No.2308

Day7「あたらよ」  #文披31題 #小咄 #トウジンカグラ

 満天の星々に、淡く白い靄が川となって流れている。
 その無数の煌めきを、黄金の瞳が見上げている。伸びやかに育った苗が青くそよぐ時分で、その瞳の色は未だ遠く恋しい輝きだ。この里では見られない、実りの輝き。遠い憧憬。
 けれど今は、氷雨の手の届くところにある。衝動のままに手を伸ばす。結った髪がふわりと揺れて振り返る。降り注ぐほどの星夜から濃い藍色へと煌めきを変えて、そして和やかに細められる。かと思えば見えなくなった。近すぎて見えなくなる距離は、惜しむ心と心地良さを連れている。
 故に、氷雨も瞳を閉ざす。黄金の煌めきが残る瞼の裏で、触れる感覚と熱だけが鮮やかだ。唇に熱が触れて、かぷかぷと食いついてくる。求められるままに唇を開いて、けれどこちらから先に仕掛けてやった。入り込んで、熱に触れて、絡め取る。溢れるものを飲み下して、ぬるぬると擦り合わせる。んぅ、と幼い声が互いの口の中で広がって、消えていく。そこまでも深くのめり込んでいける、けれどやはり穂の群れのような輝きが見えないのは惜しい。ふぅふぅと間近に触れる呼吸が浅くなったところで、重ねた唇を名残惜しくも解放する。
 ぷは、と幼く息を吐く音。続けて微かな笑い声。星明かりの下で、実りの黄金色が細められている。かと思えばぐっと引き倒されて、星々は遠く氷雨の背の向こう側になった。なァ、と囁く声はやわらかな熱を孕んでいて、氷雨の身体とぴったりと重なる。氷雨だけを見つめる輝きはどうしたって美しく、どこまでも愛おしかった。
(氷雨×穂群/トウジンカグラ)

天ノ端氷雨の誕生日。
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