カテゴリ「ネタ」に属する投稿[101件](3ページ目)
フジで暮らす☔️🌾が月見をする話 #トウジンカグラ
里だとあまりよく見えないのでちょっと山まで登って月見するし里を一望しながら雲一つない夜空の満月を愛でる🌾に☔️はこういう穏やかで静かな時間を過ごせるようになった感慨を覚えるし、それはそれとして儚くて美しいと思ったらつい手首を掴んで引き寄せるし急に☔️にそれされた🌾は背中に腕回してぽんぽんするしそんなことされたら感極まって押し倒すし押し倒されるし月が明るいので全部見えるし外で誰もいないからつい声も出ちゃう
のを里の上の開けた山の方でやってるもんだから夜の里に響く乳兄弟夫夫の嬌声を誤魔化すためにスイマセン本当に本当にスイマセン!!!!と思いながら飼ってる鶏みんな解放してコケコッコー大騒動を起こし母にも里中の人間にも怒鳴られ鬼丸にも酷い目に遭わされる、名誉幼馴染・野分
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里だとあまりよく見えないのでちょっと山まで登って月見するし里を一望しながら雲一つない夜空の満月を愛でる🌾に☔️はこういう穏やかで静かな時間を過ごせるようになった感慨を覚えるし、それはそれとして儚くて美しいと思ったらつい手首を掴んで引き寄せるし急に☔️にそれされた🌾は背中に腕回してぽんぽんするしそんなことされたら感極まって押し倒すし押し倒されるし月が明るいので全部見えるし外で誰もいないからつい声も出ちゃう
のを里の上の開けた山の方でやってるもんだから夜の里に響く乳兄弟夫夫の嬌声を誤魔化すためにスイマセン本当に本当にスイマセン!!!!と思いながら飼ってる鶏みんな解放してコケコッコー大騒動を起こし母にも里中の人間にも怒鳴られ鬼丸にも酷い目に遭わされる、名誉幼馴染・野分
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シロは氷雨の目を覚まさせるときパーで叩くのかグーで殴るのかチョキで目潰しするのか果たしてどれなのか真面目に考えていた🖐️👊✌️ #トウジンカグラ
#トウジンカグラ
鍵アカウント壁打ち侍に投じたけどすごく無意味に気に入ってしまった「またしても何も知らない………さん(23)」パロディ、知りたくもないのにまた乳兄弟夫夫の閨の事情を知らされてしまった野分さん
「毎晩中出しとか慣らしてない閉じるとか何言ってんだよ…」
鍵アカウント壁打ち侍に投じたけどすごく無意味に気に入ってしまった「またしても何も知らない………さん(23)」パロディ、知りたくもないのにまた乳兄弟夫夫の閨の事情を知らされてしまった野分さん
「毎晩中出しとか慣らしてない閉じるとか何言ってんだよ…」
父子が昔からのヘキなんですけど凍雨氷雨父子は全然ヘキじゃない箸にも棒にもかからない。でも凍雨単体のねじねじに拗れてどこにも行けない具合はヘキです #トウジンカグラ
#トウジンカグラ
⚠️⚠️⚠️⚠️以下は攻受の概念に根差す品なしダイレクトスケベな☔️🌾の話です‼️‼️決して肉体的に逆転はしませんが攻がアレコレされることに対して地雷がある方はお控え下さい‼️‼️⚠️⚠️⚠️⚠️
⚠️⚠️☔️が🌾に*ほじられる可能性の話⚠️⚠️
今日の日中に意識飛んで🌾はやっぱり縦割れ*なんだろうけど☔️は他人の*も自分の*も当然見たことがないDTゆえ人類みんな縦割れ*だと思い込んでるしそれを認識したときに☔️のことなので試しにこっそり1人で自分の*を鏡で確認して🌾の*が自分と違っていやらしいことに気づいて衝撃と興奮を覚えるしその現場を🌾に見られて「ンだよ、興味あンのかよ?」てビッチモードで押し倒されて舐められてブチ切れて押し倒し返すとか遠い遠い未来にあるのかも知れんな…と考えました。
終
制作・著作
━━━━━
ⓀⒾⓀ
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⚠️⚠️⚠️⚠️以下は攻受の概念に根差す品なしダイレクトスケベな☔️🌾の話です‼️‼️決して肉体的に逆転はしませんが攻がアレコレされることに対して地雷がある方はお控え下さい‼️‼️⚠️⚠️⚠️⚠️
⚠️⚠️☔️が🌾に*ほじられる可能性の話⚠️⚠️
今日の日中に意識飛んで🌾はやっぱり縦割れ*なんだろうけど☔️は他人の*も自分の*も当然見たことがないDTゆえ人類みんな縦割れ*だと思い込んでるしそれを認識したときに☔️のことなので試しにこっそり1人で自分の*を鏡で確認して🌾の*が自分と違っていやらしいことに気づいて衝撃と興奮を覚えるしその現場を🌾に見られて「ンだよ、興味あンのかよ?」てビッチモードで押し倒されて舐められてブチ切れて押し倒し返すとか遠い遠い未来にあるのかも知れんな…と考えました。
終
制作・著作
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氷雨は自制と疑いを以て蒼天が主で己が従として接してるけど逆転して自分が刀の主人だしなんか一切よくわからんけどそれができるならやれ!!って気持ちになれれば成長、なんですがそこから吹っ切れてあれもこれも蒼天に投げ始めたら嫌だな…それってもうハチワレじゃん…「なんとか…なれーッ!!」じゃん…氷雨とちいかわの親和性高いな…って1人で考えて笑ってた #トウジンカグラ
壁打ち侍から回収
創作男女ということにする決して恋愛にはならない凸凹ファンタジー男女
#かれころ
メアリ・フロットラント・ディサッタール
魔女になりたい大学生。天才にして天災、美人で可愛いと思って近づくな口を開くとヤベー女と学部内で有名。常にギターケースに収納した箒と魔女の衣装を持ち歩く。魔法など使えるはずもないが有事の際に魔女服に着替える悪癖持ちであり、彼女は常に本気である。
「ええっ!? 魔法でチョチョイって全部吹っ飛ばしたりしないんですか!?」
ユダ
今や神話と呼ばれるようになってしまった時代から生き続ける純血の「魔女」。男性。純血かどうか知らないが混血の知人は異なる点が多々あったのでじゃあ純血だろうということにした。最近同族に会っていない。基本的に魔法は使わない、剣士だったので。メアリの師事する教授♂の協力者(ヒモ)
「君、飛行船の中でそんなことしたらどうなるかとか考えない? 大惨事だし非効率じゃない? 文明人としてもう少し弁えた方がいいよ、僕が言うことじゃないけど」
恋愛脳ゼロの魔女オタク大きい女児メアリと遠い昔の妻子や彼氏をさっぱり引きずりつつ今も男と関係を持ってるユダの、一切いい感じにならない別にストーリーのない2人
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創作男女ということにする決して恋愛にはならない凸凹ファンタジー男女
#かれころ
メアリ・フロットラント・ディサッタール
魔女になりたい大学生。天才にして天災、美人で可愛いと思って近づくな口を開くとヤベー女と学部内で有名。常にギターケースに収納した箒と魔女の衣装を持ち歩く。魔法など使えるはずもないが有事の際に魔女服に着替える悪癖持ちであり、彼女は常に本気である。
「ええっ!? 魔法でチョチョイって全部吹っ飛ばしたりしないんですか!?」
ユダ
今や神話と呼ばれるようになってしまった時代から生き続ける純血の「魔女」。男性。純血かどうか知らないが混血の知人は異なる点が多々あったのでじゃあ純血だろうということにした。最近同族に会っていない。基本的に魔法は使わない、剣士だったので。メアリの師事する教授♂の協力者(ヒモ)
「君、飛行船の中でそんなことしたらどうなるかとか考えない? 大惨事だし非効率じゃない? 文明人としてもう少し弁えた方がいいよ、僕が言うことじゃないけど」
恋愛脳ゼロの魔女オタク大きい女児メアリと遠い昔の妻子や彼氏をさっぱり引きずりつつ今も男と関係を持ってるユダの、一切いい感じにならない別にストーリーのない2人
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ハグの日ヒサホム #トウジンカグラ #小咄
こいつは案外と触れ合うのが好きらしい。
眠るとき、特に寒いときなどはぎゅうぎゅうと抱きついてくるし、身体を重ねるときにも隙間がないぐらい背中に腕を腰に足を回してくる。首筋ですんすん鼻を鳴らしたり深く息を吸ったり、吐息をこそばゆく思うのももう随分前に慣れてしまった。未だに互いを知らない時分に、自棄になったように抱きつかれたときには硬直することしかできなかったが、思えばあの頃からこいつは触れ合いを求めていたのだろう。
こっそりと表情を盗み見れば目を細め頬を緩めて、例えるならば日向で眠る猫のような顔。盗み見ていたはずなのに目が合えば、咎め拗ねるよりも先に甘やかに視線が蕩ける。流れ出すまま、ひさめ、と名前を呼ばれれば胸が詰まる。
肌と肌、体温が触れ合うのが好きなのだろうと思う。かく言う己とて誰かと触れ合うことなどほとんどなかった。肌を合わせた相手など過去におらず、父には憎まれ愛情を注いでくれたか弱い母と触れ合う機会も限られていた。妹を抱き上げたことはあれど、強い兄でなければと思うばかりで親愛を示すために頬を擦り寄せたこともない。
ならばきっと、これも自分もお互いの欠けたところをぴったりに、ちょうどよく埋め合っているのだと思う。絡まる手足、首の太い血管に預けられ寄せられる唇があまりにもちょうどいい。温かくて、愛おしい。
知らず綻んだ唇が、何よりも尊い名前を紡ぐ。応えて瞬く穂波の瞳はうつくしく輝いて、あの時のようにあどけなく細められた。黄金の恵みの中に己の微笑が佇んでいる、その事実をただうれしく、愛おしく思う。
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こいつは案外と触れ合うのが好きらしい。
眠るとき、特に寒いときなどはぎゅうぎゅうと抱きついてくるし、身体を重ねるときにも隙間がないぐらい背中に腕を腰に足を回してくる。首筋ですんすん鼻を鳴らしたり深く息を吸ったり、吐息をこそばゆく思うのももう随分前に慣れてしまった。未だに互いを知らない時分に、自棄になったように抱きつかれたときには硬直することしかできなかったが、思えばあの頃からこいつは触れ合いを求めていたのだろう。
こっそりと表情を盗み見れば目を細め頬を緩めて、例えるならば日向で眠る猫のような顔。盗み見ていたはずなのに目が合えば、咎め拗ねるよりも先に甘やかに視線が蕩ける。流れ出すまま、ひさめ、と名前を呼ばれれば胸が詰まる。
肌と肌、体温が触れ合うのが好きなのだろうと思う。かく言う己とて誰かと触れ合うことなどほとんどなかった。肌を合わせた相手など過去におらず、父には憎まれ愛情を注いでくれたか弱い母と触れ合う機会も限られていた。妹を抱き上げたことはあれど、強い兄でなければと思うばかりで親愛を示すために頬を擦り寄せたこともない。
ならばきっと、これも自分もお互いの欠けたところをぴったりに、ちょうどよく埋め合っているのだと思う。絡まる手足、首の太い血管に預けられ寄せられる唇があまりにもちょうどいい。温かくて、愛おしい。
知らず綻んだ唇が、何よりも尊い名前を紡ぐ。応えて瞬く穂波の瞳はうつくしく輝いて、あの時のようにあどけなく細められた。黄金の恵みの中に己の微笑が佇んでいる、その事実をただうれしく、愛おしく思う。
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これは二次創作なので実際どうなるか知らんけど穂群が凍雨のこと「親父さん」て呼ぶのがあまりにも““““良””””き #トウジンカグラ
ついでなので去年の11月19日と22日の中断したやつ #トウジンカグラ #小咄
七宝とフジの里の暮らしはあまりにも違い過ぎる。
何せ寒い。この屋敷は見る限り里の他の家屋よりは立派だが、それでもどこからか風が吹き込んでくる。七宝宮で隙間風など感じることはなかった。火群は好んで寄りつくことはしなかったが、思えば贅を尽くされたヒノモトで最も尊い帝の御所なのだ。他のどこよりも暮らしやすい場所には違いない。
そもそも、目が開けないほど白く眩く一面に積もる雪など火群は初めて見た。昼には目を瞬くばかりのそれが夜になると月明かりに淡く輝いて、しんしんとして、音が吸い込まれるという感覚も火群は初めて知った。その不思議な聞こえの世界を堪能したのは雪の深まり始めたほんの初日のことで、今や屋敷の囲炉裏の傍で背を丸めるばかりである。
その囲炉裏も、今は灰をかけられてすっかり灯りを落としている。灰の下の埋み火のおかげで外よりはよほど暖かいだろうし、重ねて被った衾も熱を閉じ込めてはいるが、それでも寒いものは寒い。
なので火群は触れるものに腕を絡め、足を絡めて、ぎゅうと抱き寄せた。寝衣越しにも触れる温もりが心地良く、ぐりぐりと頬を寄せてほうと息を吐く。抱いたものを引きずり込むようにもぞもぞと衾に潜り込んでみる。
「……穂群」
「ん」
頭の天辺をくすぐる声が降ってくる。
火群は喉奥だけで答えて、足りない分を埋めるようにまた頬を寄せる。
ぺったりと、潰れるぐらいにくっついた耳がどこか大きく気忙しい音を拾う。それはどっ、どっと重く響いて、聞いた火群はふるりとちいさく身体を震わせた。じわりと滲む衝動のまま、衾の中で更に腕を、足を絡める。ぐっと抱き締めた身体が強張って、それからぎこちなく弛緩する。
「……寒いのか」
再度落ちてくる声は、かたくてやわらかい。
そろと、火群の肩に手が触れる。それは寄せるでもなく、けれど引き剥がすこともせず、半端な場所で留まっている。手のひらからじわりと滲む熱はただただ熱い。
「んー?」
それがおかしくて、火群は寄せるばかりだった頭を持ち上げた。
衾の中から見上げれば暗がりの中、濃藍の瞳がそうっと、しかし奥に炎を揺らめかせて見つめている。
ああ、この顔ときたら。
思わず声を上げて笑いそうになる。堪えるようにまた顔を伏せて、熾火を隠せない男の胸に頬を寄せる。ぐりぐりと頬を押しつければ男の寝衣が徐々にはだけて、触れる皮膚の厚さと響く鼓動の速さが鮮明になる。半端に触れる手を擦り抜けて自ら腕の中に囚われに行く。そのくせ逃がさないのはこちら側なのだと、腹も下肢も押しつけながら足を強く絡める。
「さみィ」
「……な、ら、囲炉裏に、火を」
「いいよ。わかンだろ?」
掻き抱いた身体がぎこちなく、体よく理由を見つけて衾から、火群の腕から逃げだそうとするが許さない。これ以上はとけてくっついてしまうほどに抱きついて視線だけで見上げれば、いよいよ以てゆらゆらと揺れる濃藍が火群を捉えていた。もしもここで灰で覆った炭に再び火を入れれば、その炎よりも赤い頬が見えるのだろう。
それも愉しそうではあるが、火群はとかく寒いのだ。折角温めた床の温もりも、冷静ぶっておきながらゆらゆら揺れる欲を隠せない男も逃がすつもりはない。追い打ちとばかりに囁く。
「な、ひさめ」
「っ」
殊更大切に紡いだ名前は吐息になって、はだけた男の肌を擽る。どうしようもなく跳ねた氷雨の鼓動を笑うことはせずただ擦り寄れば、観念したように、それでもそろりそろりと、氷雨の手が火群の肩を、背を滑った。やわりと、今度こそ確かに抱き締められて火群もぐりぐりと身体を寄せる。強張る氷雨の身体がやっぱりおかしくて、けれど笑みは唇を舌でなぞって宥め飼い慣らした。
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七宝とフジの里の暮らしはあまりにも違い過ぎる。
何せ寒い。この屋敷は見る限り里の他の家屋よりは立派だが、それでもどこからか風が吹き込んでくる。七宝宮で隙間風など感じることはなかった。火群は好んで寄りつくことはしなかったが、思えば贅を尽くされたヒノモトで最も尊い帝の御所なのだ。他のどこよりも暮らしやすい場所には違いない。
そもそも、目が開けないほど白く眩く一面に積もる雪など火群は初めて見た。昼には目を瞬くばかりのそれが夜になると月明かりに淡く輝いて、しんしんとして、音が吸い込まれるという感覚も火群は初めて知った。その不思議な聞こえの世界を堪能したのは雪の深まり始めたほんの初日のことで、今や屋敷の囲炉裏の傍で背を丸めるばかりである。
その囲炉裏も、今は灰をかけられてすっかり灯りを落としている。灰の下の埋み火のおかげで外よりはよほど暖かいだろうし、重ねて被った衾も熱を閉じ込めてはいるが、それでも寒いものは寒い。
なので火群は触れるものに腕を絡め、足を絡めて、ぎゅうと抱き寄せた。寝衣越しにも触れる温もりが心地良く、ぐりぐりと頬を寄せてほうと息を吐く。抱いたものを引きずり込むようにもぞもぞと衾に潜り込んでみる。
「……穂群」
「ん」
頭の天辺をくすぐる声が降ってくる。
火群は喉奥だけで答えて、足りない分を埋めるようにまた頬を寄せる。
ぺったりと、潰れるぐらいにくっついた耳がどこか大きく気忙しい音を拾う。それはどっ、どっと重く響いて、聞いた火群はふるりとちいさく身体を震わせた。じわりと滲む衝動のまま、衾の中で更に腕を、足を絡める。ぐっと抱き締めた身体が強張って、それからぎこちなく弛緩する。
「……寒いのか」
再度落ちてくる声は、かたくてやわらかい。
そろと、火群の肩に手が触れる。それは寄せるでもなく、けれど引き剥がすこともせず、半端な場所で留まっている。手のひらからじわりと滲む熱はただただ熱い。
「んー?」
それがおかしくて、火群は寄せるばかりだった頭を持ち上げた。
衾の中から見上げれば暗がりの中、濃藍の瞳がそうっと、しかし奥に炎を揺らめかせて見つめている。
ああ、この顔ときたら。
思わず声を上げて笑いそうになる。堪えるようにまた顔を伏せて、熾火を隠せない男の胸に頬を寄せる。ぐりぐりと頬を押しつければ男の寝衣が徐々にはだけて、触れる皮膚の厚さと響く鼓動の速さが鮮明になる。半端に触れる手を擦り抜けて自ら腕の中に囚われに行く。そのくせ逃がさないのはこちら側なのだと、腹も下肢も押しつけながら足を強く絡める。
「さみィ」
「……な、ら、囲炉裏に、火を」
「いいよ。わかンだろ?」
掻き抱いた身体がぎこちなく、体よく理由を見つけて衾から、火群の腕から逃げだそうとするが許さない。これ以上はとけてくっついてしまうほどに抱きついて視線だけで見上げれば、いよいよ以てゆらゆらと揺れる濃藍が火群を捉えていた。もしもここで灰で覆った炭に再び火を入れれば、その炎よりも赤い頬が見えるのだろう。
それも愉しそうではあるが、火群はとかく寒いのだ。折角温めた床の温もりも、冷静ぶっておきながらゆらゆら揺れる欲を隠せない男も逃がすつもりはない。追い打ちとばかりに囁く。
「な、ひさめ」
「っ」
殊更大切に紡いだ名前は吐息になって、はだけた男の肌を擽る。どうしようもなく跳ねた氷雨の鼓動を笑うことはせずただ擦り寄れば、観念したように、それでもそろりそろりと、氷雨の手が火群の肩を、背を滑った。やわりと、今度こそ確かに抱き締められて火群もぐりぐりと身体を寄せる。強張る氷雨の身体がやっぱりおかしくて、けれど笑みは唇を舌でなぞって宥め飼い慣らした。
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常識が薄々なのである程度の特殊プレイにもそういうモンかァで対応してしまう穂群、飲食物に関してだけは瑠璃の躾が先行するので断るけど氷雨が体裁を全て擲って土下座してきたら受け入れてしまう破れ鍋に綴じ蓋 #トウジンカグラ
今日はハチミツの日ですが宮中から露から善意で贈られた滋養たっぷりのハチミツをウッカリ穂群に滴らせて事に及んだものの普段の穂群(の諸々)の方が甘いな…という知見を真面目に得る氷雨という本編後虚構二次創作がどこにもないのは由々しき問題 #トウジンカグラ
リボ=風紋記/ReVOLVERSはページを丸ごと閉じて幾久しく本当に記憶にないお誕生日SSが出てきても置いておくところがないのでとりあえずここに置いておくかという気持ち #リボ #小咄
なお誕生日は3月31日
酒の席で、そういやお前いくつになったんだっけか、などと話題にされたのはいつのことだったか。
この手の話題は面倒だし、相手も相当呑んで赤ら顔だった。ので、さあ、いくつでしたっけねえ、などと返して躱そうとした。お前若いのにそんなボケたこと言ってて大丈夫か? などと善意の追撃を食らったが、忘れたものは忘れましたから、で無理を通して酒を舐めた。
とはいえ相手も絡み酒である。この程度で解放されるとも思っていなかったのでそこは予想の範囲内だ。
「最初に会ったときいくつだっつってたっけなあ。お前、誕生日は?」
「……さあ?」
ただし、答えに窮する。
生まれた日、さて。これは本当に覚えがない。今生での年齢に関しては一応覚えていてとぼけているのだが、年の変わり目で数えているので生まれた日を気にしたことがなかった。
対する相手は赤い眉間に縦皺を刻み、ずいと顔を寄せてきた。
「それも覚えてないのか!」
「覚えてないというか、はあ、まあ」
「おいおい……大事なことだろ?」
こちらとしては生まれた日などより、間近で酒臭い溜め息を吐かれることの方が余程大ごとである。
すすすと身を引いても赤ら顔はにじり寄ってきた。そろそろ後頭部あたりに一発入れていいだろうか、記憶もきれいに飛ぶように、且つ殴打の痕跡を残さないように良い角度で。あるいはこれを顔面にぶっかけるのはどうだろう。いや酔いを申し訳程度に醒ますか更に絡まれるかの二択でしかない気がする。
そんなことを考えながら酒杯を覗き込みつつ、お返しではないが溜め息に乗せて答える。
「別に。ストラル様ぐらい立場のある方ならともかく、一年のうちのいつも通りの一日でしょう」
「……お前、」
「強いて言えば、死ぬために生まれた一生に一度きりの日ですか」
立場ある人間であればその日と祝いを口実に駆け引きだとか根回しだとか、そんなことをしなければならないのだろう。自分はそうではない。単なる一兵卒、今生はこの酔っ払いの食客である。更に言えば自分の場合、一生に一度きりを何度も何度も繰り返しているわけで、全く以てありがたくも何もない。むしろ忌むべき――
瞬間、目の前に影。
顔を上げれば吐息どころか唇すら触れそうな距離に、じっとりした目の主人がいる。
「暗い」
「はあ?」
「暗いぞお前、いや暗いなんてもんじゃない。夜闇だ。沼の底だ。墨汁の化身だ」
そろそろかちんときて酒杯を掴む手に力がこもった。いざ顔面、という思考を読んだのかぱっと顔が離れていく。それどころか席を立って仁王立ち。腰に手を当て、こちらを見下ろす表情はにやりと、あからさまにろくでもないことを考えている顔である。
主は酒杯を手にしたまま胸を叩く。天から零れる酒を避けながら耳にした言葉を、ここから先しばらくはすっかり忘れていた。
「見てろよカイ。俺が、お前に、誕生日のなんたるかを教えてやろう」
――そう言えばそんなこともあったなあ。
遠い目をする。開かれた扉、既に見慣れた室内はいつもより豪奢な花が飾り付けられ、卓上には少しばかり手の込んだ料理が並んでいる。満面の笑みを浮かべながら主、且つ仕掛け人たるストラルは手ずから椅子を引いた。
「さあどうだカイ! いや、まずは座れ!」
一度家に帰るからお前もついてこい、などと言われたときは別段いつも通りだと思った。軍の宿舎にいても特にすることもなく、一応自分はストラル個人の食客であるからして雇い主に従うべきである。特にストラルは人と関わりたい、面倒を見たい性分だということもわかっていたので、まあいつぞやのようなとんでもない子守をさせられるのでなければ、と同行した次第である。
まさかこんな思惑があったとは。例え酒の席であっても、この人が有言実行と誠実と驚かせたがりを忘れるはずがなかったのである。
「どうだ、と言われましても、僕の誕生日は、」
「覚えてないなら今日が誕生日だ! そういうことでいいだろう!」
「いやいやいや……」
堂々と胸を張りながら粗雑極まりない発言をする主に、然りとて抗うことも上手く言い返すこともできない。何より席は用意されており、用意したのは恐らくこの大雑把な主ではないのだから。
諦めて大人しく席に収まれば、酒を手にしたストラルの奥方――ティアナがにこにこと傍に寄ってきた。
「香の龍砂だけれど、よかったかしら」
「……わざわざすみません、ティアナ様」
生まれた日と同じく思い入れのない故郷の酒を取り寄せてくれたことと、こんな席を用意してくれたことに関して頭を下げる。全く気にした様子もなく、むしろ嬉しそうにティアナは杯を握らせてきた。
「謝るのはこちらの方よ。この人の遊びに付き合ってくれて」
「おーい、ティアナ」
「それから何よりも感謝を。こんなにお料理を作ったのもひさしぶりで楽しかったし、あなたにはいつも夫が世話になっているのにお礼をする機会もなかったから」
注がれる酒に返す言葉もなく、どうにも据わりが悪く視線を彷徨わせる。すると向かいの席に座ったストラルがにやりと笑って、また言いようのない感情に視線を逸らした。腹が立つ、ではないが、してやられた、というか。悔しい、というのでもないが、少なくともこの主に対して謝意を述べられるほど素直な性格ではないという自覚ぐらいはある。
ティアナも黙り込んだカイに何を言うでもなく、微笑んだまま自分の席に戻っていく。入れ替わるように服の裾を引かれる。視線を落とせばこの家の最後の一人がじっとこちらを見上げていた。手を後ろに回し、もぞもぞと身体を揺すっている。
手にした酒杯を一度卓に置き、椅子を降りて跪く。折角目の高さが合ったのに、相手はちらちらと視線を逸らし、すぐにこちらへと戻し、かと思えば逸らしを繰り返していた。ああこれはつい先ほどの自分と同じだな、などと気づいてしまえば妙に生温い気持ちになる。
「……どうしました、カイル様」
「あ、あの、あのね、ねーね」
大姐を意味する呼び方を咎めたいところだが、ぽっと頬を染めて言葉を探す幼子を遮る気も起きない。脱力しそうになる思考をどうにか追いやって続きを待つ。
やがて意を決したのか、カイルはぱっと両手を前に突き出した。
「ねーね、これあげる!」
ちいさな手のひらに載せられているのは、ところどころ歪な編み目をした紐だった。何色かの糸を縒り合わせたそれは不格好な編み方も相まって手作りだと知れる。作り手はもちろん、この子どもだろう。
「あなたがね、いつでも身につけられるものを作りたいって」
大皿から料理を各人の更に装いながら、ティアナが苦笑している。その隣ではストラルがこちらを見つめながら目を細めている。
「装身具だと好みもあるし、戦の時に邪魔になるかも知れないでしょう? でも髪結い紐だったらいつも使うものだし、邪魔にもならないし、この子でも作れるから」
「……カイル様がお一人で作られたんですか?」
「うん!」
もじもじと俯いていた子どもがぱっと顔を上げた。得意げな、そのくせまだ不安げな表情でこちらを見つめている。
すっと手を伸ばす――伸ばそうとして、跪いたままくるりと背を向けた。背後からひえっと不明な声が聞こえるが、勘違いをして泣き出す前に後ろに手を伸ばした。今使っている結い紐を解き、ばらりと髪の散るままに目線だけで振り向いて口を開く。
「カイル様、よろしければ結ってくださいませんか」
「……うん!」
恐らくあの紐の不格好さから、きっと結われた髪もとてもきれいとは言い難い仕上がりになるのだろう。
それでも今日ぐらいはいいかと思いながら、ちいさな手に髪を委ねる。
「ねーね、誕生日おめでとう」
祝われる自分よりもずっと嬉しそうに子どもが囁く。時折首筋に触れる柔らかい手がぽかぽかと温かい。
その両親の視線も温かく、どうにも落ち着かない気持ちで、けれどたまには悪くないと目を閉じた。
* * *
随分と草臥れた結い紐ですねえ。
手慰みに、カイの髪に櫛を通していたウノカが呟いた。結い紐と言われて、今や遠いらしい春の日を思い出す。何がどうして死せずここにあるのかはわからないが、ずっと首筋にあったあの紐も健在らしい。
「新しいのに変えませんか? 私、いろいろ持ってますよ」
「……気持ちはありがたいけど、この紐で特に不便なこともないし」
ちらりと視線を動かす。馬車の荷台に腰掛けて矛の手入れを続けるティルがいる。初めはカイを女子扱いするかのように戯れるウノカに苦言を呈しいていたが、今はもう諦めたらしく特に反応を返すこともない。黙々と矛を見つめて手を動かしていた。
嘆息して、そっとウノカの手を払う。堅く結わえた紐は随分と長いこと自分の傍にあって、不格好だった最初の姿などもう残っていない。
あのとき、強引に祝いの席を構えた主がいなくなっても、奥方がどうしているのかわからなくても、あのちいさな手で紐を差し出してきた子どもが変わってしまっても。片割れが消えてしまっても自分が名前を偽っても。最初の姿をなくしたこの紐だけは、ずっと共に在る。
「それに、気に入ってるんだ。大事な贈り物だから」
ウノカのちいさな謝罪の声に手を振って返し、空を見上げる。いつか砕けて破片を散らした空は白けた青を晒していて、どこからか散った淡い花弁が一枚、横切るだけだった。
* * *
「ということが、僕の人生においてもあったわけだけど」
「そうか」
「……君、僕の本当の誕生日知ってるんだよね?」
「ああ。ついでに言うと、今まできちんと祝っていたぞ。目に見える形で」
「え?」
「お前の部屋に花を一輪置くなどしていた」
「…………そんなこともあったようななかったような気がするけどさあ。それって単純に気持ち悪」
「気持ちはわかる! 非常にわかるが今は黙っておいてやれカイ! 無言で泣くなセイ!」
「な、泣いてない、泣いてないぞシエル」
「……ごめん、僕が悪かったよ」
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なお誕生日は3月31日
酒の席で、そういやお前いくつになったんだっけか、などと話題にされたのはいつのことだったか。
この手の話題は面倒だし、相手も相当呑んで赤ら顔だった。ので、さあ、いくつでしたっけねえ、などと返して躱そうとした。お前若いのにそんなボケたこと言ってて大丈夫か? などと善意の追撃を食らったが、忘れたものは忘れましたから、で無理を通して酒を舐めた。
とはいえ相手も絡み酒である。この程度で解放されるとも思っていなかったのでそこは予想の範囲内だ。
「最初に会ったときいくつだっつってたっけなあ。お前、誕生日は?」
「……さあ?」
ただし、答えに窮する。
生まれた日、さて。これは本当に覚えがない。今生での年齢に関しては一応覚えていてとぼけているのだが、年の変わり目で数えているので生まれた日を気にしたことがなかった。
対する相手は赤い眉間に縦皺を刻み、ずいと顔を寄せてきた。
「それも覚えてないのか!」
「覚えてないというか、はあ、まあ」
「おいおい……大事なことだろ?」
こちらとしては生まれた日などより、間近で酒臭い溜め息を吐かれることの方が余程大ごとである。
すすすと身を引いても赤ら顔はにじり寄ってきた。そろそろ後頭部あたりに一発入れていいだろうか、記憶もきれいに飛ぶように、且つ殴打の痕跡を残さないように良い角度で。あるいはこれを顔面にぶっかけるのはどうだろう。いや酔いを申し訳程度に醒ますか更に絡まれるかの二択でしかない気がする。
そんなことを考えながら酒杯を覗き込みつつ、お返しではないが溜め息に乗せて答える。
「別に。ストラル様ぐらい立場のある方ならともかく、一年のうちのいつも通りの一日でしょう」
「……お前、」
「強いて言えば、死ぬために生まれた一生に一度きりの日ですか」
立場ある人間であればその日と祝いを口実に駆け引きだとか根回しだとか、そんなことをしなければならないのだろう。自分はそうではない。単なる一兵卒、今生はこの酔っ払いの食客である。更に言えば自分の場合、一生に一度きりを何度も何度も繰り返しているわけで、全く以てありがたくも何もない。むしろ忌むべき――
瞬間、目の前に影。
顔を上げれば吐息どころか唇すら触れそうな距離に、じっとりした目の主人がいる。
「暗い」
「はあ?」
「暗いぞお前、いや暗いなんてもんじゃない。夜闇だ。沼の底だ。墨汁の化身だ」
そろそろかちんときて酒杯を掴む手に力がこもった。いざ顔面、という思考を読んだのかぱっと顔が離れていく。それどころか席を立って仁王立ち。腰に手を当て、こちらを見下ろす表情はにやりと、あからさまにろくでもないことを考えている顔である。
主は酒杯を手にしたまま胸を叩く。天から零れる酒を避けながら耳にした言葉を、ここから先しばらくはすっかり忘れていた。
「見てろよカイ。俺が、お前に、誕生日のなんたるかを教えてやろう」
――そう言えばそんなこともあったなあ。
遠い目をする。開かれた扉、既に見慣れた室内はいつもより豪奢な花が飾り付けられ、卓上には少しばかり手の込んだ料理が並んでいる。満面の笑みを浮かべながら主、且つ仕掛け人たるストラルは手ずから椅子を引いた。
「さあどうだカイ! いや、まずは座れ!」
一度家に帰るからお前もついてこい、などと言われたときは別段いつも通りだと思った。軍の宿舎にいても特にすることもなく、一応自分はストラル個人の食客であるからして雇い主に従うべきである。特にストラルは人と関わりたい、面倒を見たい性分だということもわかっていたので、まあいつぞやのようなとんでもない子守をさせられるのでなければ、と同行した次第である。
まさかこんな思惑があったとは。例え酒の席であっても、この人が有言実行と誠実と驚かせたがりを忘れるはずがなかったのである。
「どうだ、と言われましても、僕の誕生日は、」
「覚えてないなら今日が誕生日だ! そういうことでいいだろう!」
「いやいやいや……」
堂々と胸を張りながら粗雑極まりない発言をする主に、然りとて抗うことも上手く言い返すこともできない。何より席は用意されており、用意したのは恐らくこの大雑把な主ではないのだから。
諦めて大人しく席に収まれば、酒を手にしたストラルの奥方――ティアナがにこにこと傍に寄ってきた。
「香の龍砂だけれど、よかったかしら」
「……わざわざすみません、ティアナ様」
生まれた日と同じく思い入れのない故郷の酒を取り寄せてくれたことと、こんな席を用意してくれたことに関して頭を下げる。全く気にした様子もなく、むしろ嬉しそうにティアナは杯を握らせてきた。
「謝るのはこちらの方よ。この人の遊びに付き合ってくれて」
「おーい、ティアナ」
「それから何よりも感謝を。こんなにお料理を作ったのもひさしぶりで楽しかったし、あなたにはいつも夫が世話になっているのにお礼をする機会もなかったから」
注がれる酒に返す言葉もなく、どうにも据わりが悪く視線を彷徨わせる。すると向かいの席に座ったストラルがにやりと笑って、また言いようのない感情に視線を逸らした。腹が立つ、ではないが、してやられた、というか。悔しい、というのでもないが、少なくともこの主に対して謝意を述べられるほど素直な性格ではないという自覚ぐらいはある。
ティアナも黙り込んだカイに何を言うでもなく、微笑んだまま自分の席に戻っていく。入れ替わるように服の裾を引かれる。視線を落とせばこの家の最後の一人がじっとこちらを見上げていた。手を後ろに回し、もぞもぞと身体を揺すっている。
手にした酒杯を一度卓に置き、椅子を降りて跪く。折角目の高さが合ったのに、相手はちらちらと視線を逸らし、すぐにこちらへと戻し、かと思えば逸らしを繰り返していた。ああこれはつい先ほどの自分と同じだな、などと気づいてしまえば妙に生温い気持ちになる。
「……どうしました、カイル様」
「あ、あの、あのね、ねーね」
大姐を意味する呼び方を咎めたいところだが、ぽっと頬を染めて言葉を探す幼子を遮る気も起きない。脱力しそうになる思考をどうにか追いやって続きを待つ。
やがて意を決したのか、カイルはぱっと両手を前に突き出した。
「ねーね、これあげる!」
ちいさな手のひらに載せられているのは、ところどころ歪な編み目をした紐だった。何色かの糸を縒り合わせたそれは不格好な編み方も相まって手作りだと知れる。作り手はもちろん、この子どもだろう。
「あなたがね、いつでも身につけられるものを作りたいって」
大皿から料理を各人の更に装いながら、ティアナが苦笑している。その隣ではストラルがこちらを見つめながら目を細めている。
「装身具だと好みもあるし、戦の時に邪魔になるかも知れないでしょう? でも髪結い紐だったらいつも使うものだし、邪魔にもならないし、この子でも作れるから」
「……カイル様がお一人で作られたんですか?」
「うん!」
もじもじと俯いていた子どもがぱっと顔を上げた。得意げな、そのくせまだ不安げな表情でこちらを見つめている。
すっと手を伸ばす――伸ばそうとして、跪いたままくるりと背を向けた。背後からひえっと不明な声が聞こえるが、勘違いをして泣き出す前に後ろに手を伸ばした。今使っている結い紐を解き、ばらりと髪の散るままに目線だけで振り向いて口を開く。
「カイル様、よろしければ結ってくださいませんか」
「……うん!」
恐らくあの紐の不格好さから、きっと結われた髪もとてもきれいとは言い難い仕上がりになるのだろう。
それでも今日ぐらいはいいかと思いながら、ちいさな手に髪を委ねる。
「ねーね、誕生日おめでとう」
祝われる自分よりもずっと嬉しそうに子どもが囁く。時折首筋に触れる柔らかい手がぽかぽかと温かい。
その両親の視線も温かく、どうにも落ち着かない気持ちで、けれどたまには悪くないと目を閉じた。
* * *
随分と草臥れた結い紐ですねえ。
手慰みに、カイの髪に櫛を通していたウノカが呟いた。結い紐と言われて、今や遠いらしい春の日を思い出す。何がどうして死せずここにあるのかはわからないが、ずっと首筋にあったあの紐も健在らしい。
「新しいのに変えませんか? 私、いろいろ持ってますよ」
「……気持ちはありがたいけど、この紐で特に不便なこともないし」
ちらりと視線を動かす。馬車の荷台に腰掛けて矛の手入れを続けるティルがいる。初めはカイを女子扱いするかのように戯れるウノカに苦言を呈しいていたが、今はもう諦めたらしく特に反応を返すこともない。黙々と矛を見つめて手を動かしていた。
嘆息して、そっとウノカの手を払う。堅く結わえた紐は随分と長いこと自分の傍にあって、不格好だった最初の姿などもう残っていない。
あのとき、強引に祝いの席を構えた主がいなくなっても、奥方がどうしているのかわからなくても、あのちいさな手で紐を差し出してきた子どもが変わってしまっても。片割れが消えてしまっても自分が名前を偽っても。最初の姿をなくしたこの紐だけは、ずっと共に在る。
「それに、気に入ってるんだ。大事な贈り物だから」
ウノカのちいさな謝罪の声に手を振って返し、空を見上げる。いつか砕けて破片を散らした空は白けた青を晒していて、どこからか散った淡い花弁が一枚、横切るだけだった。
* * *
「ということが、僕の人生においてもあったわけだけど」
「そうか」
「……君、僕の本当の誕生日知ってるんだよね?」
「ああ。ついでに言うと、今まできちんと祝っていたぞ。目に見える形で」
「え?」
「お前の部屋に花を一輪置くなどしていた」
「…………そんなこともあったようななかったような気がするけどさあ。それって単純に気持ち悪」
「気持ちはわかる! 非常にわかるが今は黙っておいてやれカイ! 無言で泣くなセイ!」
「な、泣いてない、泣いてないぞシエル」
「……ごめん、僕が悪かったよ」
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0801の日と0802の日のヒサホム二次創作
※ほんのりすけべ
#トウジンカグラ #小咄
ただいまァ、と蕩けた声が聞こえて、氷雨は蒼天を振る手を止めた。
滲んで滴る汗を拭えば、盥を傍らに抱えた穂群が庭に回り込む姿が見えた。裾をちょろりと結った髪がふわふわ揺れ、氷雨ほどではないが生え際に薄らと汗を滲ませている。盥の中では濡れた布がちいさな山を作っていた。
「おかえり。一人で大丈夫だったか?」
「別に。洗濯だけだろ」
視線すら返すことなく、穂群は答えて盥を足下に置いた。濡れた着物を取り上げパンと叩いて伸ばしている。
こういった物言いが穂群にとって照れ隠しのようなものだと、氷雨は薄々理解している。鞘に納めたままだった蒼天を濡れ縁に横たえ、代わりに庭の隅に寄せていた竿竹を手にしながらせっせと着物の皺を伸ばす伴侶の背中を眺める。当初の当初にはヒノモトを統べる今上帝に知らず甘やかされ、汚れ破れた着物の代わりは何を言わずとも用意されているものと思い込んでいたせいで洗濯という行為を理解していなかった穂群が、フジに移って以降も所在なく暮らしのおおよそを氷雨か、女中のそよに世話されるばかりだったこれが、自ら家の事を一つ一つ覚えて不器用ながらもこなす様が実にいじらしい。別に、洗濯だけ、この台詞を吐くまでにどれほどの――主に氷雨に隠れて家事の教えを請われていたそよの――苦労があったことだろう。大丈夫だったか、という氷雨の危惧には洗濯という行為そのもののみならず、里の洗濯場になっている川縁で他の里人と何某かがあったのではないかという危惧も含まれているのだが、気づいているのかいないのか穂群が答えない以上は今は触れずにおく。
「ありがとうな」
「ん」
竹を持って支えてやれば、ちいさく頭を傾けて穂群が着物の袖を通す。綺麗に皺の伸びた襦袢は氷雨のものだ。続けて穂群が叩いて通したものは穂群自身の着流しで、こちらは皺の伸びが甘い。穂群が手を入れた二着の違いを静かに噛み締めながら、氷雨はいっぱいになった竿を庭の隅に立てられた支柱に渡した。着流しの方は穂群が干し終わって庭から去った後、叩いて皺を伸ばしておいてやろうと密かに考えながら次の竿を取りに戻る。
二人の道着や袴を続けて干し、最後には長く伸びる褌を竿に引っかけてやっと盥が空になる。物置場にしている日陰に盥を干し、穂群ははたはたと襟元をはためかせた。しっとりと汗の滲んだ肌が陽光に晒され、時折開き過ぎた襟から赤い頂がちらりと覗く。思わず凝視しそうになるそこから目を逸らし、氷雨は意味もなく咳払いを零した。ついでにごくりと喉が鳴り、額の汗がつるりと滑っていく。
「疲れただろう、中に戻って涼むといい」
「オマエは?」
「俺……は、もう少し、素振りをしてから戻る、から」
「ふぅん」
穂群の肩を押せばすんなりと進む。かと思えば濡れ縁に腰かけて、そのまま庭を向いて足をぶらつかせ始めた。戻らないのかと視線で問えば、穂群は少しだけ顎を上げる。微かに弓なりに反る喉に薄く汗が滑るのが見えた。
「じゃあ見てる」
「……そうか」
薄らと撓る唇に居心地の悪さを覚えるが、見るな奥にいろと言うのも不自然だろう。穂群が何を思っているのかは知らないが、道場でやっと真っ当な剣を学び始めたからには氷雨の体捌きに興味があるのかも知れない。穂群の隣の蒼天を掴めば、どこからか含んだ笑い声が聞こえてきたが無視を決める。
穂群が洗い、二人で干した洗濯物がゆっくりと風に揺れている。濡れ縁に腰かけて履物を落とした穂群が、素足を遊ばせながら氷雨を眺めている。
先よりも賑やかしい庭で蒼天を上段に構える。一歩踏み出しながら振り下ろす。足を引いて刃先を持ち上げる。少しも揺るがぬように、ざわめく心を律して只管に振る。穂群が戻る前よりも意識を研ぎ澄ませる必要がある。じいっと、氷雨だけを見つめる穂波の瞳の強さときたら。
ちらりと目端に捉えれば、穂群はまたはたりはたりと、ゆるやかに襟を開いていた。氷雨よりも白い肌が晒されて、ふっくりとなだらかな胸が覗いている。時折覗く頂は赤く、氷雨の視線はつい、周囲に残された自身の歯形を捉えてしまう。動揺にぶれればにんまりと、口の端を持ち上げる様が見えた。
「……~~~~穂群ッ」
「あっは。ンだよ、続けねェの?」
遂には曝け出すように片襟を開き、穂群は笑いを多分に含んだ声を返した。これはもう、どう考えても煽っている。だからといって蒼天を下ろし、ずかずかと穂群に歩み寄る自身が一番駄目なのも理解はしているのだがこればかりは仕方がないだろう。
隣に蒼天を転がしながら濡れ縁に片膝から乗り上げる。ちょうど穂群の膝を割るような格好で、そのまま腕がにゅうっと伸びてきた。諸肌脱ぎにしていたせいで素肌同士が触れてかっと熱くなる。穂群の首筋を汗が流れて鎖骨に溜まる様が嫌に眩しく、氷雨は衝動のままにそこに甘く齧り付いた。んッと上がる声は艶めいて、そのくせやはり笑いを含んでいる。やられたと思いながら止まる術などなく、ならばせめてやり返したい。囓った鎖骨を舌でなぞり、氷雨はそのままなだらかな胸へと舌先を這わせた。ふにゅりと沈む感覚に手が伸びるのは最早仕方のないことで、まるで女の乳房のような、けれど丸みを欠いてなだらかなそこを手の腹で撫で摩り、寄せるようにやわく揉んだ。
「んっ……ぁ、は……なァ、ほら……」
「ッ……は……」
ちいさく喉を詰まらせて喘ぎながら、それでも穂群は氷雨の頭を掻き抱く。結い上げた髪に指を絡ませながら撫でられて、氷雨は誘われるまま穂群の肌を吸った。張りのあるなだらかなところ、ふっくりと色づいて膨らむ乳輪、そしてつんと尖りを増す乳首を舌先で弾き、口に含む。
誘っておきながらぴくりと身体全体が跳ねる様が愛おしく、氷雨は片手で穂群の胸をやわやわと揉みながら乳首を吸った。氷雨のものよりもぷっくりとして大きなそれは瑞々しい果実のようで、いつまでも口に含んでいたくなる。母乳が出る訳でもないのに、まるで氷雨をもてなすかのように舌に触れる肌はどこまでも甘い。
二人で暮らすこの天ノ端の別邸は、かつて氷雨の母、しずりが里から隠されるように住んでいた場所だ。実の子である氷雨すらここに来ることは禁じられ遠い記憶は朧になっているが、それでも父の目を盗んで訪れたこの庭の、この縁側に、ちいさな母はいつも楽しそうに座っていた。氷雨を見つけては傍に呼びやさしく頭を撫でてくれた。無論記憶にはなく、幼い精神と肉体の母は乳も出なかったためそよが乳母として赤子の氷雨を育ててくれたと聞いてはいるが、それでもかつて母の暮らしたこの庭で赤子のように穂群の胸をしゃぶる行為には幾許か思うところがないでもない。
胸中を過ぎる背徳感と、少しばかりの興奮。それらを誤魔化すように溢れる唾液を絡めて口内で揉みしだいて吸えば、ひうっと甘ったれた声が頭上から落ちてきた。
「あは……オマエ、ここ……すき、だなァ……? ぁンッ」
「ッハ……お前も、だろッ……!」
自身を棚に上げる穂群を諫めるように甘く尖りに歯を立てれば、跳ねた拍子に穂群の股が氷雨の膝に触れた。身体を重ねるうちに人並みに快楽を得るようになってきたそこは硬さを帯びている。
そもそも誘ったのは穂群からで、ならば欲しいのは氷雨ではなく穂群のはずだろう。なのに氷雨を幼気に扱って笑う穂群に俄に苛立ちを覚え、氷雨は穂群の着物の裾に手を入れた。しっとりと汗の滲んだそこに指を伸ばせば、ぬるんと熱い感触が触れる。
ぴくりと、思わず氷雨のこめかみが蠢いた。
穂群は熱い吐息と共に口の端を緩め、するりと膝を立てる。するすると、勿体ぶるように股を開いて着物の裾を割って――そこには何も身につけていない。しっとりと汗を滲ませ、ちいさく頭をもたげる雄の先、そして晒された奥の蕾が綻んで、とろりと蜜を零している。
「な、ひさめ」
氷雨が舐りしゃぶり、つんと尖らせた乳首をも見せつけるように晒して、穂群はうっとりと微笑んだ。
「しよォぜ」
伴侶の痴態を前にした氷雨の背後で、洗いたての二人の着物がそよそよと風に揺れいた。
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※ほんのりすけべ
#トウジンカグラ #小咄
ただいまァ、と蕩けた声が聞こえて、氷雨は蒼天を振る手を止めた。
滲んで滴る汗を拭えば、盥を傍らに抱えた穂群が庭に回り込む姿が見えた。裾をちょろりと結った髪がふわふわ揺れ、氷雨ほどではないが生え際に薄らと汗を滲ませている。盥の中では濡れた布がちいさな山を作っていた。
「おかえり。一人で大丈夫だったか?」
「別に。洗濯だけだろ」
視線すら返すことなく、穂群は答えて盥を足下に置いた。濡れた着物を取り上げパンと叩いて伸ばしている。
こういった物言いが穂群にとって照れ隠しのようなものだと、氷雨は薄々理解している。鞘に納めたままだった蒼天を濡れ縁に横たえ、代わりに庭の隅に寄せていた竿竹を手にしながらせっせと着物の皺を伸ばす伴侶の背中を眺める。当初の当初にはヒノモトを統べる今上帝に知らず甘やかされ、汚れ破れた着物の代わりは何を言わずとも用意されているものと思い込んでいたせいで洗濯という行為を理解していなかった穂群が、フジに移って以降も所在なく暮らしのおおよそを氷雨か、女中のそよに世話されるばかりだったこれが、自ら家の事を一つ一つ覚えて不器用ながらもこなす様が実にいじらしい。別に、洗濯だけ、この台詞を吐くまでにどれほどの――主に氷雨に隠れて家事の教えを請われていたそよの――苦労があったことだろう。大丈夫だったか、という氷雨の危惧には洗濯という行為そのもののみならず、里の洗濯場になっている川縁で他の里人と何某かがあったのではないかという危惧も含まれているのだが、気づいているのかいないのか穂群が答えない以上は今は触れずにおく。
「ありがとうな」
「ん」
竹を持って支えてやれば、ちいさく頭を傾けて穂群が着物の袖を通す。綺麗に皺の伸びた襦袢は氷雨のものだ。続けて穂群が叩いて通したものは穂群自身の着流しで、こちらは皺の伸びが甘い。穂群が手を入れた二着の違いを静かに噛み締めながら、氷雨はいっぱいになった竿を庭の隅に立てられた支柱に渡した。着流しの方は穂群が干し終わって庭から去った後、叩いて皺を伸ばしておいてやろうと密かに考えながら次の竿を取りに戻る。
二人の道着や袴を続けて干し、最後には長く伸びる褌を竿に引っかけてやっと盥が空になる。物置場にしている日陰に盥を干し、穂群ははたはたと襟元をはためかせた。しっとりと汗の滲んだ肌が陽光に晒され、時折開き過ぎた襟から赤い頂がちらりと覗く。思わず凝視しそうになるそこから目を逸らし、氷雨は意味もなく咳払いを零した。ついでにごくりと喉が鳴り、額の汗がつるりと滑っていく。
「疲れただろう、中に戻って涼むといい」
「オマエは?」
「俺……は、もう少し、素振りをしてから戻る、から」
「ふぅん」
穂群の肩を押せばすんなりと進む。かと思えば濡れ縁に腰かけて、そのまま庭を向いて足をぶらつかせ始めた。戻らないのかと視線で問えば、穂群は少しだけ顎を上げる。微かに弓なりに反る喉に薄く汗が滑るのが見えた。
「じゃあ見てる」
「……そうか」
薄らと撓る唇に居心地の悪さを覚えるが、見るな奥にいろと言うのも不自然だろう。穂群が何を思っているのかは知らないが、道場でやっと真っ当な剣を学び始めたからには氷雨の体捌きに興味があるのかも知れない。穂群の隣の蒼天を掴めば、どこからか含んだ笑い声が聞こえてきたが無視を決める。
穂群が洗い、二人で干した洗濯物がゆっくりと風に揺れている。濡れ縁に腰かけて履物を落とした穂群が、素足を遊ばせながら氷雨を眺めている。
先よりも賑やかしい庭で蒼天を上段に構える。一歩踏み出しながら振り下ろす。足を引いて刃先を持ち上げる。少しも揺るがぬように、ざわめく心を律して只管に振る。穂群が戻る前よりも意識を研ぎ澄ませる必要がある。じいっと、氷雨だけを見つめる穂波の瞳の強さときたら。
ちらりと目端に捉えれば、穂群はまたはたりはたりと、ゆるやかに襟を開いていた。氷雨よりも白い肌が晒されて、ふっくりとなだらかな胸が覗いている。時折覗く頂は赤く、氷雨の視線はつい、周囲に残された自身の歯形を捉えてしまう。動揺にぶれればにんまりと、口の端を持ち上げる様が見えた。
「……~~~~穂群ッ」
「あっは。ンだよ、続けねェの?」
遂には曝け出すように片襟を開き、穂群は笑いを多分に含んだ声を返した。これはもう、どう考えても煽っている。だからといって蒼天を下ろし、ずかずかと穂群に歩み寄る自身が一番駄目なのも理解はしているのだがこればかりは仕方がないだろう。
隣に蒼天を転がしながら濡れ縁に片膝から乗り上げる。ちょうど穂群の膝を割るような格好で、そのまま腕がにゅうっと伸びてきた。諸肌脱ぎにしていたせいで素肌同士が触れてかっと熱くなる。穂群の首筋を汗が流れて鎖骨に溜まる様が嫌に眩しく、氷雨は衝動のままにそこに甘く齧り付いた。んッと上がる声は艶めいて、そのくせやはり笑いを含んでいる。やられたと思いながら止まる術などなく、ならばせめてやり返したい。囓った鎖骨を舌でなぞり、氷雨はそのままなだらかな胸へと舌先を這わせた。ふにゅりと沈む感覚に手が伸びるのは最早仕方のないことで、まるで女の乳房のような、けれど丸みを欠いてなだらかなそこを手の腹で撫で摩り、寄せるようにやわく揉んだ。
「んっ……ぁ、は……なァ、ほら……」
「ッ……は……」
ちいさく喉を詰まらせて喘ぎながら、それでも穂群は氷雨の頭を掻き抱く。結い上げた髪に指を絡ませながら撫でられて、氷雨は誘われるまま穂群の肌を吸った。張りのあるなだらかなところ、ふっくりと色づいて膨らむ乳輪、そしてつんと尖りを増す乳首を舌先で弾き、口に含む。
誘っておきながらぴくりと身体全体が跳ねる様が愛おしく、氷雨は片手で穂群の胸をやわやわと揉みながら乳首を吸った。氷雨のものよりもぷっくりとして大きなそれは瑞々しい果実のようで、いつまでも口に含んでいたくなる。母乳が出る訳でもないのに、まるで氷雨をもてなすかのように舌に触れる肌はどこまでも甘い。
二人で暮らすこの天ノ端の別邸は、かつて氷雨の母、しずりが里から隠されるように住んでいた場所だ。実の子である氷雨すらここに来ることは禁じられ遠い記憶は朧になっているが、それでも父の目を盗んで訪れたこの庭の、この縁側に、ちいさな母はいつも楽しそうに座っていた。氷雨を見つけては傍に呼びやさしく頭を撫でてくれた。無論記憶にはなく、幼い精神と肉体の母は乳も出なかったためそよが乳母として赤子の氷雨を育ててくれたと聞いてはいるが、それでもかつて母の暮らしたこの庭で赤子のように穂群の胸をしゃぶる行為には幾許か思うところがないでもない。
胸中を過ぎる背徳感と、少しばかりの興奮。それらを誤魔化すように溢れる唾液を絡めて口内で揉みしだいて吸えば、ひうっと甘ったれた声が頭上から落ちてきた。
「あは……オマエ、ここ……すき、だなァ……? ぁンッ」
「ッハ……お前も、だろッ……!」
自身を棚に上げる穂群を諫めるように甘く尖りに歯を立てれば、跳ねた拍子に穂群の股が氷雨の膝に触れた。身体を重ねるうちに人並みに快楽を得るようになってきたそこは硬さを帯びている。
そもそも誘ったのは穂群からで、ならば欲しいのは氷雨ではなく穂群のはずだろう。なのに氷雨を幼気に扱って笑う穂群に俄に苛立ちを覚え、氷雨は穂群の着物の裾に手を入れた。しっとりと汗の滲んだそこに指を伸ばせば、ぬるんと熱い感触が触れる。
ぴくりと、思わず氷雨のこめかみが蠢いた。
穂群は熱い吐息と共に口の端を緩め、するりと膝を立てる。するすると、勿体ぶるように股を開いて着物の裾を割って――そこには何も身につけていない。しっとりと汗を滲ませ、ちいさく頭をもたげる雄の先、そして晒された奥の蕾が綻んで、とろりと蜜を零している。
「な、ひさめ」
氷雨が舐りしゃぶり、つんと尖らせた乳首をも見せつけるように晒して、穂群はうっとりと微笑んだ。
「しよォぜ」
伴侶の痴態を前にした氷雨の背後で、洗いたての二人の着物がそよそよと風に揺れいた。
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11話以降、頭に羽を挿した怪しい男に金平糖で懐柔される七宝キッズ。死んだ妹にも食べさせてやりたいと思う小六太 #トウジンカグラ
海の日ネタなんてないと~じんかぐらには、七宝もフジも内陸地なので…って思いながら働いて一日終わったけど露の国(露下)には…海が…ある…ッ!!サーフパンツの波佩熊野とシンプルビキニの七郎がサーフボードパラソル浮き輪持って砂浜に駆け出すのが容易に想像できてクソッまた露の国か!!ってなった #トウジンカグラ
火群は穂群になっても地の文は火群なんだけど氷雨視点だと地の文から穂群になる知見を得た
#トウジンカグラ
#トウジンカグラ
アメの一族当主・天ノ端氷雨の誕生日⑪ #トウジンカグラ #小咄
我を持つことに其方らが価値を見出すならば、奪い合うのもまた一興。血の縁よりも血を流す、我はそれでも大いに構わんぞ。なあ?」
蒼天が小首を傾げる。陽光の煌めきにさらさらと結い髪が滑るが、その眩しさを見つめる者などこの場にはいない。里を取り仕切る老人たちは皆伏せて震えるだけである。
ひたすらの沈黙に、蒼天は笑んだまま瞬きを繰り返す。腹の底まで浚うような息を吐き、そのまま吐き捨てるように凍雨が口を開いた。
「神剣様を奪い合い血を流すなど不敬と言いたいようだが」
「そうか。我が良いと言うのだから良いのになあ。残念残念」
ひょいと肩を竦めた蒼天は、ふと思いついたように手を打ち鳴らした。凍雨は相変わらず嫌そうに目を背け、そして老人たちはびくりと背を跳ねさせる。
「ならば世継ぎの件はどうだ? 爺共が拘るならせめて穂群が孕めるように我の方で」
「それは向こうと話せ、失せろ」
風鳴りに陽光が散る。凍雨が耐えかねて振るう刃に蒼天は唇を尖らせた。ふわりと浮きながら瞬きの間に神剣は姿を消す。
「あーあ、つまらんなあ」
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我を持つことに其方らが価値を見出すならば、奪い合うのもまた一興。血の縁よりも血を流す、我はそれでも大いに構わんぞ。なあ?」
蒼天が小首を傾げる。陽光の煌めきにさらさらと結い髪が滑るが、その眩しさを見つめる者などこの場にはいない。里を取り仕切る老人たちは皆伏せて震えるだけである。
ひたすらの沈黙に、蒼天は笑んだまま瞬きを繰り返す。腹の底まで浚うような息を吐き、そのまま吐き捨てるように凍雨が口を開いた。
「神剣様を奪い合い血を流すなど不敬と言いたいようだが」
「そうか。我が良いと言うのだから良いのになあ。残念残念」
ひょいと肩を竦めた蒼天は、ふと思いついたように手を打ち鳴らした。凍雨は相変わらず嫌そうに目を背け、そして老人たちはびくりと背を跳ねさせる。
「ならば世継ぎの件はどうだ? 爺共が拘るならせめて穂群が孕めるように我の方で」
「それは向こうと話せ、失せろ」
風鳴りに陽光が散る。凍雨が耐えかねて振るう刃に蒼天は唇を尖らせた。ふわりと浮きながら瞬きの間に神剣は姿を消す。
「あーあ、つまらんなあ」
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アメの一族当主・天ノ端氷雨の誕生日⑩ #トウジンカグラ #小咄
刃を握る凍雨は平然として目を剥く銀竹を見下ろしている。
「――盛り上がってきたなあ」
更に高みから、長閑な声が陽光の如くやんわりと降り注いだ。
その場にいた老人たちが皆、天を仰ぐ。銀竹も喉元の刃先を厭わず皆に倣い、凍雨だけが視線を揺らすことなく舌を打って納刀した。舌打ちと刃が鞘を滑る音にころころと笑いが重なり、老人たちが一斉に平伏す。
「ああよいよい。そのままでよかろうに、爺共は相変わらず大仰なことだなあ」
空の色を映す羽織が揺れる。天井近くの宙に座していた神剣は笑みながら、仕い手たる当主の席にふわりと座してみせた。
大広間でただ一人、凍雨だけが眉間に深々と縦皺を刻んで立ち尽くしている。蒼天はにこやかにかつての仕い手を見上げた。
「皆凍雨のように堂々としておればよかろうに。なあ?」
「喋るな」
「はっはっは、其方は相変わらず達者でよい。爺共も言など弄せず、これぐらいの勢いを持つがよかろうに」
平伏す肩が動揺に揺れる。蒼天は大広間に居並び伏す老人たちを、一人一人眺めて笑う。
「我は血になど拘っておらん。
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刃を握る凍雨は平然として目を剥く銀竹を見下ろしている。
「――盛り上がってきたなあ」
更に高みから、長閑な声が陽光の如くやんわりと降り注いだ。
その場にいた老人たちが皆、天を仰ぐ。銀竹も喉元の刃先を厭わず皆に倣い、凍雨だけが視線を揺らすことなく舌を打って納刀した。舌打ちと刃が鞘を滑る音にころころと笑いが重なり、老人たちが一斉に平伏す。
「ああよいよい。そのままでよかろうに、爺共は相変わらず大仰なことだなあ」
空の色を映す羽織が揺れる。天井近くの宙に座していた神剣は笑みながら、仕い手たる当主の席にふわりと座してみせた。
大広間でただ一人、凍雨だけが眉間に深々と縦皺を刻んで立ち尽くしている。蒼天はにこやかにかつての仕い手を見上げた。
「皆凍雨のように堂々としておればよかろうに。なあ?」
「喋るな」
「はっはっは、其方は相変わらず達者でよい。爺共も言など弄せず、これぐらいの勢いを持つがよかろうに」
平伏す肩が動揺に揺れる。蒼天は大広間に居並び伏す老人たちを、一人一人眺めて笑う。
「我は血になど拘っておらん。
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#トウジンカグラ #小咄
陰影が艶かしく蠢く。白い肌は燈火の橙に、のみならず闇にも薄く血潮を透かして色づいている。囲炉裏に火を入れる時期であるのに瑞々しい皮膚は薄らと汗を滲ませていて、このままでは風邪を引いてしまうだろう。
氷雨はそっと汗を拭う。舌に塩の味が乗る。視界が肌でいっぱいになる。触れる身体が震えて、熱い吐息が旋毛を擽る。膝に張りのある内腿がぶつかって、じんわりと熱が宿っていく。
「は、ぁ」
「ん」
身悶えて捩ろうとする身体を腕に捉える。べろりと平らにした舌でなだらかな丘をなぞり、汗を拭っていく。時折吸って、やんわりと歯を立てる。ひゃ、とか細い声が上がって殊更に身体が跳ねた。その拍子にぶっくりと、やわく硬いものが氷雨の唇をつんと押す。
ここも触れて欲しいのかと、そんな気持ちになりながらやわく唇で挟む。んっと呑み込むような音が降ってくる。気にせず唇で食み続けるそれは、柔いのに芯がある。どうにも己の唇に収まりがよく、つい舌を伸ばしてしまった。舌先で弾けばこりこりと感触が返ってくるようで心地良い。弾いて、食んで、するとふるふると身体が震える。寒いのだろうかと掌を伸ばせば、すりりと肌が擦りつけられる。背中、腰、脇腹と撫でて、唇を寄せるのとは反対の胸にも触れる。しっとりとした肌の中、そこにもぷくりと主張するものがある。指の腹で擦っても心地良く、片や舐め摩り、片や擦っては摘む格好になる。
「ひっ……さ、ん゙っ」
「ん……ろうした」
尖りに残した舌のせいで呂律が歪んだが、見上げた先の穂群はそれどころではない様子だった。手の甲を口元に当て、目を細めて氷雨を見下ろしている。視線が絡めばもぞりと、触れ合う下肢がいじらしく揺れる。
名残惜しく、舌先に残る尖りを舐めてやわく吸って離す。びくんと跳ねる身体を宥めるように背筋を伸ばし、口元を覆う掌に口づける。きゅうと尖りを捻り上げた手でじわりと汗の滲む穂群の前髪を掻き上げて、露わになった額にも唇で触れる。ふっと鼻から抜ける音と共に力が抜けて、くたりとやわらかくなった伴侶の肢体を改めて見下ろした。
「な……ひさ、め」
暗がりで燈火を孕む穂波の瞳が揺れている。懐かしく、誘うように優しく。舌足らずな声は幼い記憶を呼び起こす。けれど氷雨が組み敷いて、愛撫を施した身体は熟した大人のものだ。
氷雨が唇で、指で触れた胸はゆったりと上下して命の脈動を孕んでいる。薄く肉を乗せた胸はやわく弧を描いていて、その頂でぶっくりと尖り膨らむ乳首は熟した果実のようだ。氷雨が、氷雨だけが食んで吸って味わうそこは、これまで身体を重ねた数だけ育っている。なだらかな膨らみと氷雨のそれよりも大きな尖りは女の乳房を彷彿とさせる。
思わずごくりと唾を飲んだ。その音が聞こえたのか、穂群はまたもぞりと身体を揺らす。目に毒だと胸元から下へと視線を辿れば、薄い腹が呼吸に合わせて上下していた。影が艶かしく揺れて、それからぬっと隠される。両の膝が持ち上げられて、そろりそろりと氷雨に向かって開かれていく。
「こっち、も、触れよ……」
「……っ」
開かれた先で、穂群のものがゆるく勃ち上がって濡れている。穂群の指が己の太腿に触れ、する、すると下がる。内腿に食い込んだ指は更に先、氷雨に向かって差し出された双丘をそれぞれの手でやわく掴み、ゆっくりと開いていく。
じんわりと濡れたそこは乳首よりももっと赤く、まるで石榴のように熟れて割れ目を晒している。氷雨の視線を受け取ったように、はく、はくと息づいて、中に欲しいと訴えていた。
濡れた瞳、薄い腹、自ら持ち上げ氷雨に向かって開かれ誘う秘裂。まるで期待するように上下する胸はふっくらとして、ぷくんと赤く乳首が膨らんでいる。氷雨が育てた身体は氷雨のために、氷雨だけを求めているのだと思うと腹の底が熱くなる。
衝動のまま、けれど暴いて壊してしまわないよう殊更にゆっくりと。求められるがままに氷雨は穂群の中に己を埋めていった。
その視線は穂波に吸い寄せられながら、目端にふっくらとした胸と、熟した乳首を捉えている。
◇ ◇ ◇
「……ということなんだが、聞いているのか野分」
「聞いてない」
こここここここ、こけと。
鶏たちが気ままに彷徨く様を眺める縁側、両手で両耳を塞ぎながら野分は首を大きく左右に振った。隣に腰かける氷雨はふっと長く息を吐き――そしてがしりと野分の手を掴んで耳から引き剥がした。
「聞いてないのに返事する訳がないだろ!」
「あーあーあーあーやめろやめろやめろ! 何度も言ってるが俺はお前らの閨事なんて聞きたくないんだよ!」
「いいから聞けって! お前しか話せる相手がいないんだから!」
「聞いてどうしろってんだよ俺に!」
観念の末、野分は氷雨の両手を振り払う。お互いにぜえぜえと肩で息をしながら見つめ合い、呼吸を整える間は胡乱な目で青年二人を眺める鶏たちが埋めていった。
ふうと、氷雨は再度息を吐く。長く余韻を引っ張って、うろ、うろと視線が彷徨う。庭の土を、鶏を囲う竹垣を、目つきの悪い雌鳥を見つめて、最後に目端で野分を見つめた。妙に頬を染めて、顔に似合わぬ気恥ずかしさを湛えながら。
「だから、その、胸に吸いつきたいと思うのは普通だろうかと」
「気持ち悪っ」
皆まで聞く前に野分の口が言葉を吐く。氷雨の指が野分の耳を掴んで捻り上げる。
「あっだだだだやめろ馬鹿!」
「ちゃんと聞かないからだろ!」
「今の話のどこにちゃんと聞くところがあるんだよ馬鹿!」
腕をバンバン叩かれ、氷雨は渋々野分の耳を解放する。
再び耳を庇いながら野分はじりじりと氷雨から距離を取る。その視線は恨みがましく氷雨を見つめていた。
「乳兄弟が悩んでるんだから真剣に聞け!」
「真剣に聞くような内容じゃないって言っ……あーあーわかったわかった聞くよ聞く!」
じとりと見つめる氷雨に雑に手を振り、野分は捨て鉢に叫んだ。こめかみを押さえながら頭を捻り、右へ左へと身体を揺らす。
「気持ち悪いがまあ、好いた相手に触りたいってのは普通だろ」
「そ、そうか」
「そうだよ。相手は……あれだが、女の乳に触りたい吸いたいってのは男としては普通だろ」
氷雨の眉間に薄く皺が寄る。それは野分を責めるものではなく、あちこちに散らばった何かを思い返して掻き集めるものだった。
「……男の乳でもか」
「知るか。好いた相手ならそうなんじゃねぇの。男はいつまでも乳求める生き物らしいし」
野分の表情に渋みが混じる。気づいた様子もなく、氷雨は思案するように野分の顔を見る。どういうことだと先を促すものだと知る野分は思い浮かぶ何かから視線を逸らすように表情を歪めた。
「男は最後まで母ちゃん離れできないんだってよ。お前の母ちゃんは……あれだけど、うちの母ちゃんの乳吸って育った訳だし」
「ぐっ」
野分の渋みにようやく気づいたらしい。呻く氷雨の脳裏には野分の母、そよの姿が浮かんでいるはずである。
乳の出ない氷雨の母の代わりに母乳を与え育て、のみならず複雑に歪んだ家の中で真っ当に彼を育て上げた野分の実母。氷雨に名家の当主らしからぬ家事まで教え込み、一人でも生きていくための術を身につけさせたのはそよである。彼女の教えがいなければ氷雨は先だっての七宝への一人旅などできなかっただろう。
壮健ではあるがすっかり年老いた乳母と閨事が結びついてしまうのはあまりに居心地の悪いものである。氷雨にとっても野分にとっても。
「あー……だから、お前はほら、母ちゃんといられる時間が少なかったから……余計にそうなんじゃねぇの、たぶん」
「……幼少期に足りなかったものを、いい歳になっても求めると」
「知らねぇけど、たぶん」
渋い氷雨の表情が苦いものに変わる。膝に肘を突いて指を組み、口元を埋めた。
「じゃあ、あいつは」
野分は横目で先を促す。あいつ、が誰を差すかなど言うまでもない。
「あいつは……母親も父親もいなくて、俺が見つけたときだけが子どもの頃で、そこからはもう今のあいつだったらしい」
「何だそりゃ」
首を傾けるが、乳兄弟が冗談や嘘を言える人間ではないことぐらい野分はよくよく承知している。ならばつまり、野分には理解できないだけで真実なのだろう。
遠くを見つめ、考え込む氷雨を横目に野分も思案する。特殊な環境で生まれ育ち、氷雨を受け入れることを良しとしているとしても、穂群も自分たちと同じく男のはずである。
「じゃあ、尚更なんじゃねえの?」
「……尚更?」
「ああ。だからあいつも、」
◇ ◇ ◇
「――欲しいんじゃないかと思ったんだ」
「ハァ?」
珍しく自ら上衣まではだける氷雨を前に、穂群は率直に声を上げた。
己よりも厚い胸板である。上半身を晒す男は顔を背け気味に、ちらちらと穂群に視線を送っていた。その頬は燈火にもはっきりと朱を差している。率直に言って妙である。
沈黙は刹那だったのか、長かったのか。不自然な咳払いと共に場を繋いだのは、頭のおかしなことを口走り始めた氷雨である。
「だから、お前に乳を吸わせて貰っている分、俺もお前を満たしてやりたいと」
「ハァ」
穂群は「ハァ」しか口にしていないが、氷雨は気づいているのだろうか。謎の自説を語る男はずいと穂群に迫り、正確には胸を寄せてきた。
別に氷雨の乳を吸いたいなどと穂群は一切思っていない。氷雨が己の乳を吸うのは……初めは何が楽しいのかと嗤い、赤子のする行為だと知ってからは揶揄いもした記憶があるが、今となってはそういうものだと思っている。奥を満たされる悦びや陽物を擦られるのとは違う、胸を弄られるとこそばゆいような狂おしいような気持ちになる。
触れられたいとは思えど、氷雨のそこに触れたいとは別段思わないのだが。珍妙に照れている男は吸えと言う。何言ってんだと一蹴し氷雨を放って先に寝入ってもいいが、吸わないことにはどうにもならない気配すらあった。何より、穂群はこんな茶番はすっ飛ばして中を、奥を満たして欲しいと思っている。
「ハァ、じゃあ」
適当に付き合って煽って中に挿入れてもらおう。己の伴侶は我慢弱い男だ。穂群は諦観と共に氷雨の胸に顔を寄せた。
近くで見てもやはり、穂群の胸よりも厚みがある。乳首は穂群のものよりも小さくて、低くて、色も何となく茶色っぽい。穂群のものとはかなり違うが、氷雨はどうしてこんなところを触って吸って舐めたがるのだろう。
しげしげと眺めていると、頭上から不自然な咳払いが落ちてきた。ちらりと上目遣いで見上げれば居心地が悪いような期待するような、氷雨は何とも言えない顔をしている。早く触れということか。違う気もするが触らないことには始まらないのだろう。
ぺとりと、掌で無遠慮に胸に触れる。張りがあって硬い。試しに揉んでみようとしたが、指が滑るばかりで埋まる気配もない。仕方がないのでそのままくるくると撫で回せば、低い尖りが手の腹に掠める。
「んッ」
途端、短い声が上がった。
「……ふーん?」
ちらりと見上げた先で氷雨が眉を顰めている。決して快楽を湛えたものではないが、感じるものはあるらしい。
そのまますりすりと撫で、指先でつんつんと乳首を押し込む。上目遣いで氷雨を窺いながら反対側の胸に顔を寄せてみる。
氷雨は目を細め、やわく奥歯を噛んでいる。その表情を見ていると腹の底に微かな火が宿るようで、自然穂群の口の端は持ち上がっていた。それもゆるりと開かれることで掻き消える。
「ぁむ」
「ぐッ」
小さいので唇の引っかかるところもない。仕方がないので唇を擦りつけてみる。
氷雨の身体が小刻みに震え始める。ちらりちらりと見上げれば、噛み締めた唇が綻んでは、ふ、ふと短く息を零していた。穂群の鼻先が触れる胸が浅く上下する。追いかけて唇で触れて、けれど呼吸の度に逃げて、すると穂群の舌がつんと触れた。
「ぅあ!」
それだけで、氷雨の唇から大きな声が漏れた。
「……ふっ、ふふ……ふぅん?」
成程、これは。
ふっと、尖りとも呼べないそこに息を吹きかける。また大仰に身体を揺らす氷雨を見下ろして、穂群はにんまりと口の端を吊り上げた。氷雨の足の間に膝を入れ、ぎゅっと身体ごと寄せてみる。氷雨の頬をぺっとりと両手で挟む。
「あっは……折角だから腹いっぱいになるまで吸わせてもらおうか? なァ?」
「ぐっ……望む、ところだ……」
まるで手合わせ前のような返答である。神妙に頷く氷雨を笑いながら、穂群はひとまず先ほどまで食い縛られていた口元に己の唇を落とした。
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