No.2336, No.2335, No.2334, No.2333, No.2332, No.2331, No.2330[7件]
無限に眠いけど無限に起きておきたい寝ずに稼働する肉体が欲しい
更に言うなら労働に従事する時間がもったいないので働かずに生きていきたい
更に言うなら労働に従事する時間がもったいないので働かずに生きていきたい
Day14「浮き輪」 #文披31題 #小咄 #翼角
溺れる者は何とやら。
とはいえ、掴んではいけないものもあるのではないか。本郷大和が後悔したのは救出が為された後だった。
見上げた水面は夜の中、逆光の輪郭だけを描いていた。救いを求めて伸ばした己が手の輪郭すら曖昧で、光輪めいて淡い影だけがその瞬間のよすがだったのだ。引き上げられた陸の上で水を吐いて咳き込みながら、やっと大和は己を救った者を見た。つまり後悔した。
「――山伏より俺を選ぶなんて、随分賢くなったじゃねぇか。ん? 大和」
「――げ、きっ……!」
思わず漏れた声は再び咳き込む合間に消える。朧月に淡い色素の髪を溶かす同級生はあまりにも、あまりにも機嫌よくしゃがみ込み大和の背を擦る。否、叩く。そうかそうか元気かよかったな、など心にもないことを呟きながら、そして傍らの月を見上げた。
「月影」
夜闇と月光から滲み出るように現れる人影。人、などではないことは大和も理解している。夜の高校のプールサイドにはあまりに違和感のある着流し姿に、胸元はゆうに超えて伸ばされた髪。尖った耳に、伏せがちな人ならざる色彩の瞳。その静かな熱は名を呼んだ少年にだけ注がれている。
その熱など知らぬげに、歌うように、主たる少年は己の鬼に告げた。
「片付けろ」
応える声はない。ただ大和の頬をやわい風が通り抜けて、続けてぞわりと、全身が総毛立つ。大和の背を戯れに支える少年だけは平然と笑みを浮かべ、これから起こる人外の所業を眺めている。
(大和とナナキと月影/翼角高校奇譚)
気をつけろ大和!ナナキルートだ!
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溺れる者は何とやら。
とはいえ、掴んではいけないものもあるのではないか。本郷大和が後悔したのは救出が為された後だった。
見上げた水面は夜の中、逆光の輪郭だけを描いていた。救いを求めて伸ばした己が手の輪郭すら曖昧で、光輪めいて淡い影だけがその瞬間のよすがだったのだ。引き上げられた陸の上で水を吐いて咳き込みながら、やっと大和は己を救った者を見た。つまり後悔した。
「――山伏より俺を選ぶなんて、随分賢くなったじゃねぇか。ん? 大和」
「――げ、きっ……!」
思わず漏れた声は再び咳き込む合間に消える。朧月に淡い色素の髪を溶かす同級生はあまりにも、あまりにも機嫌よくしゃがみ込み大和の背を擦る。否、叩く。そうかそうか元気かよかったな、など心にもないことを呟きながら、そして傍らの月を見上げた。
「月影」
夜闇と月光から滲み出るように現れる人影。人、などではないことは大和も理解している。夜の高校のプールサイドにはあまりに違和感のある着流し姿に、胸元はゆうに超えて伸ばされた髪。尖った耳に、伏せがちな人ならざる色彩の瞳。その静かな熱は名を呼んだ少年にだけ注がれている。
その熱など知らぬげに、歌うように、主たる少年は己の鬼に告げた。
「片付けろ」
応える声はない。ただ大和の頬をやわい風が通り抜けて、続けてぞわりと、全身が総毛立つ。大和の背を戯れに支える少年だけは平然と笑みを浮かべ、これから起こる人外の所業を眺めている。
(大和とナナキと月影/翼角高校奇譚)
気をつけろ大和!ナナキルートだ!
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Day13「牙」 #文披31題 #小咄 #リボ
鈍く鋼が鳴る。微かに火花すら散る。刹那の花も得物の唸りと風切り音に消え失せる。
距離を取る。棍を正中に構え直す。型を取るのは基本だが、切っ先の向こうで相対する人は無造作に突っ立っている。磨か抜かれた寵姫のような黄金の髪は無造作に、砂と一緒に風と靡く。腰に巻かれたほつれた肩布がばさばさとはためいて、手足もただその場に突っ立っている。二点、右手が長尺の鉄扇をこちらに突きつけて、天穹の頂点より尚遠い碧眼が静かにこちらを見つめている。
それだけで動けない。額に滲んだ汗が、雫になって垂れ流れていく。乾いた風が幾度か二人の間を通り抜けて、そして最後にふっと止んだ。心底、呆れた、という笑いと共に。
「――止めだよ、止め。理由はわかるかな、ティル」
「……はい」
ど、と。雫になって流れた汗が、それでは足りずに噴き出していく。水分がそこに全部持っていかれたかのように口の中が乾いている。少し気を抜けば尻から座り込みそうで、ただ棍を構え続けることで耐えた。
少年の姿勢に、麗人はまた笑った。先ほどよりも柔らかい微笑だった。相変わらず瞳の碧は遠かった。
「それはよかった。わからないほど勘が悪いようなら、これから先君に付き合うことはないだろうからね」
歌うように告げながら、靡く金の髪を押さえる。鉄扇は閉じて腰帯に仕舞われ、つまり稽古の時間は終わりだと告げている。
あの黙して相対する間、この人の頭の中で自分は何度打ち倒されたのだろうか。少なくとも何一つ抵抗できなかったことだけは少年にもわかった。実際、身動ぎすらも叶わなかった。
踵を返す背中を前に、ようやっと棍を下げる。乾いた口の中を舌でなぞる。
あの人を前にして、何もできない。全てを見透かされているとすら思う。腹の底で静かに飼い慣らしている遠くの意図すら。そのときが来ても何もできないのではないかと。この怯えも丸ごと全部、研ぎ澄まさなければいけない。せめてあのつまらなさそうに去りゆく背に一突きを見舞う、そんな夢想ができる程度には。
(ティルとカイ/風紋記)
手を合わせるまでもなく脳内で一方的にボコられるけど心の内には小さな獣を飼っている
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鈍く鋼が鳴る。微かに火花すら散る。刹那の花も得物の唸りと風切り音に消え失せる。
距離を取る。棍を正中に構え直す。型を取るのは基本だが、切っ先の向こうで相対する人は無造作に突っ立っている。磨か抜かれた寵姫のような黄金の髪は無造作に、砂と一緒に風と靡く。腰に巻かれたほつれた肩布がばさばさとはためいて、手足もただその場に突っ立っている。二点、右手が長尺の鉄扇をこちらに突きつけて、天穹の頂点より尚遠い碧眼が静かにこちらを見つめている。
それだけで動けない。額に滲んだ汗が、雫になって垂れ流れていく。乾いた風が幾度か二人の間を通り抜けて、そして最後にふっと止んだ。心底、呆れた、という笑いと共に。
「――止めだよ、止め。理由はわかるかな、ティル」
「……はい」
ど、と。雫になって流れた汗が、それでは足りずに噴き出していく。水分がそこに全部持っていかれたかのように口の中が乾いている。少し気を抜けば尻から座り込みそうで、ただ棍を構え続けることで耐えた。
少年の姿勢に、麗人はまた笑った。先ほどよりも柔らかい微笑だった。相変わらず瞳の碧は遠かった。
「それはよかった。わからないほど勘が悪いようなら、これから先君に付き合うことはないだろうからね」
歌うように告げながら、靡く金の髪を押さえる。鉄扇は閉じて腰帯に仕舞われ、つまり稽古の時間は終わりだと告げている。
あの黙して相対する間、この人の頭の中で自分は何度打ち倒されたのだろうか。少なくとも何一つ抵抗できなかったことだけは少年にもわかった。実際、身動ぎすらも叶わなかった。
踵を返す背中を前に、ようやっと棍を下げる。乾いた口の中を舌でなぞる。
あの人を前にして、何もできない。全てを見透かされているとすら思う。腹の底で静かに飼い慣らしている遠くの意図すら。そのときが来ても何もできないのではないかと。この怯えも丸ごと全部、研ぎ澄まさなければいけない。せめてあのつまらなさそうに去りゆく背に一突きを見舞う、そんな夢想ができる程度には。
(ティルとカイ/風紋記)
手を合わせるまでもなく脳内で一方的にボコられるけど心の内には小さな獣を飼っている
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プレモルって青と金で概念☔🌾なのでは?
月の後半に入りしかも夏休みになってくると逆に書類が減っていくのでウヒョーなんかやらないかんことある気がするけど急いではないはずなのでもう帰るぜ!定時だぜ!!明るいぜ!!!!のきもちでプレモル買って帰ってきたけどよく考えたら明るい中定時退勤というだけで週頭から歓喜してビール買って帰ってるの異常ではないか?定時退勤は普通のことでは??と気づいてしまった🍻
残念だったね…