文章に対する解釈違いを堪えてそのままルーズリーフに書かれてた20年ぐらい前の作文の一部を持ってきたもののオァババ…という気がしないでもないなにかこう自分で自分を刺した血で文字を綴ってる感じ! #王女と騎士 #小咄 完全にルークが死んでる旧設定のシーレとイエス 「なんでお前が寝てるんだよ、イエス!」 「あー?」 何故か全裸の自分と、上半身裸のイエスがベッドにいる。シーツを手繰り寄せてからシーレはイエスを揺さぶった。 「おい起きろ、こらっ!」 「……ンだよ……っせぇなぁ……」 長い赤の髪を掻き上げながら、イエスはシーレの手を払って起き上がった。イエスの髪の赤はシーレの赤よりも落ち着いていて深紅色をしている。 「お前、僕に何かしたかっ!?」 「あぁ? ……あー、今頃気づいたのか?」 鬱陶しげな表情から一変してにやりと笑う。胡座をかいて肘を突いた姿勢でイエスはシーレを見つめる。狭い一人用のベッドに男が二人。暑苦しいことこの上ない。 「何をしたんだまたお前はっ!」 「オレがオマエのためにいろいろしてやって。疲れて帰ってきたら、一人で熟睡してんだぞ? なんか腹立つだろ」 「恩着せがましい……どうせ『姉ちゃん』のためだろう」 シーレの呟きは無視される。 「で、ちょっと悪戯心で剥いてやっただけだよ。ったく、鈍いんだよなぁ。フツー脱がされてる途中で気づくだろ」 「悪かったね」 ふいとそっぽを向けば銀の髪が跳ねた。 イエスはシーレの頭を軽く叩く。子どもをあやす仕草に似ていた。 「あーんしんしろってぇ。この家でンなことしねぇよ」 「……っもう、気が済んだだろ。さっさと戻れよ」 「へぇい」 脱力、あるいは諦めたようなシーレの表情を笑い、イエスは手を伸ばした。二人でそのまま両手を重ね合わせる。指が絡まった次の瞬間、光が散ってイエスの姿は消えた。 「ふっ……」 シーレは溜め息を零す。イエスの行動に対してではない。イエスの疲労を感じ取ったからだ。シーレのためだけではないだろうが、イエスは本当にいろいろとしていたらしい。 シーレという宿主からの分離はイエスにとっても負担になるはずだ。現に疲労をシーレに隠し通せていない。 ――長時間続けてはやめておけよ、イエス。 『……っかってるよ。ちょっと寝るから放っとけ』 イエスの意識が朧に溶けていくのを感じ、シーレはようやく顔を上げた。 (間が飛ぶ) シーレは部屋を見回した。 狭い家だ。家具も古ぼけている。シーレには本来もっといい家も用意されていたが、彼は敢えてこの家を選んだ。前住人の物が残っていたからだ。本棚に目を遣れば、シーレにはわからない医学関係の本がぎっしり入っている。 壁に両手を突き、額を当てる。 「…………ルーク」 耳元のピアスが揺れて、とうに忘れていたはずの耳の痛みを感じた。 『シーレ』 「……何だ、寝てたんじゃないのか」 『まだ辛いか』 シーレの問いには答えず、イエスは静かに尋ねた。彼らしくない口調だが、滲む温かさにぽろりと言葉が零れた。 「……辛いよ。でも……この痛みを覚えていたいんだ」 共に過ごした時間は短かった。けれどルークには多くのものを貰った。 彼が言ったから、少し眠るだけでも髪はきちんと解くようになった。気楽な考え方も彼のおかげでできるようになった。軽い怪我の治療法も教わった。 何より、愛してもらった。 なのに自分は―― 『……あれはアイツ本人の望みだっただろう。オマエがやらなきゃアイツは自分で自分を刺してた』 「わかってる……ああしなきゃ、レイリアも……けどッ……」 ルークは死んだわけじゃない。自分が殺したわけでもない。 消えただけだ。元に戻っただけだ。 彼は元から存在するはずのないものだったから。 「けど……割り切れないんだよ……」 すべてが魔素に還った中、たった一つ遺されたピアス。戒めの象徴である鎖のそれを、穴も開けていない耳に通した。 ルークが綺麗だと言ってくれた耳に。 「……いい加減、何十年も経つのに……レイリアに知られたら、鼻で笑われそうだけど」 『シーレ……』 笑おうとして失敗する。イエスの声が響いて、急に背後に気配が生まれた。 温かく包むような気配で、実際に体に腕が回された。実体を持ったイエスはシーレよりも上背がある。少しずつ体重を預けながら、息を吐く。 ルークのことを知っているのはレイリアとごく一部の者だちだけだ。レイリアは何十年も経ったんだから、と昔のできごとは表に出さない。他の者は気を遣って何も言わない。 だから過去のことについて、何もかも話せるのはイエスだけだ――話すまでもなく、イエスはすべてを見て知っているのだけれど。 「いいのか?」 「……何が」 「この家をそのままにして行っても」 「……ああ」 シーレはイエスの腕の中で天井を見上げた。ルークの温もりが残る、ルークの家。 「終焉を目指す旅、だからね」 「そう簡単にねーちゃんが見つかるとは思えねぇけどな」 「それでも、行くしかないだろう?」 「行くしかないだろう?」 吹っ切れた顔で背後を仰ぐ。そこには同じような表情を浮かべたイエスの、優しい紅の瞳があった。 (間が飛ぶ) 「イエス?」 広い箱は延々と昇ってゆく。地上から天上までノンストップ。気分が悪くなるのも仕方がない。 自分にもたれかかってきたイエスの背中に手を回し、撫でながらシーレは声を上げる。 「どうした? 酔ったか?」 「……っげぇよ……」 顔を伏せているため声がくぐもっているが、お世辞にも気分が良いとは言えない声だ。 「じゃあ酸欠か? とにかく、顔色を見せて……」 言い終わらないうちに、イエスが両手を伸ばしてくる。両頬を挟み込まれる。上げられた顔は血の気が引いていて青ざめているようだった。 「おま……大丈夫か?」 「悪ぃ……ちょっと……補充……」 「補充? って、うッ……」 弱々しい言葉と共に、唇が塞がれる。するりと難なく舌が入ってきてゆるゆると口内を探り始めるが、その動きはいつもに比べるとかなり緩慢だ。イエスの舌から感じ取れる体温も低い。 「んっ……ふぅ……」 振り払うこともできた。そうするとイエスがどうにかなってしまう気がして、シーレは大人しくされるがままでいた。 それでも、体がルークではない(・・・・・・・)ことに反応してびくりと震える。 「はッ……ぁ……」 「……悪かった」 唇を話したイエスは、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。それがあまりに彼らしくなくて、シーレは怒るよりも先に驚いた。 「どうしたんだ?」 「オマエの言うとおりだな……ここのところ分離しまくってたから……」 「だから……いや、今はいい。とにかく戻れ」 血色も多少良くなり、声も元に戻ってはいるが、未だに危ういものがある。手を伸ばすとイエスは大人しく自身のそれを触れ合わせてきた。まだ体温は低い。 光が散り、歯科医が一瞬だけぶれる。イエスが戻ってきた体が多少重く感じられた。 「……イエス……」 『悪い……今ので多少回復はしたんだが……』 「僕の体は別にいいけど、お前は下手したらこの世界から弾き飛ばされるんだろ。……頼むから、無理はするな」 今、エッルークしんだわけじゃないんだ…エッルークシーレの耳綺麗だとか言ったんだ…というきもち。 閉じる 2025.4.11(Fri) 03:08:16 ネタ
「なんでお前が寝てるんだよ、イエス!」
「あー?」
何故か全裸の自分と、上半身裸のイエスがベッドにいる。シーツを手繰り寄せてからシーレはイエスを揺さぶった。
「おい起きろ、こらっ!」
「……ンだよ……っせぇなぁ……」
長い赤の髪を掻き上げながら、イエスはシーレの手を払って起き上がった。イエスの髪の赤はシーレの赤よりも落ち着いていて深紅色をしている。
「お前、僕に何かしたかっ!?」
「あぁ? ……あー、今頃気づいたのか?」
鬱陶しげな表情から一変してにやりと笑う。胡座をかいて肘を突いた姿勢でイエスはシーレを見つめる。狭い一人用のベッドに男が二人。暑苦しいことこの上ない。
「何をしたんだまたお前はっ!」
「オレがオマエのためにいろいろしてやって。疲れて帰ってきたら、一人で熟睡してんだぞ? なんか腹立つだろ」
「恩着せがましい……どうせ『姉ちゃん』のためだろう」
シーレの呟きは無視される。
「で、ちょっと悪戯心で剥いてやっただけだよ。ったく、鈍いんだよなぁ。フツー脱がされてる途中で気づくだろ」
「悪かったね」
ふいとそっぽを向けば銀の髪が跳ねた。
イエスはシーレの頭を軽く叩く。子どもをあやす仕草に似ていた。
「あーんしんしろってぇ。この家でンなことしねぇよ」
「……っもう、気が済んだだろ。さっさと戻れよ」
「へぇい」
脱力、あるいは諦めたようなシーレの表情を笑い、イエスは手を伸ばした。二人でそのまま両手を重ね合わせる。指が絡まった次の瞬間、光が散ってイエスの姿は消えた。
「ふっ……」
シーレは溜め息を零す。イエスの行動に対してではない。イエスの疲労を感じ取ったからだ。シーレのためだけではないだろうが、イエスは本当にいろいろとしていたらしい。
シーレという宿主からの分離はイエスにとっても負担になるはずだ。現に疲労をシーレに隠し通せていない。
――長時間続けてはやめておけよ、イエス。
『……っかってるよ。ちょっと寝るから放っとけ』
イエスの意識が朧に溶けていくのを感じ、シーレはようやく顔を上げた。
(間が飛ぶ)
シーレは部屋を見回した。
狭い家だ。家具も古ぼけている。シーレには本来もっといい家も用意されていたが、彼は敢えてこの家を選んだ。前住人の物が残っていたからだ。本棚に目を遣れば、シーレにはわからない医学関係の本がぎっしり入っている。
壁に両手を突き、額を当てる。
「…………ルーク」
耳元のピアスが揺れて、とうに忘れていたはずの耳の痛みを感じた。
『シーレ』
「……何だ、寝てたんじゃないのか」
『まだ辛いか』
シーレの問いには答えず、イエスは静かに尋ねた。彼らしくない口調だが、滲む温かさにぽろりと言葉が零れた。
「……辛いよ。でも……この痛みを覚えていたいんだ」
共に過ごした時間は短かった。けれどルークには多くのものを貰った。
彼が言ったから、少し眠るだけでも髪はきちんと解くようになった。気楽な考え方も彼のおかげでできるようになった。軽い怪我の治療法も教わった。
何より、愛してもらった。
なのに自分は――
『……あれはアイツ本人の望みだっただろう。オマエがやらなきゃアイツは自分で自分を刺してた』
「わかってる……ああしなきゃ、レイリアも……けどッ……」
ルークは死んだわけじゃない。自分が殺したわけでもない。
消えただけだ。元に戻っただけだ。
彼は元から存在するはずのないものだったから。
「けど……割り切れないんだよ……」
すべてが魔素に還った中、たった一つ遺されたピアス。戒めの象徴である鎖のそれを、穴も開けていない耳に通した。
ルークが綺麗だと言ってくれた耳に。
「……いい加減、何十年も経つのに……レイリアに知られたら、鼻で笑われそうだけど」
『シーレ……』
笑おうとして失敗する。イエスの声が響いて、急に背後に気配が生まれた。
温かく包むような気配で、実際に体に腕が回された。実体を持ったイエスはシーレよりも上背がある。少しずつ体重を預けながら、息を吐く。
ルークのことを知っているのはレイリアとごく一部の者だちだけだ。レイリアは何十年も経ったんだから、と昔のできごとは表に出さない。他の者は気を遣って何も言わない。
だから過去のことについて、何もかも話せるのはイエスだけだ――話すまでもなく、イエスはすべてを見て知っているのだけれど。
「いいのか?」
「……何が」
「この家をそのままにして行っても」
「……ああ」
シーレはイエスの腕の中で天井を見上げた。ルークの温もりが残る、ルークの家。
「終焉を目指す旅、だからね」
「そう簡単にねーちゃんが見つかるとは思えねぇけどな」
「それでも、行くしかないだろう?」
「行くしかないだろう?」
吹っ切れた顔で背後を仰ぐ。そこには同じような表情を浮かべたイエスの、優しい紅の瞳があった。
(間が飛ぶ)
「イエス?」
広い箱は延々と昇ってゆく。地上から天上までノンストップ。気分が悪くなるのも仕方がない。
自分にもたれかかってきたイエスの背中に手を回し、撫でながらシーレは声を上げる。
「どうした? 酔ったか?」
「……っげぇよ……」
顔を伏せているため声がくぐもっているが、お世辞にも気分が良いとは言えない声だ。
「じゃあ酸欠か? とにかく、顔色を見せて……」
言い終わらないうちに、イエスが両手を伸ばしてくる。両頬を挟み込まれる。上げられた顔は血の気が引いていて青ざめているようだった。
「おま……大丈夫か?」
「悪ぃ……ちょっと……補充……」
「補充? って、うッ……」
弱々しい言葉と共に、唇が塞がれる。するりと難なく舌が入ってきてゆるゆると口内を探り始めるが、その動きはいつもに比べるとかなり緩慢だ。イエスの舌から感じ取れる体温も低い。
「んっ……ふぅ……」
振り払うこともできた。そうするとイエスがどうにかなってしまう気がして、シーレは大人しくされるがままでいた。
それでも、体がルークではないことに反応してびくりと震える。
「はッ……ぁ……」
「……悪かった」
唇を話したイエスは、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。それがあまりに彼らしくなくて、シーレは怒るよりも先に驚いた。
「どうしたんだ?」
「オマエの言うとおりだな……ここのところ分離しまくってたから……」
「だから……いや、今はいい。とにかく戻れ」
血色も多少良くなり、声も元に戻ってはいるが、未だに危ういものがある。手を伸ばすとイエスは大人しく自身のそれを触れ合わせてきた。まだ体温は低い。
光が散り、歯科医が一瞬だけぶれる。イエスが戻ってきた体が多少重く感じられた。
「……イエス……」
『悪い……今ので多少回復はしたんだが……』
「僕の体は別にいいけど、お前は下手したらこの世界から弾き飛ばされるんだろ。……頼むから、無理はするな」
今、エッルークしんだわけじゃないんだ…エッルークシーレの耳綺麗だとか言ったんだ…というきもち。
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