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野分誕生日おめでと~🎉(せこい編集前提非公開投稿) #トウジンカグラ
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野分
フジの里で養鶏をする青年。氷雨の乳兄弟であり理解者、しぐれの幼馴染にも当たる。立場と性格から浮きがちな氷雨と里人の間を仲介している。
七宝へ向かう氷雨を気遣いながら送り出し、穂群という男の伴侶を連れて戻ってきた氷雨に驚きつつも迎え入れた。
天敵は雌鳥の鬼丸。毎朝卵をかけた熾烈な争いを繰り広げている。
七宝の外から訪れた紫燕を見つけ、氷雨や実母そよと共に里で暮らせるよう手引きした。紫燕には敬意を払っているが、同時に危うさも察しており頻繁に様子を窺いに紫燕の住まう道場に顔を出している。

あまやどり #小咄

 紫燕と野分

 火を灯すには明るいが、さりとて書き物をするには暗い。さあさあと囁くような音が帳になって満ちている。
 そんな薄暗い道場の中、ただ座して瞑想していた男は静かに目を開いた。
「紫燕先生」
 親しみを込めた声が常よりも潜められている。細く開いた戸口から身を滑り込ませて、土間で立ち尽くす影。雨音に混ざる足音で気づいていた通りの人物。
 雨音に紛れ込ませるように、紫燕も相手の名前を呼んだ。
「野分くん」
 ぽっと光が灯る。
 それは錯覚だった。暗がりの中、野分が安堵したように微笑んだ。それだけだった。
 野分は静かな気配を取り落とすように、濡れた犬のように、ぶるぶると頭を振る。薄暗がりに雫が散って、鈍く光を撒いていた。彼の家からこの道場まで大した距離ではないが、雨具も装わずにここまで来たらしい。
 紫燕は立ち上がる。土間まで歩み寄ると野分はぴゃっと肩を震わせた。眉を下げて数歩後ずさる姿に何を考えているかを察し、紫燕は苦笑する。
「多少濡れたところで構わないよ。土間だし、この時期だから」
「や、でも、紫燕先生がよくても師範がうるさいでしょ」
 言った傍から自らの口元を覆い、野分はきょろきょろと辺りを見回した。薄暗い道場には懸案の師範の姿もなければ門下生の影もない。ここで居候をしている紫燕のみだった。
 笑いながら手を伸ばし、長着の袖で野分の顔を拭う。癖のある髪から雫が落ちているのが気になって、そちらにも袖を伸ばした。目を見開いて仰け反る野分の肩を押さえ、紫燕は好きに青年を拭っていく。
「師範もしばらくはいらっしゃらないよ。今度の長老方の集まりに準備が要るとかで」
「あ~……それ……」
 思い至るところがあったらしい。野分は抵抗も忘れて気まずそうに視線を泳がせた。
 十日ばかり先、里の長老たちが集まる席があるという。そのために何かの準備が必要らしく、師範は集まりが終わるまで道場は閉めると決めていた。おかげで門下生たちの習いもなく、居候の紫燕だけが道場を持て余している。元より師範が稽古をつけることはないが、師範代の格とはいえ紫燕一人に道場を任せるつもりはないらしい。
 こういった不自由が起きる度、門下生たちは紫燕がいるのだからいいだろうにと口を揃える。秘められたフジの里へ流れてきただけの浪人がそこまで許されるはずはない。ましてや神剣を仰ぐ里で、剣術を学ぶための場なのだから。紫燕自身がそう言って門下生たちを宥めるのが常である。
 かく言う眼前の青年こそ、唇を尖らせながら師範と古い格式を非難する者の筆頭である。しかしながら今はその不満を口にすることもなく、濡れた髪を掻きながら溜め息をついていた。
「そういやここもそうでしたね」
「ここも?」
「氷雨んとこと、母ちゃんもバタバタしてるんで」
 そのまま野分は上がり框に腰かけ、かと思えばばたりと上体を倒した。紫燕も土間に裸足で下り、框に腰かけた。
 里の長老の頂点に立つ青年と、目の前の青年の母。前者が慌ただしいのは当然として、母堂の忙しい理由は、さて。紫燕の小さな疑問を拾い上げたかのように野分が口を開く。
「宴席の台所、母ちゃんが仕切るんで。たぶん長老方より忙しーっすよ」
 もう怖いの何の……最後は呟きになって消えていった。
 紫燕は得心した。つまり鬼気迫る母に耐えかね、乳兄弟も忙しく、行き着いた先が紫燕のところだったらしい。辟易として家を出る青年の姿を想像し、紫燕は思わず笑みをこぼした。むっとした顔を遮るように前髪を袖で拭い、ついでにちいさく鼻を摘まんでみる。む、という声が漏れた。
「なら仕方ないね。子はいくつになっても母親には敵わないものだから、大人しくしておくしかない」
「ふぇ……っすよ。紫燕先生も……」
 手を離す。野分は何かを問いかけようとして、そして止めた。
 さあさあと、雨音が満ちている。
 紫燕は首を傾け、傍らの青年を覗き込む。青年の瞳に、淡い光が灯っている。
 野分が何を言おうとして止めたのか、薄らと察しがつく。際どい話を持ち出しのは紫燕自身だというのに、きゅっと唇を結んで飲み込んでいる。
 優しい子なのだ。紫燕の指が野分の頬に滑る。野分は光を灯す瞳を細めて、それから頬に触れる紫燕の手を取った。
「紫燕先生も、暇でしょ」
「暇という訳ではないけれどね。少し持て余しているかな」
「じゃあ、俺と何かしましょ」
 何か。適当に繰り返して、それから野分は紫燕の手をぎゅっと握る。紫燕の手の厚さや指の長さ、皮膚の硬さを確かめるように触れながら。
「稽古でもつけようか」
「だーからぁ、俺は氷雨とも穂群とも違うんで、手習い以上の剣術はやりませんて」
「じゃあ、他に何があるかな」
 うーん。相変わらず適当に悩む野分の声に、さあさあ、さあさあと、雨の音が重なっていく。こうして無為に二人で過ごすだけでもいい。恐らく野分も同じように考えていることを楽しく思いながら、紫燕は青年の指に指を絡めた。
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メモ

🌀の誕生日何かしたかったけどもう寝るしかないかも知らないが気持ち悪過ぎて寝るのも無理かもしれない

日記

メンタルやられてもメンタルだけでボディは元気食欲もあるせいぜい過眠だけの民、ここに来て超過労働にボディが耐えられなくなっている感あるけど足が痙攣して攣るだけだしな…働くしかないな…運転に不安しかないが…

労働記録

左足の痙攣から発展してついに右の脹脛が攣って目覚めるいわゆるこむら返りというやつ
ずっと両足がピクピクしている

労働記録

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