No.1861

5億年ぶりに全部スマホで打っ…スワイプった #王女と騎士 #小咄

自暴/業自棄/得 …>1828のルクシレ※R-18/無理矢理未遂/モブ女(のおっぱい)が絡む


 領主の件はお前の責任だ、新しい監督官は大層若いそうだがまだ手懐けられないのか。今回の連絡役として来た魔術師は高圧的にそんなことを捲し立てている。うんざりしながらルークはエールを飲み干し、極力静かにジョッキを置いた。
「領主に関しては前回の連絡役からの指示に従っている。監督官についても前回までの話では『様子を見ろ』だ。俺は指示以上のことはしない。あんたらの方で話が通ってないだけだろ?」
「そんなことは当たり前だ! 人工生命(ホムンクルス)如きが意見するな!」
 極力静かにジョッキを置いたルークの努力を吹き飛ばす声量に対し、眉を跳ね上げるだけに留めた自分を褒めてやりたい。
 周囲に目をやる。折よく酔客同士の殴り合いが始まったところで、周りの酔っ払いたちが笑いながら囃し立て店主はどちらが勝つかと大声で煽っている。露出の多い店の女たちも客に擦り寄り、豊満な胸を寄せて早く賭けろと急かしていた。上品の対極のような酒場の薄暗い片隅で、男が一人怒鳴ろうと誰も気付きやしない。
 ルークの表情になど気付きやしない――あるいは気付いたとて気にも留めないのだろうが――連絡役はぶつぶつと低く呟いている。怨嗟の独り言を聞き取るに、地上の利益を掠め取るために苦労して前任の連絡役を追い落としたのに、とのことである。
 魔術師の島などと称すれど、そこには個々の欲望が蔓延るばかりだ。皆魔術的欲望が根底にあるが、ならばこそ個人主義、あるいは派閥主義として己の利のために他を退ける連中しかいない。地上の人間たちが想像するような、遠い昔に追われた地上を欲し魔術師共が日々恨みを募らせ結託しているような場所では決してない。島内で優位に立つために、一種の資源として地上を摘み食いする連中ばかりである。
 ――ある一人を除いて。
 男は頭を掻きむしりながらぶつぶつと何事かを呟き続けている。ルークがそこらあたりの給仕に声をかけ、何杯目になるかもわからないエールを追加しても一向に気付きやしない。二杯目を空にする頃になってようやく結論を出したのか、魔術師は唸るように告げた。
「領主については静観だ、何かあればこちらから連絡する。監督官についてはこちらの手は明かさず懐柔しておけ。有事の際の盾になる程度にな!」
「……仰る通りに」
 目を細めるルークに、魔術師はあからさまに舌打ちを返した。金貨を半ばテーブルに叩きつけて席を立つ。
「これだから人工生命は好かん! 馬鹿の一つ覚えだけで現場の判断もできやしない!」
 ご丁寧に罵倒を残して立ち去る魔術師の背中に、今度はルークの方が舌打ちで見送った。
 魔術師と言えども浅学を極める。彼は人工生命を石人形(ゴーレム)や使い魔と同じく、自由意志を持たず命令を遂行するだけの存在だと思っている。その程度の存在であれば生産コストと見合わないだろうに。否、彼程度の魔術師には人工生命の製造法は開示されていないのだろう。「人工生命」の呼称だけで思い込んで物を言う、探求を命題の一つとする魔術師としては致命的な欠陥だ。
 ――あるいは魔術師だからこそ認められないのかも知れない。被造物が対等に思考し意見するなど。
 店の中央で怒号と歓声が一際大きくなる。酔客同士の殴り合いがフィナーレを迎えようとしているらしい。魔術照明ではないランプしかない店内は薄暗いが、血飛沫めいたものが散っているのも見えた。喧騒の只中でもうんざりした顔で給仕を続ける男を呼び止める。
「タバコ」
「そりゃサービス外だ、道具屋にでも行ってくれ」
「アンタが持ってるだろ。一本でいい」
 魔術師の置いていった金貨を指で弾いて寄越せば、給仕は渋い顔で受け取った。代わりにズボンのポケットから紙巻きタバコを取り出し、机上に置く。ついでに空のジョッキもまとめて浚っていった。
「ドーモ」
 至極勤勉な背中に声をかけ、ルークはタバコを摘み上げた。多少湿気ているが折れてはいない。爪先を弾いて魔術を起動する。弾けた火花で火を着けた。薄暗い店内の狂騒の中、見咎める人間もない。
 紫煙を肺いっぱいに溜め、吐き出す。決して美味くはないが、蒙昧な魔術師が残した金貨が化けたと思えば悪くない。
 島の魔術師の多くがああだ。あの男だけが特別愚かな訳ではない、殆どだ。己の信ずるところしか認められない、信じたいものしか理解できない。その範疇の外を知らない。島の大半は暗く、彼らの知らない魔術式が、思惑が、由来が、立場が存在するというのにそれすら知らない。知らされない。
 実に哀れなことだ。石人形と変わらぬ扱いをしたルークの立場が己より上などと、あの男は一生考えもしないだろう。この被造の命が何の為に、誰の為に在るのか、少なくとも彼よりも余程優先されるものであるなどとは。
 ――ルークという存在には、生命には、明確に目的がある。
 視界がちらつく。吐き出した紫煙が目に痛い。やはり不味いものは不味いのだと思いながら、手近な皿にタバコを押し付けて揉み消す。
 何よりも厭うべき己の在り方を以て、厭うべき人間に人知れず優位を誇ろうとする、今の自分の思考こそ余程不味い。
 金貨一枚分のタバコを惜しむ気も起きず、ルークは舌を打った――同時に眼前に、並々とエールの注がれたジョッキが差し出される。
「不味いよねぇ、それぇ」
 甘ったるく溶けるような声だった。細く白い腕がジョッキを差し出している。
「口直しぃ。いらない?」
「……貰おうか」
 胸元の大きく開いた――というのもおこがましい、申し訳程度に胸の頂を隠した装いの女だった。乱闘の最中、賭けを煽る連中の一人だったかも知れない。金貨一枚にタバコ一本では多過ぎると給仕の男が寄越したのだろう、実に勤勉なことである。
 女から受け取ったジョッキを呷る。これも薄いがタバコよりはまともな味がする。女は魔術師の男が座っていた椅子を引き寄せ、ぴったりとルークに身を寄せるようにして座った。
「ね、さっきの、どっちに賭けたぁ?」
「賭けてない。見てもない」
「えーっ、お金あるのにぃ? あ、お金あるから賭けないのかぁ……」
 あまり頭の良くない女らしい。そう判断してルークは周囲を窺った。相変わらず薄暗い片隅の席の会話に気づく人間は見当たらない。どちらが勝ったか知らないが、顔面のひしゃげた男たちが店の外へと引き摺られていて、そんな男たちを囃し立てていた客たちは彼らの行く末になど目もくれず勝った負けたと悲喜交々の様相を呈している。
 この店には今日初めて訪れた訳ではない。が、顔馴染みと呼べるほど通っている訳でもない。ルークからすれば店側にも客側にも見覚えのある顔がいる、程度だ。先程の給仕の男は見覚えがあるが、この女は初めて見た。果たして店側からはどうだろう。山中の村で医者紛いをしている、とまでは知られていないだろうが、たまに現れては暗い隅の席で神経質な客と会い雑に金を使っていく、ぐらいの認識はされているかも知れない。
「賭けもしなくて、すみっこの暗ーいところで不味ーいタバコ吸って、つまらなくなぁい?」
「別に」
「別にかぁ」
 女の手がルークの腿に触れる。薄い手だ。指が長く、骨が浮いていて、爪に凹凸がある。
 ルークはジョッキを傾けながら女を見た。手と同じ薄っぺらい笑顔で女は首を傾げている。愛嬌はある。化粧も下手ではない。それでも暗い照明の下では歪な陰影が目立つ顔立ちだ。結った髪は綺麗に整えていても脂っぽさが残っている。
 仮に始めた『お医者様』の割に、随分馴染んでしまったものだ。女の健康観察をやめて、ルークはジョッキを机に置いた。タイミングを図ったように女が口を開いた。
「ね、ひまならあたしと楽しいことしよ。お店の上、空いてるから。お金はいいからさぁ」
 極論、タバコ一本にエール一杯を含めるとはいえ金貨一枚支払っているのだからそれはそうだろう。ルークの方はこんなサービスまでは頼んでいないが。
 女の指先がコートの裾に潜り込んで、ルークの腿の上を這っていく。際どいところまで辿り着いて、するり、するりと上下に撫で上げる。
「お兄さん、よその人でしょ。どうせ泊まるんなら女の子と楽しいことしたっていいじゃない」
「さあ、どうだろうな」
 女の手を捕まえて、逆にルークから指を這わせる。柔らかさに乏しい肌を悪戯に擽って、手首の内側を指の腹で撫でる。ルークの人差し指と親指で囲んでしまえそうな程に細い手首だった。
 実際、今夜は村に戻らず泊まってもよかった。密会に指定された時間は遅く、既に夜もとっぷりと更けている。今から戻れば厳しい寒さの中、暗い山道を戻らなければならない。泊まりのつもりで近くの宿屋に馬も任せてきている。
 擽ったいのか、女は笑いながら肩を竦ませている。肩のストラップが撓んで、辛うじて胸元を覆っていた布が浮く。小ぶりな胸が晒されて、野苺のような頂がつんと澄ましてルークを誘っていた。
「明日は朝も早いんだ。持病のある爺さんが山向こうの畑まで苗の植え付けに行くらしいから、その前に診てやんなきゃならない」
「あはっ……ぁ、ん、なにそれぇ……おもしろーい」
 誘われるがまま女の胸元に手を差し入れ、なだらかな丘を手のひら全体でまるく撫でる。持ち上げるようにやわく揉んで耳元で囁けば、髪に焚きしめた香の匂いが強く掠める。女は身をくねらせて笑った。
 そこでルークはするりと手を抜いた。あ、と女の声が上がる。
「だから今日は帰るよ、お相手ありがとう。あの給仕にも言っといてくれ。そんでこれで美味いもん食って、風呂入って、早く寝な」
「あ、うん、またねぇ」
 ポケットから取り出した銀貨を何枚か女に握らせ、ルークは席を立った。勘定、と適当に声を上げれば、タバコの給仕とは別の男が寄ってくる。支払いを済ませたルークは変に目をつけられる前に早々に店を出る。
 最後に店内を振り返れば、未だ隅のテーブルに掛けたままの女が呑気に手を振っている。やはり、あまり頭の良くない女だったようで、プライドを傷つけられたなどと怒る様子もない。
 ああでも、自分も同じか。否、どれだけ蔑まれようと当たり障りのない答えだけ返して、腹の中で相手を見下していた自分よりもあの女の方が余程技量が良い。
 女に片手を挙げるだけで返して、ルークは今度こそ店の外に出た。咎めるように吹き抜けた夜風が、ルークの背筋をぞわりと撫で上げた。


 何となくルークの馬、という認識になっているが、無論個人の所有馬ではなく村の財産である。冷え込む夜道を走らせた労を撫でて労い、ルークは村の厩舎に馬を繋いだ。眠りを妨げられた他の馬たちが鼻を鳴らすのを制し、厩舎から診療所へと向かう。
 小さな村の広場にも居並ぶ家々にも人の声はなく、しんとして夜に沈んでいる。数える程しかないガス灯は夜闇に抗するには足りず、空には粉をまぶしたように星々が瞬いていた。
 実に健全だ。猥雑で夜など知らぬとばかりに、あるいは夜こそが王とばかりに昂るあの町に比べると実に健全で、静かで、穏やかで――つまり田舎だ。ルークは深々と感じ入りながら、なだらかな丘を登っていく。村を一望する丘の上には監督官邸が建ち、そして隣に寄り添うように――あるいは家屋を切り分けるように診療所が並び立っている。
 ルークは一度立ち止まる。どちらの建物の窓にも灯りはない。そのことに僅かばかり渋面を浮かべ、我が家たる診療所のドアを押す。鍵がかかっていないことをまた苦く思いながら、冷たく暗い診察室を通り抜け奥の自宅部分へ。
 そもそも、ルークは基本的に診療所の扉に施錠はしていない。素人が手を出すと困る薬の棚にだけは魔術で施錠しているが、他の棚も扉も誰が開けても構わないようにしてある。ルークはこの診療所に仮住まいをさせてもらっているだけで私物らしいものなど衣服ぐらいしかないし、金もろくに置いていない。ルークが不在の間でも自由に立ち入って必要に応じてできる処置をしてもらえばいいと思っていることもある。ルーク一人の住まいだと思えばそれで何も問題なかった――ルーク一人であれば。
 一番奥の自室を開ける。やはり照明は点いておらず、代わりのようにルークの布団に薄い盛り上がりがある。コートを脱いで近くの椅子に投げ置きながら上掛けを捲れば、そこには予想通りの姿がある。
 長い銀髪を散らして、青年が一人、丸くなっている。寝巻きに着ているのはルークの丈の長いシャツを一枚。以上。
 ――不可抗力の理由が幾つかある。ルークは重々理解している。
 このシャツは任地に軍服しか持ってきていないという馬鹿を見かねて、着古したものを寝巻きにしろとルークがやったものだ。ズボンの余りまでは見当たらなかったのでやっていない。馬鹿のことは「任地の生活は四六時中勤務だから」と軍服のまま座って仮眠だけでやっていくつもりだったことから馬鹿と呼んでいる。
 馬鹿なので、監督官邸にはベッドがない。青年の前任者が夜逃げめいて退任する際、善人ぶって監督官邸の中で使えるものがあれば持っていって良いと村人に分け与えたためだ。さすがの馬鹿も着任当初その事実には呆然とした様子だったが、前述の通り椅子が一脚あればいいと血相を変えてベッドの返却を申し出た村人に断ったためそのままになっている。断るな馬鹿。成人とはいえ成長途上の若者が馬鹿を極めた暮らしを隣で送ろうとするのも頭が痛く、診療所のベッドを客間ごと貸してやったのが事の始まりである。診察室か自室で大抵の用事は済むため、無用の長物になっていた客間ぐらいは貸してやってもいいと思ったのだ――王都から来たという元――現?――近衛騎士を観察する意味も込めて。
 それがどうして自室の方で、ルークのベッドで馬鹿が寝ていることになるのかと言えば――あの一件からボーダーラインがグズグズになってしまったというのはある。当たり前だが毎夜同衾している訳ではない。いつもは馬鹿も従前の通り客室で寝ているが、今夜は帰るつもりがなかったため自室を使っていいとルーク自身が言い置いていたのだ。客室より自室の方がベッドも布団も質が良いので温かいだろうという善意であり、そしてルークの失態だった。
 ――つまり。全てルークが悪い。
 ベッドの端に腰かける。馬鹿なシーレは変わらず一定の寝息を漏らしていて、目を開く様子はない。顔を覗き込めば銀の睫毛に縁取られた瞳は閉ざされ、唇は薄く開いて息を吸って吐いてと繰り返している。
 何も知らない顔で、隣に何がいるのかも知らないで。
 友誼を深めたつもりの男が何者なのか、いずれ何に成って、何を犯すのか。そんなことはつゆ程も考えることなく。
 腹の底がぐつりと音を立てる。
 衝動のままルークはベルトを寛げ、下着の中から己の欲望を取り出した。膝で撓む着衣を煩わしく思いながらベッドに乗り上げ、右手で欲を擦り上げながら左手でシーレのシャツの裾を捲った。さすがに下着は穿いている常識に頷きながら、そのまま引き下ろす。引き締まった臀部が丸出しになり、繰り返されていた寝息が少しだけ乱れる。
 ここまでしてもこの程度か。呆れるような蔑むような気持ちになって、何よりもそんな身勝手な自分自身に苛立って仕方がない。嫌悪し唾棄すべき自嘲とは裏腹に、暗がりに白く映える青年の臀部と伸びやかな脚部を前にして欲望は徐々に昂っていく。
 シーレの背中に覆い被さる。薄っぺらい背中はゆっくりと上下している。すぐ背後で男が息を荒げながら、己を性的に消費して身勝手な劣情を昂らせているというのに。ルークはくっと喉奥で笑いながら、やわく芯を持ったペニスを青年の尻に滑らせた。ぺちりと肉同士の弾む音が響き、滑りの足りない皮膚が摩擦を起こす。
 その煩わしさも心地良く、ルークはゆっくりと腰を振った。乾いた皮同士の感触に滲み出た先走りが繰り返すうちにくちくちと微かな音を上げ始め、ほんのわずか滑りが良くなる。一際大きく腰を揺すって、ルークは自身の先端をぴったりと閉じられたシーレの内腿に突き入れた。
「んっ」
「はッ……シーレ」
 寝汗でしっとりとした肌は吸い付くようで、内側の感触を思い出させる。ぞわぞわと背筋が粟立って、振り切るようにまた腰を揺する。内腿を貫いた先端が、やわく、ふっくらと湿気を孕んだ肉にぶつかる。揺すり上げればルークの肉茎の上に乗り上げて、思わず前に手を伸ばした。
「ぅ」
「……起きてるだろ、オマエ」
 ちいさく跳ねる肩に顎を乗せて囁けば、ぴくりと明確な震えが返ってきた。
 重なるペニスを二本纏めて手のひらに包み、そのままルークは腰を使う。途端に背中も肉茎も震えて、抗うように弱くシーレの手のひらが押し返してきた。
「起き、てる、ぅあ」
 ちいさな声に耳朶を噛んで返せば、青年の体が僅かに仰け反った。
 寝ているはずがないのだ。これは一応、精鋭の軍人らしい。常在戦場とでも言わんばかりに寝は浅く、何かあれば即覚醒する。ルークが帰宅した、もしくは馬が村に着いたあたりで目を覚ましていてもおかしくはない。
 ち、とちいさく舌を打つ。今度はシーレの首裏に噛みつきながら、ルークは低く問うた。随分勝手な言い分だと自覚しながら。
「なんで止めねーの」
「ヒ、って、ルークが……ぁ、したい、んだろ、ぅあッ」
 じうと首裏を吸う。同時にわざと音を立てながら、己とシーレのペニスをまとめて扱き上げる。ぐちゅぐちゅと聞くに耐えない音を上げて、二本の肉棒が粘つきながら硬度を高めていく。
 銀色の頭が蠢く。振り返ろうとするそれを今度は耳にしゃぶりついて阻みながら、鼓膜に直接声を吹き込む。
「オレがしたかったら止めねーんだ? オマエ、こーゆーの何て呼ぶか知んねーの?」
「ァ、う……何……」
「レイプ」
 ぎくりと、青年の体が強張った。
 大人しくなったのをいいことに、ルークは手を緩めて再び腰を使う。滑らかな肌は二人分の先走りで濡れそぼり、随分と動かしやすくなっている。
「……だ、」
 か細い声が気丈に鳴いた。腰を止めずに続きを待てば、シーレはシーツをきつく握りながら呻いた。
「ま、だ、はいってない、だろ……」
「……へーぇ」
 ルークは低く笑った。
 腰を引く。シーレが安堵して脱力するよりも早くその体を引っくり返し、シーツに肩を押し付けてやる。ぼふりと硬い綿に弾む体を割り、足の間に陣取ってやった。濡れそぼったペニスが、シャツの裾を押し上げて勃ち上がっている様がよく見える。
「おもしれーこと言えるじゃん。入れて欲しいの?」
「……それはお前だろ」
 は、と短く吐かれた息は、実に溜め息に似ていた。
 銀糸を透かして、銀の眼差しが伏している。ゆるりとルークを見据える。
 ――そう思った次の瞬間、ゴッと鈍い音と衝撃と共に視界がブラックアウトした。
 何が起きたのかわからない。腰にシーレの足が巻き付いている。衝撃のまにまに仰け反るルークの背中が囲われて、そのままどさりと軽い衝撃に包まれた。今度こそ明確な、長い溜め息が耳元を流れていく。背中を撫でる手のひらがある。
「入れてもいいけど、終わったら早く風呂入って寝ろよ。酷い顔してるぞ、お前」
「……酷いか」
「酷い。あと、くさい。酒とタバコ」
 すんとシーレの鼻が鳴る。髪に何かが触れる感覚。両腕に抱き締められて、胸の中を許されている。朝早くから誰か診てやるんじゃなかったか、そんな呟きまで降ってきて、ゆっくりと撫でられて、ルークはハ、と息を吐いた。
 許されるまま、力を抜く。青年の肢体をゆるく掻き抱きながら、首のあたりに頭を擦り付ける。
「……たぶん嫌なことあった。悪かった」
「全然よくないけど、いいよ」
 ――どうせお前だし。
 理解し難いその一言に酷く納得して、ルークは笑った。何笑ってるんだ、という青年の声は拗ねたような口調で、その癖嫌になるぐらい安堵と慈愛を滲ませている。
 本当に嫌になる、いつか向けられるこの感情を失うことはわかっているのに、どうしようもなく今を嬉しいと思ってしまう。いいのだろうか、受け取ってしまっても。
「……いいか」
「いいよ」
 ルークの真意も、行く末も、存在も。何一つ知らない青年は、だからこそルークを認めて頷いた。
 すんとどこかで鼻が鳴った。随分と前に揉み消した紫煙が目端を刺激して、ルークは滲む視界にシーレを捉えながら囁いた。
「やり直すから、入れさせて」
「……な、らすところから、やり直すなら」
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●アクセス解析研究所
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