくれたと聞いてはいるが、それでもかつて母の暮らしたこの庭で赤子のように穂群の胸をしゃぶる行為には幾許か思うところがないでもない。 胸中を過ぎる背徳感と、少しばかりの興奮。それらを誤魔化すように溢れる唾液を絡めて口内で揉みしだいて吸えば、ひうっと甘ったれた声が頭上から落ちてきた。「あは……オマエ、ここ……すき、だなァ……? ぁンッ」「ッハ……お前も、だろッ……!」 自身を棚に上げる穂群を諫めるように甘く尖りに歯を立てれば、跳ねた拍子に穂群の股が氷雨の膝に触れた。身体を重ねるうちに人並みに快楽を得るようになってきたそこは硬さを帯びている。 そもそも誘ったのは穂群からで、ならば欲しいのは氷雨ではなく穂群のはずだろう。なのに氷雨を幼気に扱って笑う穂群に俄に苛立ちを覚え、氷雨は穂群の着物の裾に手を入れた。しっとりと汗の滲んだそこに指を伸ばせば、ぬるんと熱い感触が触れる。 ぴくりと、思わず氷雨のこめかみが蠢いた。 穂群は熱い吐息と共に口の端を緩め、するりと膝を立てる。するすると、勿体ぶるように股を開いて着物の裾を割って――そこには何も身につけていない。しっとりと汗を滲ませ、ちいさく頭をもたげる雄の先、そして晒された奥の蕾が綻んで、とろりと蜜を零している。「な、ひさめ」 氷雨が舐りしゃぶり、つんと尖らせた乳首をも見せつけるように晒して、穂群はうっとりと微笑んだ。「しよォぜ」 伴侶の痴態を前にした氷雨の背後で、洗いたての二人の着物がそよそよと風に揺れいた。閉じる 2023.8.2(Wed) 01:57:39 ネタ
※ほんのりすけべ
#トウジンカグラ #小咄
ただいまァ、と蕩けた声が聞こえて、氷雨は蒼天を振る手を止めた。
滲んで滴る汗を拭えば、盥を傍らに抱えた穂群が庭に回り込む姿が見えた。裾をちょろりと結った髪がふわふわ揺れ、氷雨ほどではないが生え際に薄らと汗を滲ませている。盥の中では濡れた布がちいさな山を作っていた。
「おかえり。一人で大丈夫だったか?」
「別に。洗濯だけだろ」
視線すら返すことなく、穂群は答えて盥を足下に置いた。濡れた着物を取り上げパンと叩いて伸ばしている。
こういった物言いが穂群にとって照れ隠しのようなものだと、氷雨は薄々理解している。鞘に納めたままだった蒼天を濡れ縁に横たえ、代わりに庭の隅に寄せていた竿竹を手にしながらせっせと着物の皺を伸ばす伴侶の背中を眺める。当初の当初にはヒノモトを統べる今上帝に知らず甘やかされ、汚れ破れた着物の代わりは何を言わずとも用意されているものと思い込んでいたせいで洗濯という行為を理解していなかった穂群が、フジに移って以降も所在なく暮らしのおおよそを氷雨か、女中のそよに世話されるばかりだったこれが、自ら家の事を一つ一つ覚えて不器用ながらもこなす様が実にいじらしい。別に、洗濯だけ、この台詞を吐くまでにどれほどの――主に氷雨に隠れて家事の教えを請われていたそよの――苦労があったことだろう。大丈夫だったか、という氷雨の危惧には洗濯という行為そのもののみならず、里の洗濯場になっている川縁で他の里人と何某かがあったのではないかという危惧も含まれているのだが、気づいているのかいないのか穂群が答えない以上は今は触れずにおく。
「ありがとうな」
「ん」
竹を持って支えてやれば、ちいさく頭を傾けて穂群が着物の袖を通す。綺麗に皺の伸びた襦袢は氷雨のものだ。続けて穂群が叩いて通したものは穂群自身の着流しで、こちらは皺の伸びが甘い。穂群が手を入れた二着の違いを静かに噛み締めながら、氷雨はいっぱいになった竿を庭の隅に立てられた支柱に渡した。着流しの方は穂群が干し終わって庭から去った後、叩いて皺を伸ばしておいてやろうと密かに考えながら次の竿を取りに戻る。
二人の道着や袴を続けて干し、最後には長く伸びる褌を竿に引っかけてやっと盥が空になる。物置場にしている日陰に盥を干し、穂群ははたはたと襟元をはためかせた。しっとりと汗の滲んだ肌が陽光に晒され、時折開き過ぎた襟から赤い頂がちらりと覗く。思わず凝視しそうになるそこから目を逸らし、氷雨は意味もなく咳払いを零した。ついでにごくりと喉が鳴り、額の汗がつるりと滑っていく。
「疲れただろう、中に戻って涼むといい」
「オマエは?」
「俺……は、もう少し、素振りをしてから戻る、から」
「ふぅん」
穂群の肩を押せばすんなりと進む。かと思えば濡れ縁に腰かけて、そのまま庭を向いて足をぶらつかせ始めた。戻らないのかと視線で問えば、穂群は少しだけ顎を上げる。微かに弓なりに反る喉に薄く汗が滑るのが見えた。
「じゃあ見てる」
「……そうか」
薄らと撓る唇に居心地の悪さを覚えるが、見るな奥にいろと言うのも不自然だろう。穂群が何を思っているのかは知らないが、道場でやっと真っ当な剣を学び始めたからには氷雨の体捌きに興味があるのかも知れない。穂群の隣の蒼天を掴めば、どこからか含んだ笑い声が聞こえてきたが無視を決める。
穂群が洗い、二人で干した洗濯物がゆっくりと風に揺れている。濡れ縁に腰かけて履物を落とした穂群が、素足を遊ばせながら氷雨を眺めている。
先よりも賑やかしい庭で蒼天を上段に構える。一歩踏み出しながら振り下ろす。足を引いて刃先を持ち上げる。少しも揺るがぬように、ざわめく心を律して只管に振る。穂群が戻る前よりも意識を研ぎ澄ませる必要がある。じいっと、氷雨だけを見つめる穂波の瞳の強さときたら。
ちらりと目端に捉えれば、穂群はまたはたりはたりと、ゆるやかに襟を開いていた。氷雨よりも白い肌が晒されて、ふっくりとなだらかな胸が覗いている。時折覗く頂は赤く、氷雨の視線はつい、周囲に残された自身の歯形を捉えてしまう。動揺にぶれればにんまりと、口の端を持ち上げる様が見えた。
「……~~~~穂群ッ」
「あっは。ンだよ、続けねェの?」
遂には曝け出すように片襟を開き、穂群は笑いを多分に含んだ声を返した。これはもう、どう考えても煽っている。だからといって蒼天を下ろし、ずかずかと穂群に歩み寄る自身が一番駄目なのも理解はしているのだがこればかりは仕方がないだろう。
隣に蒼天を転がしながら濡れ縁に片膝から乗り上げる。ちょうど穂群の膝を割るような格好で、そのまま腕がにゅうっと伸びてきた。諸肌脱ぎにしていたせいで素肌同士が触れてかっと熱くなる。穂群の首筋を汗が流れて鎖骨に溜まる様が嫌に眩しく、氷雨は衝動のままにそこに甘く齧り付いた。んッと上がる声は艶めいて、そのくせやはり笑いを含んでいる。やられたと思いながら止まる術などなく、ならばせめてやり返したい。囓った鎖骨を舌でなぞり、氷雨はそのままなだらかな胸へと舌先を這わせた。ふにゅりと沈む感覚に手が伸びるのは最早仕方のないことで、まるで女の乳房のような、けれど丸みを欠いてなだらかなそこを手の腹で撫で摩り、寄せるようにやわく揉んだ。
「んっ……ぁ、は……なァ、ほら……」
「ッ……は……」
ちいさく喉を詰まらせて喘ぎながら、それでも穂群は氷雨の頭を掻き抱く。結い上げた髪に指を絡ませながら撫でられて、氷雨は誘われるまま穂群の肌を吸った。張りのあるなだらかなところ、ふっくりと色づいて膨らむ乳輪、そしてつんと尖りを増す乳首を舌先で弾き、口に含む。
誘っておきながらぴくりと身体全体が跳ねる様が愛おしく、氷雨は片手で穂群の胸をやわやわと揉みながら乳首を吸った。氷雨のものよりもぷっくりとして大きなそれは瑞々しい果実のようで、いつまでも口に含んでいたくなる。母乳が出る訳でもないのに、まるで氷雨をもてなすかのように舌に触れる肌はどこまでも甘い。
二人で暮らすこの天ノ端の別邸は、かつて氷雨の母、しずりが里から隠されるように住んでいた場所だ。実の子である氷雨すらここに来ることは禁じられ遠い記憶は朧になっているが、それでも父の目を盗んで訪れたこの庭の、この縁側に、ちいさな母はいつも楽しそうに座っていた。氷雨を見つけては傍に呼びやさしく頭を撫でてくれた。無論記憶にはなく、幼い精神と肉体の母は乳も出なかったためそよが乳母として赤子の氷雨を育ててくれたと聞いてはいるが、それでもかつて母の暮らしたこの庭で赤子のように穂群の胸をしゃぶる行為には幾許か思うところがないでもない。
胸中を過ぎる背徳感と、少しばかりの興奮。それらを誤魔化すように溢れる唾液を絡めて口内で揉みしだいて吸えば、ひうっと甘ったれた声が頭上から落ちてきた。
「あは……オマエ、ここ……すき、だなァ……? ぁンッ」
「ッハ……お前も、だろッ……!」
自身を棚に上げる穂群を諫めるように甘く尖りに歯を立てれば、跳ねた拍子に穂群の股が氷雨の膝に触れた。身体を重ねるうちに人並みに快楽を得るようになってきたそこは硬さを帯びている。
そもそも誘ったのは穂群からで、ならば欲しいのは氷雨ではなく穂群のはずだろう。なのに氷雨を幼気に扱って笑う穂群に俄に苛立ちを覚え、氷雨は穂群の着物の裾に手を入れた。しっとりと汗の滲んだそこに指を伸ばせば、ぬるんと熱い感触が触れる。
ぴくりと、思わず氷雨のこめかみが蠢いた。
穂群は熱い吐息と共に口の端を緩め、するりと膝を立てる。するすると、勿体ぶるように股を開いて着物の裾を割って――そこには何も身につけていない。しっとりと汗を滲ませ、ちいさく頭をもたげる雄の先、そして晒された奥の蕾が綻んで、とろりと蜜を零している。
「な、ひさめ」
氷雨が舐りしゃぶり、つんと尖らせた乳首をも見せつけるように晒して、穂群はうっとりと微笑んだ。
「しよォぜ」
伴侶の痴態を前にした氷雨の背後で、洗いたての二人の着物がそよそよと風に揺れいた。
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