トウジンカグラ8話+邂逅編所感

 前回記事で書き損ねた8話の話と1周年で駆け抜けた邂逅編の話。
 8話読了後にどうぞ。

 喋ったと思ったらこれだよ!

 天ノ端氷雨という人間の根底にある罪悪感の一つですが何をしたかはともかく何をしてるのかはかわいいものです。
 神剣・蒼天とは、刀刃の形をした不定形の神様であり人を見守る存在であり其れ自身が意思を持つので、形ばかりの所有者である氷雨とは相互理解などはしていません。お互いがお互いに対して思うところはあれど。
 蒼天は別に嫌がらせをしているわけではなく、氷雨の反応を見たいだけ。氷雨を揺さぶってあわよくばその先を見せて欲しいだけ。神剣主従の凸凹が合致することがあればあるいは氷雨は次に進めます。
 いずれにせよ、自覚ある悪徳を突きつけられて憔悴してる氷雨はずるくて弱い男なんだな~と思います。ずるくて弱い男だな~!

 強くてずるい男もまたいるのであった。
 刻自身火群が言いつけたことを実行するとは微塵も思ってないわけですが、(雨だけど)日が落ちるよりも早く火群が好みもしない宮中に戻ってきてしかも範宮殿の奥までわざわざやってくる時点でただ事ではないという認識だし、それで風呂で寝てるように見えたりなんかするともう異常事態を察するわけです。火群の眠りが何であるか7話で刻と飾が会話したようにそれは意味が変わってくる行為なので。普段ならしゃぼん(石鹸)を投げつけて終わりのところを洗ってやったのも刻なりの気遣いというか、彼なりの火群に対する親心です。
 でも次に火群が言い出した内容はそういうレベルじゃない。刻は火群のことを制御された環境下に生きる、刻にとって予測できる思考と行動しかできない存在だと認識してるところがあるのですが7話の腕を庇う仕草辺りから響いていた違和感が直球でぶつかってくる。3話で阿呆抜かせここは主上の湯殿だぞと最悪五七五を詠みながら突っぱねたのに自らそれを曲げてでも火群の要求をとにかく早く受け入れたのは本人の言うとおり凄まじい覚悟が必要で凄まじい罪悪感を伴う。これを最悪を自ら更新したと称しているのはダブルミーニングみたいなところもある。
 寒いだろうから湯の中に入れてやるのも腕拡げて待つのも、これは親心というか刻という人間の根底にあるただ優しいだけの優しさ。ただし最後にぽろっと零した火群の疑問は、刻自身理解していてそれでも知らないふりでここまでやってきた全てを打ち砕くひと言なので、動揺編からは彼も相当動揺する感じになるというか今まで諦めてきたものに対して再び直視せざるを得なくなります。ずるい分の帳尻はどこかで合わさなければならないという話。


 主上の湯殿で致したことに罪悪感が凄まじいのでとりあえず自分でも風呂掃除をする祭玖衆次席のアフターストーリー。

 七宝の人たちの外つ国に対する認識と氷雨の顔が良い話。
 イケメンではないけど精悍な顔つき、という意味で顔が良い設定は一応存在するのに視点になる火群は人間の美醜を判断しないしそんなウキウキした話をするタイミングがここまでなかったので…つまり6話で『犬』を追いかけ回した噂と相俟って相当目立っている木刀のお侍さん。
 他はともかく七宝は人流も物流も制限されて然るに金回りもある一定で頭打ち。実物が出回っていないのでガス灯も銃も冗談で終わり。
 アメの一族の当主にラブレター出してた男が本人に出会ったので邂逅編は終了です。

 邂逅編で火群という人間が自分は何も知らないととことん自覚したので無知の知の次が動揺編から開けます。やったね。
 本人は否定してますが氷雨という人間との接触は火群自身薄々気付いていて封じ込めていた諸々を掘り出して揺さぶって、事後の勢いとはいえそれを疑問に思える程度にまで急成長しているので、然るに次は自身の不自然に気付くんだろうな~。

 7話に立ち返って、火群は本当は薄々気付いているところと本当に知らないところがあります。
 氷雨との未遂でトリガーになった「どうせオマエも最後には自分から~」は当然そうであるという認識とそうではないことを期待する=他とは違っていて欲しいという思いがあるかも知れないしないかも知れない。
 氷雨の方は「オマエもやっぱり~」に対して火群より多角的な絶望があって、行為自体への否定とか他と同じ自分への絶望とかそれはそれとして蒼天に揺さぶられたとおり相手が火群だからこその彼自身の欲望があるかも知れないしないかも知れない。単に春機発動期かも…知れない!

 火群に刺さっている「好きになったりしない」は蒼天に問いかけられたとおり氷雨自身の自縄自縛かも知れないし春機発動期以下略。とりあえずウッカリ自分にも刺してしまった。

 

 今上帝への目通りを願う田舎主従の絶望から始まった邂逅編、倦んで娯楽に餓えた七宝の住人の光と陰りと、その頂に坐す宮中の実態と彼らに招かれた神剣の継承者と、時を同じくして見え隠れする妙な男、七宝に迫る何かと七宝に潜む何か。そんな世界のことなんか何も知らず自分自身すら知らない人斬りの男。
 邂逅編はそういう話でした。
 動揺編の動揺編の開始となる9話はイベント準備や謎の邂逅編製本作業とかを挟む予定なのでいつになるかわかりませんが最低限2ヵ月に1話ペースだけは落とさずいきたいと思います。作業が終わったらもうちょっとペースを…上げたいね…! 動揺編ではかきたくて仕方ないシーンが1つ2つ! あるので!

 

 しかし邂逅編が終わってみて、人斬りクソビッチと称している火群が1回しか明確に人斬ってないことだけは大変な失敗だな!