No.11, No.10, No.9, No.8, No.7, No.6, No.57件]

アメの一族当主・天ノ端氷雨の誕生日③ #トウジンカグラ #小咄

「冗談など、」
「ああいえ失礼。冗談ではございませんな、フジの外から男の妾を迎えたと、酔狂な話で」
「まだお若いのですから、当主殿には多少の遊びの目溢しもされましょう。里長も何も仰らないようですし」
 山籟が視線を送れど、凍雨は何も聞こえていないかのように杯をただただ干している。
 氷雨と凍雨の間では穂群の存在について決着がついている、筈だ。父は結局明確な言葉を持たなかったが、そうでなければかつて嫌悪のまま投げ落とした存在と真っ当に会話もしなくなった実子が、最愛の妻が暮らしていた別邸に二人で住まうことを黙認などするまい。
 ――しかしながら、凍雨が黙認しようと里の老人たちが納得する訳もない。逆に凍雨が黙認しているからこそ腹正しく認め難いのだろう。それは氷雨とて理解できる。だからといって、
「で、男が御世継ぎを生めると?」
「それは――……」
「アメの一族の当主がまさか世継ぎも持たぬなどとは申しますまい」
 氷雨は言葉を呑んだ。老人たちの声を笑い話程度にしか捉えない神剣が頭上で何か言いたげにしている気配を察する。
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アメの一族当主・天ノ端氷雨の誕生日② #トウジンカグラ #小咄

 祝いの席など建前で吊し上げの場である。
 つまり老人たちは凍雨から続く、アメの一族へ鬱憤をぶつける場が欲しい訳だ。凍雨が眉一つ動かさず嫌味を聞き流してしまうので余計に、幼い頃からこの歳まで未熟で不出来と蔑んできた氷雨に。乳兄弟は折につけて老人は娯楽が少ないんだよと慰めを口にするが、氷雨にとっては何の気休めにもならない。
 その上、老人たちは去年より舌鋒を増している。理由は明らかで、だからこそ腹に溜まるものがある。
「――如何ですかな、当主殿もいい歳ですが、御世継ぎの方は」
「……山籟(さんらい)殿。私が先日伴侶を迎えたことは里人皆に周知した筈ですが、そちらの耳には遠うございましたか」
「いえいえ、この老いぼれたちの耳にもしかと届いております。当主殿もようよう冗談を解するようになったかと(わろ)うておるところで」
銀竹(ぎんちく)殿……」
 これである。
 氷雨は密かに奥歯を噛むが、老人たちは下座から歪んだ笑みを浮かべ上座の氷雨を見つめていた。今日の彼らは、穂群の件を糾弾したいのだ。
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アメの一族当主・天ノ端氷雨の誕生日① #トウジンカグラ #小咄
本編終了後二次創作

 取ってつけたような祝いの席、話が舞い込んできた時点で嫌な予感しかせず、しかしながら頑として断る程の度胸も権威も氷雨にはなかった。鞘抜けぬ程幼い時分から神剣を継ぎ、当主の肩書きを背負ってからは長いものの、実権は依然として里長に就いた父に、そしてフジの里を治める老人たちにある。
 ――故に、未だに近寄り難い本邸の大広間、その上座に座らされた氷雨は杯を手に微笑を貼りつけて座るしかない。
「――しかし当主も大きくなられて」
「本当ですなあ。当主になられた御歳はお継ぎになられた御佩刀(みはかし)とお変わりのない背丈でしたのに」
『爺共は耄碌が早いなあ。(オレ)より頭一つぐらいは背が高かっただろうに。なあ氷雨よ』
 ――帰りたい。
 黙して強張った微笑を浮かべたまま、心底から氷雨は嘆いた。老人たちは氷雨が蒼天を継いだ当初から今まで当主に能わぬと朗らかに責め立ててくる。その一因、あるいは原因たる父・凍雨は氷雨の傍らの下座で平然と、知らぬ顔で酒を舐め、そして蒼天は頭上でからから笑っている。
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白驟とほまち
白驟(はくしゅう)くんは白驟雨、秋の激しいにわか雨。
ほまちちゃんは帆待ち雨、その場だけ恵むにわか雨。
姉と弟なのでアメの一族のしきたり(長男と下に生まれた妹で結婚しその子が一族の当主を継ぐ)は適用されない閉じる

#トウジンカグラ

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白驟くんとほまちちゃんとか。白驟くんとほまちちゃんは
ハイパー二次創作な蒼天様がやらかしてくれた未来の世界線のひさほむの息子と娘閉じる
でほまちちゃんが姉で白驟くんが弟。
初っ端からあまりにも飛ばしていくてがろぐの使用方法 #トウジンカグラ

ネタ

これでパーフェクト自分だけの城を建てたので思いつき次第好き勝手書き散らせるよ!ヤッタネ!

メモ

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