No.2014

おれはリッカちゃんのことかわいいと思ってるけど旧ブログにあるリッカちゃんのイラストをまるっと持ってくるにはまだ恥と抵抗があるよ #退治屋
でも消えたら困るので作文だけ引っ張ってきましたイラストの方は永久非公開のpixivに存在するのでね(それもサ終の可能性があるのでは?) #小咄


2008/8/19*退治屋「身代わりにして傷を舐めあおうとしているのではないか、と」
これは“あい”だ、と、いう偽り(セネカとギン)

「犬か、こいつは」
 石床で丸くなっている居候を見つけ、セネカは思わずそう漏らす。犬呼ばわりされた当のギンは呟きにも微動だにしない。顔が隠れてしまっているので判然としないがどうも眠っているらしかった。
 セネカはギンの傍らにしゃがみ込んだ。ギンにはちゃんと部屋を与えているし、家具の名前から使い方まできっちり説明した。ヒトとしての常識がごっそり欠落しているギンだが物覚えが悪いわけではなく、ひととおりのことは理解している様子だった。にもかかわらず広間の床の上で寝ているとは、まったく以ってこいつは何を考えているのか。さっぱり読めない。
 さて、起こすべきか、はたまた部屋まで運んでやるべきか。セネカは何気なく手を伸ばし、ギンの髪に指を絡める。名前の由来である――我ながら短絡的だと思うが――白銀の髪は硬質な見た目に反して柔らかい。ついでに軽く引っ張ってみるが、やはりギンは何の反応も示さなかった。溜め息をついて立ち上がる。
 とりあえず毛布でも引っ掛けておいてやるかとギンの部屋へ足を向け、ふと覚えた既視感に首を捻る。が、すぐに正体に思い至った。討伐隊時代だ。竜との戦闘で疲労しきった男連中は自室に戻る気力もなく、兵舎の玄関先だの広間だの階段だの、とにかくそこらあたりで倒れこむものだから、セネカは端から面倒を見て回った。
 そうだ、そんな時には必ず――あいつが――
 じんわりと滲んできた心の声に頭を振る。思い出すのは仕方がない、ただ彼女のことを思い出しても足を止めなくなった、それだけで今は十分だ。使った様子のないベッドの上に放られた毛布を掴む。
 それでもひとつ、恐れているのは、
「俺は、ギンを、」

ギン:竜殺しの一族の生き残り。竜の血を以て竜を屠る
セネカ:ギンを拾った男。討伐隊時代に最愛の人を失った過去を持つ

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2007/12/14
リッカとギンとセネカ

 すとんと、すべてが落っこちたような気がした。まるで灯りに群がる虫のように、目指すものを真ん中に捉えて彷徨う視線。自覚しているのに止まらない、止められない。自分の体が自分の思うとおりに動かせないなんて初めてだった。どうしよう、壊れてしまったのかも知れない。
 どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう、
 ――いいんだよ。
 頭の冷静な部分が囁いた。
 壊れたっていいんだよ。だって見て、この目の前の“人間”を。
 ――小山のような竜の骸を背後に、こちらをいぶかしんで佇む金の髪の男と対照的に何の感情も宿さず立つ男。
 舞う雪に弄られるのは銀の髪。曇天に煌めいて揺らめく、こちらを見据える瞳もまた銀色。
 そう、背後の骸から流れる夥しい量の銀、すなわち竜の血と同じ色。
 ――ほら、ね? だからもう、私は壊れてもいいんだよ。使い物にならなくなってもいいんだよ。
 ――だって、この男は、
 相対する男を見つめたまま、少女は唇を噛む。
 男は何も知らない。だから黙ってこちらを眺めている。その銀の瞳、それこそが少女の存在の何もかもを脅かすというのに。
 どうして、今になってこんな“人間”が出てくるの?
 もっと早く、ここに来てくれればよかったのに。そしたら私は生まれなくてすんだのに。
 そうでなければ、今頃になってその存在を、見せつけないで、欲しかった。
 ひらひらと雪が舞う。少女はただ竜を殺す男を見つめ続けていた。遠くからようやく、大勢の足音が近付いてきていた。

リッカ:新討伐隊の少女。人によってつくられた竜殺し

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日記

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